「きょうから後のことをよく考えよ」
2. 「きょうから後のことをよく考えよ」
【聖書箇所】 2章1節~23節
ベレーシート
- ハガイ書で語られた神殿再建の覚醒預言は、2章1~9節にも繰り返されます。指導者のゼルバベルと大祭司ヨシュアに対して、また、主にあるすべての民たちに対して、それぞれ「強くあれ」、「仕事に取りかかれ」と命じ、「わたしがあなたがたとともいる」と約束しています。
- 「強くあれ」(「ハーザク」חָזַק)というフレーズは、神の歴史の中で何度も繰り返されて語られている激励用語です。しばしば「強くあれ、雄々しくあれ」と形で使われることが多いのですが、ここでは前者の「強くあれ」のみ、しかしそのあとに「恐れるな」という言葉が付随しています。その理由として、「あなたがたがエジプトから出て来たとき、わたしがあなたがたと結んだ約束により、わたしの霊があなたがたの間で働いている」からだとしています。これは神が民と結んだ合意に基づくシナイ契約のゆえに、主を信頼することに対して、神がすべてを保障されるという確かな約束を意味しています。それゆえに、「恐れてはならない」のです。主に対する信仰を堅くすること、これが「強くある」ことの内実です。
1. 「この日から後のことをよく考えよ」とは・・
- 「この日」とは神殿の基が置かれた時です。その日から後のことに「心を留めよ」「よく考えよ」とはいったいどういう意味なのでしょうか。ここでいう「後」とは、私たちの将来を意味します。現代の私たちは将来のことを「先」のことと考えますが、ヘブル人たちは、将来のことを「~から後のこと」(「マアル」מַעַל)と表現します。つまり、彼らはいつも過去に目を向けながら、後ろ向きで将来に向かって進んでいるのです。
- 神殿は単なる建造物にとどまらず、その神と神の民とのかかわりの本質と深くかかわる問題です。第二神殿を建設することが呼びかけられていると同時に、それを越えたより大きな神のご計画の全体像における神殿の回復の展望も預言されています。2章の各区分の中にぞれぞれ別の表現で預言されているのを見ることができます。
- ハガイ書1章では「あなたがたの現状をよく考えよ」をキーワードにしましたが、2章では15節と18節にある「きょうから後のことをよく考えよ」をキーワードにして思い巡らしたいと思います。
【新改訳改訂3】
18 さあ、あなたがたは、きょうから後のことをよく考えよ。すなわち、第九の月の二十四日、【主】の神殿の礎が据えられた日から後のことをよく考えよ。
【口語訳】
18 あなたがたはこの日より後、すなわち、九月二十四日よりの事を思うがよい。また主の宮の基をすえた日から後の事を心にとめるがよい。
【新共同訳】
18 この日以後、よく心に留めよ。この九月二十四日/主の神殿の基が置かれたこの日から、心に留めよ。
【新改訳2017】
18 さあ、あなたがたは今日から後のことをよく考えよ。第九の月の二十四日、【主】の神殿の基が据えられた日から後のことをよく考えよ。
- 2章9節に「この宮のこれからの後の栄光は、先のものよりまさろう。・・わたしはまた、この所に平和を与える。」とあります。ここでの「これからの後の栄光」ということばの「これから」とは「第二神殿が再建されてから」を意味し、その「後の栄光」とは第二神殿を越えた後の神殿をも示唆しています。また、「この所に平和を与える」ということばの「この所」とは「エルサレム」を意味し、そこに「平和を与える」とは、千年王国における神の完全なシャーローム(שָׁלוֹם)が実現することを意味しています。とすれば、9節のみことば、第二神殿を越えて、イエスの復活のからだである教会、千年王国に建てられる第四神殿、そして新天新地における目には見えない永遠の神殿(神である主と小羊)をも示唆していると考えることができます。神殿の究極は、神と人とが「顔と顔を合わせる」ことにあります。「御顔を仰ぎ見る」世界(黙示22:4)、それがエデンの園の回復の極みなのです。このことを「心に留める」ようにと諭しているのがハガイの預言です。
- 2章15節と18節にある「さあ、今、あなたがたは、きょうからの後のことを考えよ」というフレーズが指し示しているのは、多くの実りが約束された祝福であり、これは9節の「このところに平和を与える」という約束と符合します。
- 語っている預言者自身が語るみことばのすべての理解しているとは限りません。その多くが封印されたままで語っているというのが旧約の預言者なのです。しかし今日の私たちは、彼ら以上に、預言の封印が解かれています。感謝なことに、その預言の意味を悟ることができるのです。
2. 神の選んだメシアを通して、神殿は完成される
- 2章21~23節は、ユダの総督ゼルバベルに対して語られた預言です。ゼルバベルに対して、主は次のように語られました。
わたしのしもべゼルバベルよ、わたしはあなたを選び取る。・・わたしはあなたを印形のようにする。わたしがあたなかを選んだからだ。
- ゼルバベルはユダの総督であり、主のしもべです。何よりも重要なことは、「ダビデの裔(すえ)」なる人物だということです。つまり、主がゼルバベルを選び取ったということは、彼を通してメシアを遣わされる神のご計画があるからです。このメシアによって、以下の出来事が起こされ、以下のような平和が訪れるのです。
【新改訳改訂第3版】ハガイ書2章22節
もろもろの王国の王座をくつがえし、異邦の民の王国の力を滅ぼし、戦車と、それに乗る者をくつがえす。馬と騎兵は彼ら仲間同士の剣によって倒れる。
- まさに、ゼルバベルによって第二神殿が再建されることが、これからの後の神のご計画において「印形(いんぎょう)=「ホーターム」(חוֹתָם)〔約束の保障としての印〕となるのです。
- と同時に、ゼルバベルという存在は、ただ単に第二神殿建設の推進者としてだけではなく、それ以上の霊的な意義を持った存在。つまりダビデの裔から、主のしもべなるメシアを通して、神の永遠の御国(ここでは「千年王国」の意)を建てるという約束の保証的存在、しかもそのご計画が主の意志(選び)によるものであることを保証するしるしなのです(Ⅱサムエル7:24~29)。
2013.9.13
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