「そこで、・・神の宮を建て始め・・完成した」
エズラ記の瞑想の目次
5. 「そこで、・・・神の宮を建て始め・・完成した」
〔聖書箇所〕 5章1, 2節、6章15節
- 5:1 さて、預言者ハガイとイドの子ゼカリヤの、ふたりの預言者は、ユダとエルサレムにいるユダヤ人に、彼らとともにおられるイスラエルの神の名によって預言した。
- 5:2 そこで、シェアルティエルの子ゼルバベルと、エホツァダクの子ヨシュアは立ち上がり、エルサレムにある神の宮を建て始めた。神の預言者たちも彼らといっしょにいて、彼らを助けた。
- 6:15 こうして、この宮はダリヨス王の治世の第六年、アダルの月〔注1〕の三日に完成した。
はじめに
◆敵の妨害によって神殿再建工事が中断してから15年も経ってしまいました。この間のことについてエズラ書は何も記してはいません。再び工事を再開させるために、神はハガイとゼカリヤ〔注2〕の二人の預言者を遣わしました。神の名による預言を聞いたユダの総督ゼルバベルと大祭司ヨシュアは立ち上がり、エルサレムの神殿再建の事業が再開されたのです。
1. ハガイが語ったメッセージとその背景
◆ところで、中断された15年間なにがあったのでしょうか。また、二人の預言者は神の名によってどんなメッセージを語ったのでしょうか。二人の語ったメッセージを知るためには、「ハガイ書」と「ゼカリヤ書」を読まなければなりませんが、ここではハガイ書だけを取り上げてみたいと思います。
◆預言者ハガイのメッセージ
- 1:7 万軍の【主】はこう仰せられる。あなたがたの現状をよく考えよ。
1:8 山に登り、木を運んで来て、宮を建てよ。そうすれば、わたしはそれを喜び、わたしの栄光を現そう。【主】は仰せられる。
1:9 あなたがたは多くを期待したが、見よ、わずかであった。あなたがたが家に持ち帰ったとき、わたしはそれを吹き飛ばした。それはなぜか。──万軍の【主】の御告げ──それは、廃墟となったわたしの宮のためだ。あなたがたがみな、自分の家のために走り回っていたからだ。
◆上記のハガイのメッセージを見ると、長期にわたる工事の中断は、敵の妨害といった事情だけでなく、「この民は、主の宮を建てる時(ふさわしい時)はまだ来ていない、と言っている」(1:2)という言い訳にもあるように、神の民の不信仰、不従順もその理由であったことが明らかにされています。さらに、「神の宮が廃墟となっているのに、あなたがただけが板張りの家に住むべきときであろうか」(1:4)とあるように、神の事柄よりも、人間の事柄が優先されてしまっていたことも再建の中断の理由としてあげられています。そのために、「あなたがたは多くを期待したが、見よ、わずかであった。」のです。
◆神を優先するかどうか、神殿を再建して神を礼拝し、第一の戒めを回復するかどうかが問われたのです。この問いかけは今日に生きるキリスト者に対しても不変です。第一の戒めを回復するなら、神は豊かな祝福を約束しておられるのです。
◆ハガイのメッセージは悔い改めと同時に、励ましが特徴です。その証拠に、ゼルバベルに対して、大祭司ヨシュアに対して、すべての民に対して、それぞれ「強くあれ」ということばを3度も繰り返して励ましました。こうした主にある人々の心を奮い立たせる励ましのメッセージ、勇気づけるメッセージ、これこそ今日の教会に必要としているものではないかと思います。
◆そして、ゼルバベルとヨシュア、そして民たちはみな預言者ハガイの励ましのメッセージに聞き従い、「恐神、不恐人」で、再建工事を再開したことがすばらしいところです。
2. 王による法的中断から解除へ、さらに促進へ
◆預言者ハガイのメッセージはユダの人々をして主を恐れさせたと同時に、ユダの人々の心を「奮い立たせた」〔ウールעוּר(`ur) 〕ました。ハガイ1:14にはこうあります。「 【主】は、シェアルティエルの子、ユダの総督ゼルバベルの心と、エホツァダクの子、大祭司ヨシュアの心と、民のすべての残りの者の心とを奮い立たせたので、彼らは彼らの神、万軍の【主】の宮に行って、仕事に取りかかった。」と。
◆こうした神殿再建事業の再開が、それまで政治的歯止めのかかっていた枷をも取り除いていく、新しい展開をもたらします。そのことを記しているのが、エズラ記5章、6章です。
◆「だれがあなたがたに命令を下して、この宮を建て、この城壁を修復させようとしたのか。」(エズラ5:3) これに答えた文書がペルシヤの総督や役人たちによってダリヨス王に報告されます。その報告された文書の内容は、この再建工事はクロス王の命令によるものであること、そのことを調べてほしいというものでした。
◆ダリヨス王は、バビロンの文書保管所を調べさせたところ、確かに、クロス王がそうした命令を下した巻物が発見されました(エズラ6:1, 2)。ダリヨス王はエルサレムの神殿の再建工事を許可したどころが、むしろそれを促進させるよう、またその費用も支払って滞らないようにすること、すべての必要を毎日与える命令を下したのです。
◆サマリヤ人の姦計によって、アルタシャスタ王が命じた工事の中断が、ダリヨス王によって解除されたばかりか、むしろそれを促進するように命令がくだされたのです。ペルシャ帝国は、バビロン帝国とは違い、ひとたび制定された法律は変えることはできなかったという事情があります。これらの背後に、神のお手並みを拝見することができます。神を第一にするときに、すべてのことが最善へと導かれていくことを、この時代のユダの人々は経験したのでした。
注1
◆バビロンの月名と現行月名については、こちらを参照。
注2
◆ハガイが預言の働きを始めたのは、ペルシヤのダリヨス王の治世2年、すなわちBC520年です。ゼカリヤはその二ヶ月後に働きを始めています。神殿再建事業の再開はBC520の秋でした。二人の預言者が語ったメッセージによって、落胆していた人々は勇気づけられ、妨げとなっていたすべての困難を克服する力を与えられたのでした。そして5年後のBC516年に神殿は完成しました。私たちキリスト者も、「神の国とその義とを第一にする」とき、私たちの思いや考えをはるかに越えた神の祝福が必ず与えられることを信じたいものです。
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