オムリ王朝の終焉とエフー王朝の始まり
列王記の目次
31. オムリ王朝の終焉とエフー王朝の始まり
【聖書箇所】 9章1節~37節
はじめに
- 9章は、48年間続いたオムリ王朝の時代が終焉し、新たにエフー王朝が始まる転換の章です。エフー王朝は102年と半年の期間続く王朝ですが、その始まりは謀反(クーデター)によるものでした。驚くべきことに、そのクーデターの首謀者はなんと神ご自身でした。
- 三つの部分からなっています。
(1) 油注がれたエフー
(2) イスラエルとユダの王がエフーによって殺害される
(3) アハブの妻イゼベルの悲惨な最期
1. 油注がれたエフー(1~13節)
- かつて預言者エリヤに神が語られたこと(列王記上19章)を,後継者のエリシャが実現します。エリシャは預言者の仲間の一人を遣わして、エフーをイスラエルの王に任命するように命じました。その際、エリシャは「腰に帯を引き締めて」と言います。それはある事柄を急いで準備することを意味します。そこには、タイミングを逃してはならないという含み(意図)があります。
- ちなみに、「腰に帯を締める」のヘブル語は「ハーガル」חָגַרで、出エジプト12:1、列王下4:29にも同様の意味合いで使われています。
- 神の最善の時とは、このように早急性が求められることがあるようです。ある時には慎重に、ある時には時間をかけず早急にです。その絶妙な神のタイミングはその時には分からずとも、後になって明確に分かるのです。そのタイミングとは、16節にあるように、イズレエルで「床についていたヨラム(イスラエルの王)のもとに南ユダの王アハズヤが見舞いに下っていた」時であった。エフーはその機会を捕えて急襲したのです。
2. イスラエルとユダの王がエフーによって殺害される(17~26節)
- エフーが油注がれたのは、神がアハブ家の者をさばくためでした。つまり、神はエフーを用いてアハブ家の者をさばこうとされたのです。
- エフーは謀反を成功させるため、かなり慎重であったようです。従って、エフーを迎えに出たヨラムが謀反だと気づいた時は、すでに遅しでした。エフーは逃げるヨラムの背中に矢を放ってそれが命中し、心臓を貫通させました。即死です。しかもその場所は「ナボテの畑」でした。
- エフーはおそらくヨラムの先を逃げていたユダの王アハズヤに追い傷を負わせました。アハズヤは傷を負いながら逃走し、メギドで死にました。
- ヨシャパテ以来、南ユダ王国は北イスラエル王国と協調路線を歩んで来ました。この協調路線は南ユダにとって霊的な暗黒の影響をもたらして来ましたが、ここに及んで北と南は対立路線を歩むことになります。南ユダにとって、アハズヤの死は神へと立ち返る機会ともなったのです(実際には、ユダではアハズヤの母であるアタルヤによる6年間の治世がありますが、エフ―の指示によるクーデターによって彼女は失脚し、ユダは回復します)。
3. アハブの妻イゼベルの悲惨な最期(30~37節)
- 北イスラエル、および南ユダにまで偶像礼拝の悪影響を与え続けてきた元凶的存在のイゼベルが、悲惨な最期を迎えたことが記されています。
- 「父が酸いぶどう酒を食べたので、子どもの歯が浮く」と言う格言通り、親の言動、信仰、考え方などが子どもたちに大きな影響を与えることを考えさせられます。北イスラエルの歴史は、まさにこの格言のごとく進んでいくのを見ます。
2012.11.9
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