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カインの系譜と「主の御名によって祈る」セツの系譜

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3. カインの系譜と「主の御名によって祈る」セツの系譜

【聖書箇所】4章1節~26節

はじめに

  • 4章には、カインとアベルのことが記され、兄のカインが弟のアベルを殺すという人類最初の殺人事件について記しています。しかし、それ以上にこの4章において重要なのは、対照的なカインの系譜とセツの系譜のはじまりが記されていることです。カインの系譜は神を信じない不敬虔な流れであり、一方のセツの系譜は神を信じる流れです。時間的な流れで言えば、カインの流れにおいて、「カインには7倍の復讐があれば、レメクには77倍。」(4:24)とあるように、レメクの罪の恐るべき姿が記されています。恐れからくる自己防衛のための戦いや復讐が肥大していた時代に、それに対抗するもう一つの霊的な流れとしてセツとその子エノシュから「主の御名よって祈ることを始めた」人々が台頭してきたのです。この二つの流れを心に留めたいと思います。

1. カインの系譜の特徴

  • 弟のアベルを殺したカインは、神から迫られる悔い改めに応じることなく、神を捨てていく不敬虔な流れとなっていきます。ただカインの恐れはみずから御顔から隠れたことで、自分を守ってくれる存在を失うことでした。そんな彼に神は防衛の保障のしるしを与えて下さったのです。にもかかわらず、カインは神に背を向けて、エデンの東、ノデの地に移り住んだのでした(4:16)。
  • ノデの地は実際には存在しません。ヘブル語の字義どおりの意味は「彷徨する者」「放浪者」「逃亡者」「流浪」という意味です。カインはどこかに落ち着き、居住することを願うのですが、犯した罪のゆえに土地が呪われ、耕しても実を結ばないために定住することができず、結果として放浪せざるを得なくなります。身の安住を見出したいと願いつつ、自分の居場所をたえず尋ね求め続けるという生き方を余儀なくされていることが、「ノドの地(放浪の地)に住む」ということです。そこはエデンの地とは対照的な地でした。ちなみに、ユダヤ教の学者によれば「ノド」は「エリコ」と考えているようです。それはエルサレムがエデンの園があった場所としているからです。
  • カインはノドの地で「町」を建て、自分の子の名にちなんで、その町にエノクという名をつけました(4:17)。「町(あるいは都市)を建てる」とは、神の防衛の保障がないために人間同士が力を結集して自分たちを守ることを意味します。神からの干渉から完全に独立しようとする意図が根底にあります。神から離れた人間が町を建てることは、創世記11章の「バベルの塔」を建てようとすることでそのきわみに達します。「名を上げよう」というスローガンが物語っているように、バベルの塔を建てることは自分たちの文明の力を誇示することです。文明の発展はいつの時代においても、神への背反としての性格を隠し持っているのです。
    画像の説明
  • カイン⇒エノク⇒イラデ⇒メフヤエル⇒メトシャエル⇒
    レメク⇒妻(アダ)―ヤバル(家畜を飼う者の先祖)&ユバル(立琴と笛を巧みに奏する者の先祖)
    ⇒妻(ツィラ)―トバル・カイン(鍛冶屋、武器の製造)
    ここには文明を開花させる先祖たちの名が上げられています。

2. セツの系譜の特徴

  • カインの系譜とは性格を異にするもう一つの系譜があります。カインの弟のアベルは、その名が意味する「虚無、空虚、息」のように虚しく消え去ってしまいました。アベルが兄カインによって悲惨な死を遂げ、カインも信仰の道を捨てて離れ去ったアダムとエバは、まさに二人の子どもを失ったのも同然でした。そのような悲しみがアダムの家にのしかかる中で、神はもう一人の子「セツ」(שֵׁת)を授けました。「セツ」の名前の語源は動詞の「シート」(שִׁית)で、「立てる、固定させる」という意味です。神は、セツによって神と人との本来あるべき正しいかかわりを再び固く立てなおそうとされたのです。また、セツには「基礎、土台」といった意味もあります。神の人とのかかわりが力強く根づくことを、神は願われたのかもしれません。神の約束はカインの系譜ではなく、セツの系譜に与えられました。
  • カインの子孫たちによる殺戮や暴力などが全地を横行するなかで、神は救済史的な目的を持ってセツを与えました。このセツからエノシュが生まれます。「エノーシュ」(אֱנוֹשׁ)の語源は動詞の「アーナシュ」ׁ(אָנַשׁ)で、「壊れやすい、なおらない、癒えない」といった宿命的な弱さを表わすことばです。こうした弱さのゆえに、主の助けがなければ罪の誘惑に勝てないことを悟ったのかもしれません。また固有名詞の「エノシュ」は同じ表記で「人」を表わす普通名詞でもあります。「弱さを持った人」としての「エノシュ」の誕生は、人々をして「主の御名を呼ぶ」ことを始めさせました。
  • 子の誕生の契機が、そのまま新しい生き方の契機をもたらした例として、7代目のエノクがいます。彼は息子のメトシェラが生まれてから、「神とともに歩む」ようになったのです。彼はそれまでそのようなに生き方をしていませんでした。明らかに、息子が生まれたことが彼にとって神の新しい促しとなったのです。
  • セツの系譜はレメクの恐るべき罪が影響する世界において、神に祈り、神を求めて霊性の回復を目指す共同体が神によって堅く建てられたと言えます。私たちもその系譜の流れの中にキリストにあって置かれていることを知り、世の流れに流されることなく、この世にあってこの世のものではないという「聖なる民」としての歩みをしていきたいものです。

カインとアベルは双子
【新改訳2017】創世記4章1~2節
1 人は、その妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「私は、【主】によって一人の男子を得た」と言った。
2 彼女はまた、その弟アベルを産んだ。

●1節にはエバは「身ごもって」、カインを「産み」、そしてまたアベルを「産んだ」とあります。「身ごもった」のが1回で、「産んだ」のが2回です。「また」と訳された語は「ヤーサフ」(יָסַף)で「重ねて~をする」という意味から、カインとアベルは双子と言えるのです。

●カインは弟のアベルに立ち向かい、彼を殺したました。これはイェシュアがユダヤの宗教者たちによって殺されたことのたとえであり「型」です。善と悪の知識の木を食べてそれと一つになった者は、いのちの木であるイェシュアを殺すという「預言」なのです。


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