****** 詩篇は、神と私たちの生きた関係を築く上での最高のテキストです。******

ダビデ復権における様々な人間模様

44. ダビデ復権における様々な人間模様

【聖書箇所】 19章9節~43節

はじめに

  • 政治の世界にはいつの時代においても、刻々と変化する現実の事態にそれぞれの人々や団体が、いち早く自分たちの利害関係や打算をもって適応しようとする世界です。聖書の世界においてもまた然りです。ダビデは一国の王であり、宗教的指導者であったばかりではなく、政治的指導者でもありました。先にダビデは息子アブシャロムのクーデターによって都落ちしましたが、今やそのクーデターは失敗に終わり、ダビデが再び復権してエルサレムに帰還するようになります。事態は全く新しくなりましたが、ダビデの周囲を取り巻く人間模様も大きく変化します。聖書はその人間模様を如実に描いています。
  • 19章では神の声は全く沈黙していますが、神は人間の様々な思いの背後にあって歴史を支配されていることは言うまでもありません。

1. ダビデの懐柔政策

  • クーデターの失敗によってダビデが復権したときに、ダビデがアブシャロム側の軍団長(総司令官)であったアマサを抱き込もうとします。ダビデの思いの中では、ヨアブに代わる地位を彼に与えようとしていたようです(19:13)。そうしたダビデの懐柔政策、宥和政策、協調路線はユダの人々に受け入れられたようです。しかし、自分の居場所を失うことを恐れたヨアブは次章でアマサを暗殺してしまいます。

2. ベニヤミン属のシムイとツィバの適応

(1) ツィバ

  • 新しい事態にいち早く適応しようとした人物は、ベニヤミン属のツィバとシムイでした。ツィバは帰還するダビデのもとに一族郎党を引き連れて来て、ダビデの家族がヨルダン川を渡るときに「王の喜ぶことをした」のです。このときもツィバは自分の主人であるメフィボシェテを全く無視しています。あとでダビデはエルサレムでメフィボシェテと会い、「あなたはなぜ、私といつしょに来なかったのか」と尋ねたときに、メフィボシェテは「私の家来(ツィバのこと)が私わ欺いたのです」と言いますが、ダビデにとってこのことばは半信半疑でした。それほどにツィバはうまくダビデに取り入っていたからでした。それゆえダビデはことの真相を明確に理解することができませんでした。

(2) シムイ

  • シムイは都落ちしたダビデを散々罵倒しして、呪った人物です。このシムイがダビデに対して自分のした罪の赦しを求めます。ダビデの部下の一人アビシャイがそれに口を挟みますが、ダビデはシムイを赦したのです。シムイがダビデを呪ったのは、神と自分の間の問題としてダビデは考えていたからでした。

3. バルジライの対応

  • ダビデが都落ちして拠点をおいたマハナイムにおいて、ダビデのその一向に対して物資的な支援をして、ダビデを養った人物の一人にバルジライがおりました。ダビデは自分が受けた恩義に対して決して忘れない人でした。ダビデはその彼にエルサレムにおいて逆に面倒を見たいと申し出たとき、パルジライはダビデのその申し出を丁重に断ります。そして自分の代わりにしもべであったキムハムをダビデに同行させました。やがてダビデからソロモンに王位が譲位した後、ダビデはソロモンに対して、キムハムの関係者には恵み(ヘセド)を施し、食事の席に連ならせるようにと遺言しています(Ⅰ列王2:7)。

4. イスラエルの人々とユダの人々の対応

  • アブシャロムが失脚したとき、最もいち早くそれに対応しようとしたのは、ユダの人々ではなくイスラエルの人々でした(19:9~10)。ここにはダビデ復権後の新しい体制における複雑な部族間の勢力争いがはらんでいます。ダビデは自分の身内であるユダの人々がこの問題に先手を打つように指示します。ここには政治家としてのダビデの手腕が見られます。というのも、あとでイスラエルの人々はユダの人々に対して不変を告げているからです(19:41~43)。部族間における微妙な力関係をダビデはすでに感じ取っていたと言えます。

むすび

  • このように政治の世界では常に変化する現実の事態に対して、いかにいち早く対応するかが、その決断が求められる世界です。そうした世界の中にうごめくさまざまな人間模様を聖書はありのままに描いています。
  • 自分の利害関係がからむ世界では、神の支配は見えなくなるものです。しかし、歴史書を瞑想することによって、人間の打算的な世界を超えたもうひとつの世界、つまり神の支配の視点から現実の事態を観ることの訓練をさせられるように思います。

2012.8.15 太平洋戦争の終戦記念日(1945.8.15)


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