****** キリスト教会は、ヘブル的ルーツとつぎ合わされることで回復し、完成します。******

バラムが語った託宣(2)

民数記の目次

21. バラムが語った託宣(2)

【聖書箇所】 23章13節~24章25節

はじめに

  • 「託宣」ということばを用いているのは、口語訳、新共同訳、岩波訳で、新改訳では「ことわざ」と訳しています。関根訳は「神託」と訳し、バルバロ訳は「詩」と訳しています。原語のヘブル語は「マーシャール」(מָשָׁל)で、簡単なメタファーから物語に至るまでのあらゆる種類の比喩的表現を指すことばのようです。「たとえ、箴言、あざけり、物笑い、嘲り」という意味もあるようです。
  • そもそも彼がパラクのところへ行こうとしたのは、バラムが金銭に目が眩んだからです。しかし途中、目が開かれて、抜き身の剣を手に持った主の使いに出会ってから、彼は神が語ることをそのまま告げる者となりました。ですから、バラムは自分のことを「目のひらけた者(目の開かれた者)」(24:3, 15)、あるいは「目のおおいを除かれた者(目の開かれた者)」(24:16)と語っています。「目のひらけた者」、「目のおおいを除かれた者」の託宣がいかなるものであったか、以下、第二、第三、第四の託宣の中に告げられたそれぞれの特徴を取り上げてみたいと思います。第一から第四までに共通しているのは、ヘブル詩の特徴である「同義的平行法」(パラレリズム)であり、とても印象的です。

1. 第二の託宣

【新改訳改訂第3版】
23章19節
神は人間ではなく、偽りを言うことがない。
人の子ではなく、悔いることがない。
神は言われたことを、なさらないだろうか。
約束されたことを成し遂げられないだろうか。
23章20節
見よ。祝福せよ、との命を私は受けた。
神は祝福される。
私はそれをくつがえすことはできない。

  • ここには神のイスラエルに対する祝福の【真実性と不変性】が語られています。

2. 第三の託宣

24章5節
なんと美しいことよ。
ヤコブよ、あなたの天幕は。
イスラエルよ、あなたの住まいは。
24章6節
それは、延び広がる谷間のように、
川辺の園のように、
【主】が植えたアロエのように、
水辺の杉の木のように。
24章7節
その手おけからは水があふれ、
その種は豊かな水に潤う。
その王はアガグよりも高くなり
その王国はあがめられる

  • 第三の託宣の特徴は、神の民の【満ち足りた麗しさ】です。「なんと美しいことよ」と訳される「マー・トーヴー」(מַה-טֹּבוּ)の「トーヴ」はここでは動詞です。民数記24章5節だけでなく、1節にも使われており主の「御心にかなう」という意味です。岩波訳は「いかに好ましいことか」と訳しています。「なんと美しいことか」。これが、イスラエルの民が主の民であるがゆえの姿なのです。
  • イスラエルの民そのものは必ずしも麗しい、好ましい存在ではなく、罪深い民ですが、神の目から見るならば「麗しく好ましい存在」なのです。しかもイスラエルは、神の豊かな祝福を運ぶ媒介者となることが、神によって定められているのです。その王(メシア)は「アガグよりも高くなり、その王国はあがめられる」とあります。「アガグ」(אֲגַג)はイスラエルの敵の象徴です。エステル記のユダヤ人絶滅計画を謀ったハマンは「アガグ人」です(エステル3:10)。LXX訳では「ゴグ」と訳されています。

3. 第四の託宣

24章17節
私は見る。しかし今ではない。
私は見つめる。しかし間近ではない。
ヤコブから一つの星が上り、
イスラエルから一本の杖が起こり
モアブのこめかみと、
すべての騒ぎ立つ者の脳天を打ち砕く。
24章19節
ヤコブから出る者が治め(「ラーダー」רָדָה)、
残った者たちを町から消し去る。

  • 第四の託宣はメシア預言です。イスラエルの【永遠の支配と栄光】について述べられています。特に、「ヤコブから一つの星が上り」は、やがて東方の博士たちがこの星を見つけて、はるばるベツレヘムにまで礼拝しにやって来ました。⇒参照マタイの福音書の「星」

4. バラムの託宣と私たちとのかかわり

  • バラムの託宣と私たちのかかわりについて、最後に思いをめぐらしてみたいと思います。アブラハムを召した主なる神はアブラハムに対して、「あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」(創12:3)と約束されましたが、イスラエルの民を呪おうとしたバラクはかえって呪われる者となってしまいました。
  • アブラハムにつながる者たち(ユダヤ人)を祝福する者は祝福され、呪う者はのろわれるのです。そのことは、光とやみとを区別される神の救いの計画と密接なかかわりをもっているからにほかなりません。

2012.2.18


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