モアブに対する主のミシュパート
エレミヤ書の目次
49. モアブに対する主のミシュパート
【聖書箇所】 48章1節~47節
ベレーシート
- イスラエルの歴史を学ぶときに、イスラエルがその周辺諸国とどのようなかかわりをもっていたかを知ることは、歴史を立体的に理解する上で必要な知識です。
- モアブ人のルツがナオミと結びつく(「ダーヴァク」דָּבַק)することによって、そこからオベデ、エッサイ、ダビデ、そしてイエス・キリストとつながる系譜がありますが、ここではそうした系譜をわきに置いて、モアブとイスラエルの歴史的なかかわりがいかなるものであったかを理解することで、エレミヤ書49章の神のさばきの意味が見えてくると信じます。
- 北イスラエルの首都のサマリヤがアッシリヤによって滅ぼされる前から、預言者アモス(2:1~3)、およびイザヤ(15・16章)によっても、モアブに対する神のさばきは予告されていました。エレミヤ書のモアブに対するさばきの預言はバビロンに次いで長いものです。
1. モアブの国土は荒らされ、主神ケモシュの捕囚となる
- 46節で「モアブ」が「ケモシュの民」と言い換えられています。「ケモシュ」とはモアブの軍神として崇められていました。他にも「アシュタロテ・ケモシュ」という名前の神も崇められていました。そして「モアブは、ケモシュのために恥を見る」とあります(13節)。「ケモシュ」はモアブの軍神ですが、モアブの人々とケモシュが捕囚となることが語られています。他にも「アシュタロテ・ケモシュ」という名がありますが、これらは多産豊穣と性愛の女神です。
2. モアブの高ぶり
- 29節に「私たちはモアブの高ぶりを聞いた。実に高慢だ、その高慢、その高ぶり、その誇り、その心の高ぶりを」とありますが、「高慢」を意味する語彙が並べ立てられています。「高ぶる」という動詞はありませんが、男性名詞の「ガーオーン」(גָּאוֹן)と「ゴーヴッハ」(גֹּבַהּ)、女性名詞の「ガーヴァ―」(גַּאֲוָה)、そして最上級の「メオード」がついた形容詞「ゲーエー」(גֵּאֶה)の四つが「高ぶり用語」です。この高ぶりは主に対するものとされています。イスラエルとの長いかかわりを考えるならば、それが理解できます。
- また、その高慢の中には、地理的に死海とヨルダン川によって外敵の侵入を幾分免れたことをよいことに、それが彼らの誇りとなっていたようです。そのことをよく表わしているのが、11節の「ぶどう酒のたとえ」です。アッシリヤの勢力によってサマリヤが陥落したときにも、捕囚として連れて行かれることはありませんでした。むしろ自分たちの領土を広げる契機となったたのです。しかし今や、バビロンによって徹底的なさばきが預言されているのです。
3. モアブの地名とその意味
- エレミヤ書48章にモアブの多くの地名が記されています。以下の地図で確認できます。
- それぞれの町の名前には以下の意味があるようです。以下は「永野牧師の部屋第一」から引用させていただきました。
- エレミヤ書48章の最後の節では、バビロンに捕囚となった民が再び戻ってくることが預言されてはいますが、国家としてのモアブの存在は歴史の中からその姿を消すこととなったのです。
2013.4.16
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