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位打ちされ、ノックアウトされたサウル

25. 位打ちされ、ノックアウトされたサウル

【聖書箇所】 28章3節~25節

はじめに

  • 位打ち」ということばがあります。力量のない人がトップに立った結果、その地位そのものがその人を打ってくると意味です。サウル王はペリシテ人との戦いのために、イスラエルの人々が求め、そして神がその求めを許容されて選ばれた王でした。しかしその終わりはまことに惨めな姿をさらしています。
  • 王とならなければ、そんな惨めな生涯を送ることはなかったのかもしれません。神の代理者という普通の世俗の王とは異なるあり方が厳しく問われました。そのあり方とは「主の御声に聞き従う」ということです。サウルはこのあり方に合格することができませんでした。「位打ち」された気の毒な王でした。

1. はじめて「主に伺った」サウル

  • 本格的なペリシテ人との戦いを余儀なくされ、そのためにサウルはイスラエルを集結させて陣を張りました。しかし、敵の軍勢を目の当たりにしたサウルは「恐れ、その心はひどくわなないた」とあります。その時、サウルははじめて主に伺いを立てました(28:6)。サウルの生涯で「主に伺った」とあるのは、後にも先にもここだけです。しかし主からの答えはありませんでした。
  • そのために、彼は女の霊媒師のところへ赴き、サムエルを呼び出させます。呼び出されたサムエルはサウルに対して言ったことは、「あなたは主の御声に聞き従わず・・」と指摘されます。この指摘は、すでにサムエルが15章22節で語ったことばー「主は主の御声に聞き従うほどに、全焼のいけにえや、その他のいけにえを喜ばれるだろうか。見よ。聞き従うことは、いけにえにまさり、耳を傾けることは、雄羊の脂肪にまさる。・・あなたが主のことばを退けたので、主もあなたを王位から退けた。」と同様でした。
  • 「踏んだり、蹴ったり」とはこのことです。ますます悪いことになっていきます。そもそも「サウル」という名前の語源は「シャーアル」(שָׁאַל)で、「尋ねる、求める、頼む」という意味です。そうした意味を持った名前が「サウル」(原語では「シャーウール」(שָׁאוּל)でした。「サウルが主に伺った」という原文には「シャーアル」と「シャーウール」が並んでいます。まことに皮肉ですが、はじめてサウルが自分の名前の如く「主の御旨を尋ね求めた」のですが、なんの答えもなかったのです。そのために占い師によってサムエルを呼び出しましたが、そのサムエルから「なぜ私に尋ねる(シャーアル)のか」と言われ、「もう主はあなたを離れた」と言われてしまったのです。さらに皮肉なことに、サウルが死んだあと、ダビデがしたことはなんと「主に伺った」ことでした(Ⅱサムエル2:1)。ダビデは、本来サウルがしなければならなかったことをした人物としてここに描かれています。「主に伺う」―これこそ、他国の専制君主とは一線を帰すイスラエルの王制の理念です。

2. ノックアウトされたサウル

  • 20節以降には、ショックのあまり、生きる意欲を失ったサウルが描かれています。聖書はその様子を「突然、倒れて地上に棒のようになった」と記しています。原文では「彼の背丈いっぱいに倒れた」となっています。面白い表現です。おそらくボクシングなどでノックアウトされて倒れて伸びてしまった姿を思い起こさせます。
  • このときサウルは完全にノックアウトされたのです。食欲もなく、すっかりおびえきっているサウルの姿が見えます。王がこのような状態では戦うことは出来ません。かといって、代わりに先頭に立って戦う王も他にはいません。まことに霊媒する女さえもが、サウルのことを気の毒に思い、食事を賄ってあげたほどでした。

おわりに

  • 28章から教えられることは、「主の御声を聞く」という姿勢の大切さです。これは優しいようでとても難しいことなのです。日々の雑用で忙しいと理由をいくら並べて誰かから同情されたとしても、主は同情してくれるでしょうか。
  • 主イエスはマリヤが選んだ姿勢を「良い方を選んだ」とマルタに言いました。それはイエスの生き方そのものでした。たとえ同情されたとしても、神とのかかわりが建て上げられることはありません。むしろ、このことが建て上げられなければすべてを失っていくという現実も有りうるのです。日々の生活をよりシンプルにして、主の前に静まり、主の御声を聞くというライフスタイルを築いていく必要があるのです。

2012.7.6


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