周囲の敵を征服したダビデとその重臣たち
サムエル記の目次
34. 周囲の敵を征服したダビデとその重臣たち
【聖書箇所】 8章1節~18節
はじめに
- この章では、2回同じフレーズが出てきます。それは、
「主が、ダビデの行く先々で彼に勝利を与えられた。」というフレーズです。原文では「主はダビデを救った」と表現します。このようにダビデが勝利できたのは、歴史の中で初めて北のメソポタミヤ大国も南のエジプトも弱体していた時代で戦いに干渉することがてせきなかった時代だと言われていますが、それもすべて主の支配の中にあってのことであり、聖書は明確に「主がダビデの行く先々で勝利を与えられた」と証言しています。
1. ダビデが征服した国々
- イスラエルの周辺諸国をダビデはすべて征服しています。かつてヨシュアがはじめた征服をダビデは完全に成し遂げたことになります。
- 西は強敵ペリシテ人、南はエドム人とアマレク人、ヨルダンの東側のモアブ、アンモン、そして北のアラム、メソポタミヤ流域の国々です。「・・を打ち」(「ナーハー」נָכָה)という動詞が1, 2, 3, 5節にあります。
- 周辺諸国を征服したことでなにがもたらされたのか。それは多くの分捕りもの。たとえば、金や銀、青銅のみならず、労働力としての奴隷、青銅の武器などです。それらはすべて主のために、聖別してささげらせました。また多くの貢物が入ることにより、ダビデはかつてのローマの市民たちのように、税金を収めることがないほど、国全体が豊かになったのでした。そして王の威信が周辺諸国に対して示されました。
- ひとつ気になるのは、ツォバの王と戦った時に、「ダビデは、その戦車全部の馬の足の筋を切った。ただし、戦車の馬百頭を残した」とある記述です。なぜダビデは百頭の馬の足の筋を切らずに残したのか。ヨシュアが戦った時にも、主は敵の馬の足の筋を切り、彼らの戦車を火で焼かなければならないことを言っています(ヨシュア11:6)。
- ダビデの時代にはまだ馬を用いた戦いは普通ではあれませんでした。歩兵が普通であり、イスラエルの戦い方は主に奇襲攻撃が主であったようです。ダビデが残した百頭の馬について、主のおとがめなしであつたのは、戦いのために用いられたのではなく、運搬用のものであったのかもしれません。戦いに馬を用いたのはソロモン王です。彼は主の掟を破って、エジプトから多くの馬を輸入したのです。戦いにおいて「馬」を活用する時代に、それを用いないということは、神への信頼が必要です。しかもそのリスクは非常に高いと言わさせるを得ません。果たして、馬を使わずに神はそれにもまさる勝利をいつももたらしてくれるのか、常に信仰が試されるからです。
2. ダビデの重臣たち
- 8章の最後の方に、ダビデの重臣となった人物の名前が記載されています。これからも何度も登場する名前です。
(1) 軍団長 ツェルヤの子ヨアブ
(2) 参議(補佐官) アヒルデの子ヨシャパテ
(3) 祭司 アヒトブの子ツァドクとエブヤタルの子アヒメレク
後者の「アヒメレク」は、ダビデの四男アドニヤのクーデターに加担したことにより、祭司として失脚させられます。
(4) 書記 セラヤ
(5) 祭司 ダビデの息子たち(Ⅰ歴代誌18:17では、ダビデの子らは「王の側近者であった」と記されています。
2012.7.25
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