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地に公義を打ち立てるしもべ(預言者的メシア)

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33. 地に公義を打ち立てるしもべ(預言者的メシア)

【聖書箇所】42章1~17節

ベレーシート

  • 42章には二種類の「しもべ」が登場します。一つは、1~4節に紹介される「わたしのしもべ」と言われる存在です。もう一つは、18~19節に登場する「わたしのしもべ」です。いずれも語彙としては全く同じ「アヴディー」(עַבְדִּי)で、単数です。前者は主から期待されている「しもべ」ですが、後者は主の期待に応えることのできないでいる「しもべ」です。前者の「しもべ」は、後者の「しもべイスラエル」の失敗を踏み直す「しもべとしてのメシア」です。つまり、後にこの世に遣わされるイェシュアです。個人としてのイェシュアは集団としてのイスラエルの民を代表しているのです。

1. 国々に公義をもたらす「わたしのしもべ」

イザヤ書には四つの「主のしもべの歌」というのがあります。以下の42章1~9節はその第一の歌です。四つの「主のしもべの歌」にはそれぞれ特徴があります。その特徴を学んで暗記する必要があります。

【新改訳改訂第3版】イザヤ書42章1~4節

1 見よ。わたしのささえるわたしのしもべ、わたしの心の喜ぶわたしが選んだ者。わたしは彼の上にわたしの霊を授け、彼は国々に公義をもたらす。
2 彼は叫ばず、声をあげず、ちまたにその声を聞かせない。
3 彼はいたんだ葦を折ることもなく、くすぶる燈心を消すこともなく、まことをもって公義をもたらす。
4 彼は衰えず、くじけない。ついには、地に公義を打ち立てる。島々も、そのおしえを待ち望む。

  • 第一の「主のしもべ」の特徴はなによりもまず、この地上に「公義」を「もたらす」「打ち立てる」しもべです。「公義」ということばがこの短い箇所の中に3回(1, 3, 4節)も使われています。新改訳では「公義」と訳されていますが、岩波訳と関根訳も同じく「公義」と訳しています。口語訳は「」、新共同訳は「裁き」、中澤訳は「定め」、フランシスコ会訳では「正しい法」、バルバロ訳は「公正」、ATD訳では「判決」と訳しています。それぞれ異なる訳語が用いていますが、原語である「ミシュパート」(משְׁפָּט)はそのような多用な意味合いがあることを示唆しています。しかしこの「ミシュパート」は神の統治概念を統括する語彙だと私は理解しています。それゆえ、「ミシュパート」を「神の統治」という言い方をしても良いのでは、と考えます。
  • この「ミシュパート」の概念も理念もはすべては神の「トーラー」(תּוֹרָה)の中に語られています。ですから、主のしもべの務めは、神の「トーラー」を正しく解き明かすことによってのみ、はじめて神の「ミシュパート」を打ち建てることができるのです。4節は同義的パラレリズムです。つまり、「公義」と「教え」は同義として使われています。
  • しばしば3節のみことば、つまり「彼はいたんだ葦を折ることもなく、くすぶる燈心をけすこともなく」という部分のみが取り出されて、イェシュアの弱い者に対する優しさ、謙遜をあらわすフレーズとして説明されることがあります。それは決して間違ってはいません。むしろそうした福祉理念ははすでにトーラーの中に記されています。むしろここでの真意は、トーラーに対する主のしもべの態度が説明されていると理解すべきです。どういうことかといえば、「葦」という⾔葉はヘブル語の「カーネ」(קָנֶה)で、LXX訳は「カルモス」(κάλαμος)が使われています。しかし意味としてはギリシア語の「カノーン」κανωνです。この「カノーン」も原義は「葦」(「カーネ」)です。つまり、まっすぐに⽴つ葦のように、物差し、尺度、法則、原理、基準を表す⾔葉なのです。ちなみに、聖書の「正典」を「カノン」と⾔います。
  • したがって、イザヤ書の「いたんだ葦を折ることもなく」とは、いたんでしまった神の律法(トーラー)を、再び、真っ直ぐに⽴たせて回復させることを意味しています。「燈⼼」も聖書(詩篇119:105)では神のみことば、すなわち神の律法を意味します。「くすぶる燈⼼を消すこともなく」とは、消えかけている神の律法をしもべなるメシアが再び燃え⽴たせることを意味します(脚注)。それゆえ、イエスの「わたしが来たのは律法や預⾔者を廃棄するためだと思ってはなりません。廃棄するためではなく、成就するために来たのです。」(マタイ5:17)というみことばを正しく理解し、悟る必要があります。
  • 主のしもべであるメシアの召命は「みことばの回復」、すなわち、神の「トーラー」の回復です。それが4節の「地に公義(ミシュパート)を打ち立てる」ことと密接な関係にあるのです。「島々も」とは異邦の人々のことで、彼らも「彼(主のしもべ)のおしえ(トーラー)待ち望む」ようになることが預言されています。しかも、主のしもべはそのおしえ(トーラー)の回復のためには、決して「衰えることもなく、くじけることもない」のです。
  • ちなみに、イザヤ書42章2節には「彼は叫ばす、声をあげず、ちまたにその声を聞かせない。」とあります。事実、神のしもべとしてこの世に遣わされたイェシュアは神の教えの真意を説き、その中に記されている福祉理念を表わすために奇蹟的ないやしのわざをなされました。そのイェシュアが自分について来る多くの人々に対して、自分のことを人々に知らせないようにと彼らを戒められたと記されています(マタイ12:15)。そして、これは預言者イザヤを通して言われたことが成就するためだということで、42章1~4節が引用されています。
  • このように、第一の「主のしもべの歌」には、主のしもべはそのみおしえを回復する「預言者的しもべ」が強調されています。あるいは、「預言者としてのメシア」像が啓示されているとも言えるのです。21節にはこう記されています。

    【主】は、ご自分の義のために、みおしえを広め、これを輝かすことを望まれた。


2. 主のしもべは主とイスラエルが結んだ契約を確かなものとし、国々の光とする

  • 5節では、神ご自身が召したしもべに対して直接語りかけます。

【新改訳改訂第3版】イザヤ書42章5~7節
5 天を造り出し、これを引き延べ、地とその産物を押し広め、その上の民に息を与え、この上を歩む者に霊を授けた神なる【主】はこう仰せられる。
6 「わたし、【主】は、義をもってあなたを召し、あなたの手を握り、あなたを見守り、あなたを民の契約とし、国々の光とする。
7 こうして、見えない目を開き、囚人を牢獄から、やみの中に住む者を獄屋から連れ出す。

  • 1~4節にある「しもべの歌」に続いて、5節以降には主がしもべに対するかかわりとその務めの目的について、主ご自身が語っていることばです。神はしもべを「義をもって」召したことを述べています(6節)。「義をもって」(「ヴェツェデク」בְצֶדֶק)とはどういう意味でしょうか。「義」は「ツェデク」(צֶדֶק)は、「正しさ、正義」という意味ですが、それは倫理的な意味の「正しさ、正義」というよりも、本来的には「神と人とのかかわりの概念」を表わす語彙です。ですから、主がしもべを「義をもって召した」とは、主がしもべを「愛と信頼をもって呼んだ」と言い換えることができます。「召した」という動詞は「呼んだ」という動詞「カーラー」(קָרָא)です。「わたしはあなたを愛と信頼をもって呼んだ(召し出した)」という意味になります。ちなみに、新共同訳は「義において」を「恵みをもって」と訳しています。つまり、しもべに対する主の「愛と信頼」のかかわりを、「恵み」と解釈しているのです。
  • しもべに対する主の愛と信頼のかかわりをどのように描いているかといえば、新改訳では「あなたの手を握り」、「あなたを見守り」としています。しかし原文では、以下のように三つのことが記されています。

    ①「わたしはあなたの手を掴み(「ハーザク」חָזַק)」ーחָזַקは「強める」の意。
    ②「わたしはあなたを守り(「ナーツァル」נָצַר)」ー「ナーツァル」は「見守る」の意。
    ③「わたしはあなたを立てた(「ナータン」נָתַן)」ー「ナータン」は「ゆだねた」の意。

  • なんと麗しい信頼でしょうか。これらの麗しいかかわりは、主がそのしもべをして「民の契約」とし、「国々の光」とするためです。
  • 「民の契約とする」とは、神と結んだ契約、つまりアブラハム契約やモーセ契約などを主のしもべが確かなものとすることを意味します。また次の「国々の光」とは、「民の契約」が確かにされることを通して、国々と訳された異邦の国々にも「光」がもたらされることを意味しています。ここでの「光」とは「救い」の意味で使われています。
  • 文字通り、主のしもべが、神とイスラエルが結んだ契約を確かなものとすることによって、それに接ぎ木される異邦の民たちの救いも確かにすることが述べられているのです。


脚注
●「いたんだ葦」と「くすぶる燈心」の比喩的表現を、岩波訳はイスラエルの侵害されて来た領土、失われゆく自由といった政治的情況を意味するという解釈と、神の愛への信頼が薄れて信仰が死に瀕した宗教的心情の描写であるという解釈、この二つの意味合いを含んでいるとしています。フランシスコ会訳は「折れた葦」と「くすぶる灯心」を、打ち砕かれ、死んだも同然のイスラエルを指していると註解しています。しかし多くはこの二つの比喩は「抑圧された者」「最も弱い者」を示唆する表現だとしています。

2014.10,7


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