恩寵用語Ps9
詩9篇 「さばく」 שָׁפַט シャーファト דִּין ディーン
〔カテゴリー愛顧〕
8節「主は義によって世界をさばき(שָׁפַט)、公正をもって国民にさばきを行われる(דִּין)。
16節「主は、ご自分を知らせ、さばき(מִשְׁפָּט)を行われた。」
Keyword; 「さばく、さばきを行う」 judge, judging,
- この詩9篇1節の「奇しいわざ」(関根訳「妙なるみ業」)とは、この詩9篇の場合では、悪者は必ず自滅するという神のさばきの不思議さを意味しています。「貧しい者、しいたげられた者、悩む者」にとっては、神が正しい裁きを行ってくれること(judge)、かばってくれること(defending)、自分たちの訴えを支持してくれること(vindicate)、それ自体が恩寵なのです。
- 事実、バビロン捕囚時代に王の寵愛を受けたダニエルを妬んだ敵の画策、および、捕囚からの解放後にペルシャ王の側近ハマンが自分に頭をさげないモルデカイを恨んでユダヤ人を撲滅しようという画策、そのいずれもが発覚して自ら設けた穴に陥るという出来事がありました。これらは、自分たちにはどうすることもできない敵の策略に対して、神が義をもって敵をさばき、自滅させた例として考えることができるのではないかと思います。
- 「国々はおのれの作った穴に陥り、おのれの隠した網に、わが足をとられる。主はご自分を知らせ、さばきを行われた。悪者はおのれの手で作ったわなにかかった」(15, 16節)とする自滅の原則は、この詩9篇のみならず、7篇14~16節,63篇9~10節, 64篇8節にもみられます。
- 詩9篇では「さばき」を意味する三つの重要な統治用語が使われています。
①「シャーファト」(שָׁפַט)〔動詞〕「さばきをする」9:4, 8, 19, judge, defending, vindicate,旧約203回、詩篇32回(神のさばきによる恩寵を意味するものとしては7:8,11/10:18(かばう)/26:1/35:24/37:33/43:1/50:6/51:4/58:1,11/67:4/72:4/75:2, 7/82:8/94:2/96:13/98:9)
②「ミシュパート」(מִשְׁפָּט)。「シャーファト」(שָׁפַט)の名詞形。「さばき、審判」9:4, 7 旧約421回、詩篇65回。judgement,
③「ディーン」(דִּין) 動詞・名詞いずれも同形。「さばきを行う、審判する」9:4, 8 judge, govern, 〔動詞〕旧約24回、詩篇8回(7:8/9:8/50:4/54:1/72:2/96:10/110:6/135:14)。
〔名詞〕旧約20回、詩篇3回(9:4/76:8/140:12)
- 詩篇9篇では「シャーファト」(שָׁפַט)、「ミシュパート」(מִשְׁפָּט)、「ディーン」(דִּין)がワンセットで使われています。これはへブル詩の特徴であるパラレリズム、すなわち、同義的並行法によるものです。8節の「主は義によって世界をさばき(שָׁפַט)、公正(מִשְׁפָּט)をもって国民にさばきを行われる(דִּין)。」はその良い例です。
- 詩篇96篇にも10節「主は公正をもって国々の民をさばく(דִּין)」、同篇9節「主は、義をもって世界をさばき(שָׁפַט)、その真実をもって国々の民をさばかれる(שָׁפַט)。」とあります。
- 義をもって、公正をもって、裁かれる神がおられることで、私たちは自分で復讐することなく、神にすべてをゆだねることができるのです。