瞑想Ps32/A
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瞑想Ps32/A
- この詩篇は、罪を赦された者の歓喜の詩篇といえます。「あなたは、私の罪のとがめを赦されました。」(5節)ここでいう「赦し」とは、神の記憶から消し去られるとことを意味します。赦しても忘れないのが私たち人間ですが、神の赦しはすべてを忘れるのです。思い出して責めると言うことはありません。これがダビデのいう「赦された」という意味です。ただし、この赦しは、自分の罪を認めて告白することによってもたらされます。
- これは決して容易なことではありません。最初の人間アダムも自分の罪を隠そうとしました。罪を隠そうとするのが私たち人間なのです。だれも教えたことがないのに子どもが嘘をつくのは私たちの中にある深い罪のゆえです。ダビデも最初は隠そうとしていたのですが、隠し切れないことを悟ったのでしょう。ダビデはこう言っています。「私は黙っていたときには、一日中、うめいて、私の骨々は疲れ果てました。それは御手が昼も夜も私の上に重くのしかかり、私の骨髄は夏のひでりでかわききったからです。」(3、4節)。
- これは良心がどういうものかを分からせてくれる箇所です。ダビデは自分の罪を認め、それを主の前に告白しました。その時、神は彼の罪を赦しました。ダビデはその時、はじけるような解放感と喜びに包まれるのを経験しました。これは経験した者でなれば分かりません。罪を赦されたとしても、清算しなければならないことがあります。いやされなければならない多くの心の傷があります。しかし、赦しは新しい生活の確固とした土台となるのです。
- 詩篇の中で、個人的に神の赦しを経験してそれを語っているのはダビデだけです。詩篇の中には罪の赦しについて記されている箇所が13回あります。「赦しください」という嘆願が4回。「赦してくださいます」という信仰の告白が6回、そして、共同体としての罪が「赦された」という箇所が2回あります。しかし、罪の赦しを個人的にしるしているのはこの詩32篇だけです。この詩篇は多くの人々に影響を与えました。まず、パウロがこの詩篇をローマ人への手紙で引用していますし、キリスト教神学の基礎を築いたアウグスチヌスや宗教改革の火付け役となったマルチン・ルターもこの詩篇から多くの影響を受けました。この詩32篇は彼らにとってお気に入りの詩篇であったようです。パウロも、アウグスチヌスも、そしてルターも罪の赦しを経験することで世界に大きな影響を与えた人たちです。
- 詩篇32篇10節の「恵みが、その人を取り囲む」という表現も味わい深いものがあります。恵みとは神の変わることのない愛です。英語ではgoodness, loving-kindness, steadfast love, constant love, mercy といったことばで訳されます。敵意が人を取り囲むと、人はとげとげしくなり、疑い深くなります。しかし、恵みが取り囲むと、他の人に対してもっと優しくなり、人の罪を赦し、人を愛するようになります。より自由に、より自発的になります。イエスがパリサイ人シモンのところに招待されたとき、その食卓の席に「ひとりの罪深い女」が石膏のつぼを持ってきて、イエスの御足に口づけして、香油を塗りました(ルカの福音書8章)。そんな女を心でさばいているシオンに向かって、イエスは彼にこう言いました。「この女の多くの罪は赦されています。というのは、彼女はよけい愛したからです。しかし少ししか赦されない者は、少ししか愛しません。」と。罪を赦されるという経験は、その人に全く新しい生き方をもたらします。それは、愛による自発性です。
- 詩32篇9節には、「あなたがたは、悟りのない馬や騾馬のようであってはならない。それらは、くつわや手綱の馬具で抑えなければ、あなたに近づかない」とあるように、愛は決して強制されるものであってはならないのです。罪の告白においても、主に仕え、主を愛することにおいても、また人を愛することにおいても・・すべてにおいて自発的でなければなりません。「恵みが、その人を取り囲む」と、そのような自発的で、アクティブな人生に変えられることをダビデは経験したゆえに、人々にもその喜びを伝えようとしたのです。「恵みが私を取り囲む」とあかしできるような生涯を送れるようにと願います。
