礼拝用語Ps88
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詩88篇 「叫ぶ」 שָׁוַע シャーヴァ
(カテゴリー: 祈り)
13節「しかし、主よ。この私は、あなたに叫んでいます。」
Keyword; 「叫ぶ」 cry for help, call for help, cry out, 18:6,41/22:24/28:2/30:2/31:22/72:12/88:13/119:147
- 詩88篇は全く出口の見えない詩篇です。詩篇の中で最も暗い詩篇と言えます。6節には、「あなたは私を最も深い穴に置いておられます。そこは暗い所、深い淵です。」とあります(「最も深い穴に」を、岩波訳では「常闇の中に」と訳しています)。完全に閉ざされた世界、孤独ではなく孤立無援の世界です。作者はそんな状況から助けを求めて叫んでいるのです。しかし、出口の見えない最も暗い中こそ最も神に近いのかもしれません。
- 詩88篇には祈りの用語を表わす語彙がなんと6つもあります。
①1節の「ツァーアク」(צָעַק) ―動詞
「主、私の救いの神。私は、昼は、叫び、夜はあなたの御前にいます。」
②2, 13節の「テヒッラー」(תְּפִלָּה) ―名詞
「私の祈りがあなたの御前に届きますように。」
③2節のリンナーרִנָּה (rinnah) ―名詞 ※ちなみに、動詞は、ラーナンרָנַן(ranan)
「どうか、あなたの耳を私の叫びに傾けてください。」
④9節の「カーラー」(קָרָא) ―動詞
「主よ。私は日ごとにあなたを呼び求めています。」
⑤9節の「シャータハ」(שָׁטָח) ―動詞
「あなたに向かって私の両手を差し伸ばしています。」(別訳では「広げる、さらけ出す」)
⑥13節の「シャーヴァ」(שָׁוַע) ―動詞
「しかし主よ。この私は、あなたに叫んでいます。」
- 「叫んでいます」と訳されたことば「シャーヴァ」(שָׁוַע)は、具体的な助けを求めて必死に叫ぶことを意味します。ちなみに、名詞形は「シャヴアー」(שַׁוְעָה)で、詩篇では6回使われています(18:6/34:15/39:12/40:1/102:1/145:19)。同じく名詞の「シェヴァ」(שֶׁוַע)は詩篇5篇2節にのみ使われています。
- 他にも「叫ぶ」という動詞の類義語は多くあります。
(1) 「カーラー」(קָרַא)は、大きな声を出して神を呼び求める。体裁を繕うことなく、なりふりかまわない祈りの叫びです。
(2) 「ザーアク」(זָעַק)は苦しみの中からの叫び、嘆きを訴える叫びです。
(3) 「ルーア」(רוּעַ)は同じ叫びでも勝利の叫びで、喜びを伴った叫びです。
(4) 「ラーナン」(רָנַן)は喜びの叫びです。
(5)「 ツァーアク」(צָעַק)は切迫性、緊急性を伴った叫び、あるいは心の呻きを伴った叫びです。そして、祈りが聞かれるまでは決してやめない継続的な叫びであることが特徴です。
- このように、同じ「叫ぶ」(cry, cry out)でも様々なニュアンスがあるようです。