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神による状況の転換点

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34. 神による状況の転換点

【聖書箇所】Ⅱ歴代誌 10章1節~19節

ベレーシート

  • 10章からソロモンによって統治されていたイスラエルが二つに分裂する事態が起こります。その経緯について記していますが、歴代誌の著者は、列王記のようにソロモン王の晩年の罪(偶像礼拝)によって引き起こされたということは一切問題とはせずに、15節にあるように、「神がそうしむけられたから」としています。しかも、それは神がすでに北イスラエルの王となるヤロブアム(ソロモンの有力な部下)に約束していたことだとしています。今回は神の摂理の不思議さに注目したいと思います。

1. ソロモン王国の分裂への経緯

  • ダビデとソロモンの黄金時代の後、イスラエルの歴史はバビロン捕囚に至る分裂時代を迎えます。ソロモン王亡き後の後継者はレハブアムです。彼の時代に国は、北の10部族と南の2部族の分裂は、イスラエルの歴史において最も重要な事件です。どうして分裂が起ったのか、その経緯についての発端が10章に記されています。
  • ソロモンの時代にエジプトに疎開していたヤロブアムが戻って、代表となって、ソロモンの後継者レハブアムにした要求が記されています。

    【新改訳改訂第3版】Ⅱ歴代誌10章4節
    「あなたの父上は、私たちのくびきをかたくしました。今、父上が私たちに負わせた過酷な労働と重いくびきを軽くしてください。そうすれば、私たちはあなたに仕えましょう。」

  • ソロモンが彼らに負わせた過酷な労働と重いくびきとは具体的にはいったいどういうことでしょう。膨大な富がもたらした慢性的な国家財政の危機による負担です。

    a. 負担は国民に
    ソロモンの豪華な宮廷生活、防衛のための国家的建設事業とそれを遂行するための官僚組織に払われる莫大な人件費によって、国家財政は「慢性的な支出超過」に陥っていきました。そのつけはもちろん国民に回ってきます。

    b. 過酷な強制労働
    当時は征服地の住民を奴隷として強制労働させることは一般的なことであり、ソロモンもそうしました。しかしソロモンはイスラエルの民をも徴用して強制労働を課したのである(Ⅰ列王記4章6節、5章13~18節、9章15節、12章18節参照)。このことはサムエル記第一8章11節~18節でサムエルが預言した通りです。奴隷の場合はもっと過酷な労働に科せられ、多くの者が死んだようです。このことが大きな不満として蓄積され、またユダ族への優遇措置と合わさって、ソロモンの死後に国を分裂させる圧力となっていきました(12章1~4節)。ソロモンの息子レハブアムの時代になって、強制労働の監督者(役務長官)アドラムが殺されたのは、そのことを証明しています(Ⅰ列王記12章18節、Ⅱ歴代誌10章18節)。

    c. 庶民の貧困
    発展する商業は、貨幣経済の浸透とともに、富める者たちをさらに富ませ、貧しい者たちをさらに貧しくさせていきます。両階級間の格差は増大し、もはやソロモンの心は庶民に向かってはいませんでした。「もはや彼の心は父ダビデの心とは違って、彼の神、主と全く一つにはなっていなかった。」(Ⅰ列王記11:4)とあるように、ソロモンはイスラエルの牧者のあり方を理想とする王の姿からはほど遠くなっていたのです。

  • そうしたソロモンの治世の不満から、それらを軽くしてほしいという要求でした。この要求は果たしてとても難しい要求だったのでしょうか。平和ボケしたレハブアムや同世代の者たちにとっては、おそらくやっかいな問題であったに違いありません。レハブアムは、長老たちの意見を投げ棄てて、若者たちの意見を採用し、さらに傷口をさらに開くような脅しのことばをもって、ヤロブアムの要求を一刀両断のごとく切り捨てたのでした。このことに対して、北イスラエル(10部族)は「ダビデの家にそむいた」という経緯になっています(10:19)。しかも「今日もそうである」と。

2. 「レハブアム」と「ヤロブアム」の名前の意味

  • ここでⅡ歴代誌に登場する二人の人物の名前の意味を考えてみましょう。

(1) 「レハブアム」(「レハヴアーム」רְחַבְעָם)は「民を多くする」という意味です。父ソロモンがその後継者に託した思いが伝わってきます。

ところが実際のレハブアムはとても懐の狭い、自分の王国を建てようとする王でした。イスラエルの王はどこまでも神の代理者でしかありません。しかし、豊かな生活の中に生まれ育って王となった彼は、父祖ダビデのような「主を尋ね求める」「主に伺う」という最も大切な霊性が受け継がれていなかったようです。ですから、ダビデとソロモンによって統一国家となったイスラエルを二分させてしまったのです。

10章10節には「私の小指は父の腰よりも太い」と訳されたヘブル的慣用句があります。これは傲慢な思いを表わしています。「太くする」という動詞は「ヤーヴァー」(עָבָה)は旧約で3回しか使われていません。申命記32章15節には「エシュルン(イスラエルの別名)き肥え太ったとき足でけった。あなたはむさぼり食って、肥え太った。自分を造った神を捨て・・」とあります。


(2) 「&color():Invalid color: pinkヴァー」(「ヤロヴアーム」יַרָבְעָם)の「ヤロヴ」の語幹は動詞「リーヴ」(רִיב)だとするならば、「民を弁護する」という意味になります。事実、彼はそのようにしたのです。しかし北10部族の人々を弁護することで、レハブアムに反逆する結果となりました。北イスラエルの歴史においては、神に背反する歩みを「ヤロブアムの道を歩む」と表現しています。


3. 神がしむけられた転換点

  • 歴代誌の著者は、この分裂の事態を神が引き起こしたとしています。

画像の説明

  • 「ネシッバー」(נְסִבָּה)はこの箇所しか使われていない語彙です。並行記事のⅠ列王記12章10節では「シッバー」(סִבָּה)、やはりこの箇所のみ使われています。この二つのルーツである動詞は「サーヴァヴ」(סָבַב)で、「取り囲む」「巡る」「巡回する」「転ずる」「変わる」という意味を持っています。その名詞が「サッバー」「ネシッバー」で、「変遷、神の摂理」を意味します。
  • つまり、全イスラエルの分裂の出来事が神の摂理うちに(ご計画の中にある意図をもって)位置づけられていることを意味しているのです。分裂、敵意、隔ての壁、争いと言ったことが、神の大きなご計画において、神によって和解のわざがなされることを暗に示しているとも言えます。
  • 天と地、神と人、北イスラエルと南ユダ国、ユダヤ人と異邦人、男と女など、さまざまの領域における敵意が、御子イェシュアによって和解され、一つとなる神のご計画が根底にあるということです。それはメシアによる御国が実現する時です。そのヴィジョンがエペソ書1章に記されています。

【新改訳改訂第3版】エペソ書1章9~12節

9 みこころの奥義を私たちに知らせてくださいました。それは、この方にあって神があらかじめお立てになったみむねによることであり、
10 時がついに満ちて、実現します。いっさいのものがキリストにあって、天にあるもの地にあるものがこの方にあって、一つに集められるのです。
11 この方にあって私たちは御国を受け継ぐ者ともなりました。みこころによりご計画のままをみな行う方の目的に従って、私たちはあらかじめこのように定められていたのです。
12 それは、前からキリストに望みを置いていた私たちが、神の栄光をほめたたえるためです。


2014.3.4


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