神殿建設の準備に見るソロモンの特別な知恵
列王記の目次
05. 神殿建設の準備に見るソロモンの特別な知恵
【聖書箇所】 5章1節~18節
はじめに
- この箇所には、ソロモンが神殿建設の準備について記されています。本格的な建設は6章が始まります。しかしその前の準備の中に、ソロモンがイスラエルの歴史において黄金時代を築くことのできた特別な知恵(神から与えられた知恵)を垣間見ることができます。
- 「ソロモン」という名前の表記はヘブル語で「シェローモー」שְׁלֹמֹה、「平和」を意味する「シャーローム」שָׁלוֹם、「和解」を意味する「シェレム」שֶׁלֶם、「ひとつである」ことを意味する形容詞の「シャーレーム」שָׁלֵם、「完了する、完成する、平和を保つ」を意味する動詞の「シャーレーム」שָׁלֵםと同じ語根を持っています。つまり、「ソロモン」には、平和を保ち、平和を築いていく特別な能力(知恵)が神から与えられていました。それが神殿建設の準備においても見ることができるのです。
1. ソロモンのヒラムに対する神殿建設の表明と協力の要請
- 列王記5章では、ツロの王ヒラムが、ダビデに代わってソロモンが王となったことを聞いて遣いを出します。なぜなら、ヒラムはダビデといつも友情を保っていたからです。
- ソロモンはヒラムに人を送って神殿建設の計画を表明すると同時に、協力を要請したのです。特に神殿で使われるレバノンの杉材を切り出すことにおいて、熟練した者がイスラエルにはいないという理由からでした。ヒラムはこのソロモンの申し出を聞いて「非常に喜んだ」とあります(7節)。そしてソロモンと友好関係を結びました。
2. 神殿建設に見るソロモンの知恵
- そもそも神殿建設のプランは父ダビデが神によって与えられていました。すべての仕様書が作成され、それをダビデは子ソロモンに与えていました。その神殿の中でやがて奉仕するレビ人の奉仕の規定や資格、そして聖歌隊の規模など、そのための訓練をすでに始めていたのです。また神殿建設に必要な資金もイスラエル全土に呼びかけたとき、それに応答して、「自ら進んでささげる」者たちが起こされ、多くの資金が集められていました。
- 列王記にそうしたダビデのヴィジョンが記されていないのは、列王記の著者が、ソロモンの業績を記した書記の資料をもとにしているからです。ちなみに、ダビデの業績については歴代誌が記しています。
- さて、ダビデの神殿建設のヴィジョンとダビデが準備したものをソロモンはそのまま受け継いでいきます。ここにソロモンが父ダビデのものをすべてそのまま受け注ぐと言う知恵を働かせました。王位が変われば、さまざまなことが変えられてしまうのが常ですが、ソロモンは父の残した有形無形の遺産をすべて有効に受け継ぐ知恵が与えられていました。ツロの王ヒラムとの友好関係もそのひとつでした。
- 専制君主的な王であるならば、戦いによって相手国の良い物を奪い取って自分のものとするのが常道ですが、ソロモンは決して戦うことをせず、平和を保ちながら、それを自分のために(神のために)用いることのできた知恵ある王でした。相手を喜ばせて友好関係を築く知恵が神から与えられていたのです。そのことが彼をしてイスラエルの黄金時代を築かせたと言えます。
- しかし、ソロモンの知恵も大きな視野から見るならば、善し悪しがありました。善い面では、あらゆる領域で「平和」を保つことができ、そのことが結果的に国を豊かにしていきましたが、悪い面では、特に宗教的な面において妥協を余儀なくされ、神の「聖」を喪失していく面があったことを忘れてはならないと思います。物事には常に両面があるということです。
2012.9.7
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