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第三次伝道旅行 (2) エペソ騒動の背後にあるもの

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32. 第三次伝道旅行 (2) エペソ騒動の背後にあるもの

【聖書箇所】 19章21節~41節

ベレーシート

  • エペソにおける二年余りの働きの結果、「主のことばは驚くほどに広まり、ますます力強くなって行った」(19:20)とあります。魔術を行っていた者たちの多くが、その高価な書物を人々の前で次々と火で焼き尽くしました。霊的に悪い影響を与えるものを、高価だからと言って、後生大事に隠し持っていたり、あるいは人に譲ったりすることなく、きっぱりと焼き捨ててしまうことは重要です。このことによって主のみことばがますます力をもって優勢になっていったのです。このことは主にある者ひとりひとりにとって重要です。やがてエペソの教会がアジアにおいて重要な霊的センターになっていったのもうなずけます。

1. パウロのローマ行が御霊によって示される

  • 23節以降に記されているエペソでの「ただならぬ騒動」が起こる前に、パウロは御霊の示しにより、やがてローマに行くことを示されたようです。実は、第三回伝道旅行の後の神の御計画はパウロがローマに行くことでした。しかしそれがどのように実現されていくのか、パウロ自身も、まただれも皆目分かりませんが、それは使徒の働き21章以降の重要な導きです。ここではそのことが伏線的に表された感じです。たとえどんなことがパウロの身に起こったとしても、神の御計画は必ず実現されていくことを暗示しています。事実、エペソでは「この道」のことから、「ただならぬ騒動」(とんでもない大騒動)が起き、パウロに示された神の御計画も頓挫してしまかもしれない状況が起こりました。

2. エペソでのただならぬ騒動

  • 事の発端は、パウロが「手で作った物など神ではない」(26節)というはっきりとした態度でキリストの福音を伝え、それが広まったことで、神殿の模型が売れなくなってなってしまうという事態が起こりました。日本でも神社仏閣がはびこるところには、多くの人々が集まるので、それなりの宗教ビジネスが成り立っています。その宗教ビジネスがうまくいかなくなるという事態が起こっときに、その利害関係に巻き込まれた人々が怒り、「偉大なのはエペソ人のアルテミスだ」と叫び始め、町中を巻き込んで暴動を起こそうとしたのです。
  • 19章17節にある「恐れを感じて、主イエスの御名は偉大だ」とする告白と「偉大なのはエペソ人のアルテミスだ」という叫びは、一見、対照的に見えますが、ここではどちらが偉大なのかという宗教的な問題ではありません。後者の叫びは宗教の名を借りていますが、本質は自分たちの利得問題です。銀細工人とその下で働く職人たちが、「アルテミス」に対する信仰がここで問題となっているのではなく、利得の損害を宗教の名を借りて訴えようとしてるのです。
  • 大女神アルテミスのご威光が地に落ちてしまう問題ではなく、収入が入らなくなったことが問題なのです。今日の世界にもさまざまな宗教の名を借りた戦争があるように見えますが、それは宗教的な問題よりも、利得が絡んでいる問題であることが多いのです。

3. エペソの町の書記官の冷静な説得

  • 「偉大なのはエペソ人のアルテミスだ」と二時間も叫んでいるのは異常なことです。むしろ「アルテミス」が無能であることを逆に宣伝しているようなものです。本当に偉大な神であるならば、むしろその神に任せるのが賢い方法と言えますが、そこが群衆心理の危うさです。「大多数は、なぜ集まったのかさえ知らなかった」とあります。冷静な判断が失われている状況です。
  • 町の書記官の冷静な客観的判断は目を見張ります。

    【新改訳改訂第3版】
    35 町の書記役は、群衆を押し静めてこう言った。「エペソの皆さん。エペソの町が、大女神アルテミスと天から下ったそのご神体との守護者であることを知らない者が、いったいいるでしょうか。
    36 これは否定できない事実ですから、皆さんは静かにして、軽はずみなことをしないようにしなければいけません。
    37 皆さんがここに引き連れて来たこの人たちは、宮を汚した者でもなく、私たちの女神をそしった者でもないのです。

    40 きょうの事件については、正当な理由がないのですから、騒擾罪に問われる恐れがあります。その点に関しては、私たちはこの騒動の弁護はできません。

  • 皮肉なことに、銀細工人たちが大騒ぎをした結果、パウロの伝道の方法が合法的なものであることが、かえって書記官の冷静な判断によって証明されてしまったのです。また同時に、口先では「偉大なのはエペソ人のアルテミスだ」と叫んでいながら、腹の中では結局のところ自分の利害損得を第一にしていたことを考えていることが明らかにされてしまったのです。


2013.8.15


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