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義人は信仰によって生きる ノア

増補「義人は信仰によって生きる ノア」


主の安息の型 ノア

はじめに

  • アベル、エノクに続いて、信仰の模範者として挙げられている人物はノアです。わずか1節のみです。

【新改訳改訂第3版】ヘブル人への手紙11章7節
信仰によって、ノアは、まだ見ていない事がらについて神から警告を受けたとき、恐れかしこんで、その家族の救いのために箱舟を造り、その箱舟によって、世の罪を定め、信仰による義を相続する者となりました。

  • アベルのささげた物が良いささげ物だと神があかししてくださいました。エノクは死を見ることなく天に移されましたが、彼も神に喜ばれていることがあかしされました。神が「あかしする」とは、信仰によって義と認められることであり、神に喜ばれ受け入れられることです。なぜなら、「信仰がなくては、神に喜ばれることはできない」からです(ヘブル11:6)。そしてノアも、その信仰による義の相続者となりました。
  • 「喜ばれる」という動詞は「ユーアレステオー」(εὐαρεστέω)で新約ではヘブル書にのみ3回使われています。11章5, 6節、13章16節。6節の「喜ばれる』のヘブル語訳は「ラーツァー」(רָצָה)で「神に受け入れられる」ことを意味します。名詞の「喜ばれること」を意味する「ユーアレストス」(εὐάρεστος)は、ヘブル書では1回(13:21)使われていますが、新約では他に8回使われています(ローマ12:1, 2/14:18、 Ⅱコリント5:9、エペソ5:10、ピリピ4:18、コロサイ3:20、テトス2:9)。

1. ノアのプロフィール

  • 実は、ノアも神に喜ばれていました。というのは、創世記6章8節に「ノアは、主の心にかなっていた」とあるからです。直訳では「ノアは主の目に恵みを見出した」となっています。また、ノアはエノクと同様、「主とともに歩んだ」(「歩く」を意味する「ハーラフ」הָלַךְの強意形ヒットパエル態)二番目の人物です(創世記6:9)。そしてかつ「正しく」(「ツァディーク」צַדִּיק)、「完全な」(「ターミーム」תָּמִים)人でした(創世記6:9)。
  • 「ノア」(נֹחַ)の語源は、「ヌーアッハ」(נוּחַ)で、「安息、休息、慰め」を意味します。類義語の動詞「ナーハム」(נָחַם)のピエル態は「慰める」という意味で、それは「救い」と同義です。

2. ノアが生きていた時代

【新改訳改訂第3版】創世記6章1~6節
1 さて、人が地上にふえ始め、彼らに娘たちが生まれたとき、
2 神の子らは、人の娘たちが、いかにも美しいのを見て、その中から好きな者を選んで、自分たちの妻とした。
3 そこで、【主】は、「わたしの霊は、永久には人のうちにとどまらないであろう。それは人が肉にすぎないからだ。それで人の齢は、百二十年にしよう」と仰せられた。
4 神の子らが、人の娘たちのところに入り、彼らに子どもができたころ、またその後にも、ネフィリムが地上にいた。これらは、昔の勇士であり、名のある者たちであった。
5 【主】は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾くのをご覧になった。
6 それで【主】は、地上に人を造ったことを悔やみ、心を痛められた。

  • 神の子ら(堕落した御使いたち)は、人の娘たちが、いかにも美しいのを見て、その中から好きな者を選んで、自分たちの妻としたことによって、主は、「わたしの霊は、永久には人のうちにとどまらないであろう。それは人が肉にすぎないからだ。それで人の齢は、百二十年にしよう」と言われました。ノアが生きていた時代(洪水前の状態)は完全に堕落していたことが分かります。
  • 5節の「地上に悪が増大する」の「増大する」は「はびこる」ことで、悪(「ラーアー」רָעָה)が人間の心の内部まで深く染み込み、その悪が熟して溢れるという意味です。心の思いによるすべての計画が、常に不信仰に基づくものであって、まさに、悪から始まって悪に終わるという状態、神のすべての支配(統治)を拒絶し、神からのすべての干渉を受けることを嫌う状態です。
  • また、11節には「地は、神の前に堕落し、地は、暴虐で満ちていた。」と記されています。「暴虐で満ちていた」とは、人を損ない奪うことで、殺人、強盗、暴行、暴力が横行していたことを意味します。そのことで、神は、「すべての肉なるものの終わりが、わたしの前に来ている。地は、彼らのゆえに、暴虐で満ちているからだ。それで今わたしは、彼らを地とともに滅ぼそうとしている。」と語られたのです。7節にある「わたしが創造した人を地の面から消し去ろう。」という発言は、まさに衝撃的な宣言です。「洪水によるさばき」は、神の声に全く耳を開こうとしない時代に対する恐ろしい刑罰です。そのような時代背景の中で、ノアは主の前に恵みを得た唯一の一人だったのです。

3. 「恐れかしこんで」箱舟を建造したノア

  • ノアは、神から箱舟を建造することを命じられました。箱舟の建造は神のさばきと同時に、救いをもたらす唯一の道です。どんな洪水にもあっても、決して沈むことの許されない巨大な箱舟の建造に当たって、途方もない多くの時間と忍耐があったはずです。また、多くの知恵と技術を要したはずです。しかも、造るのは、自分と三人の息子たちだけです。
  • 「恐れかしこんで」と訳された「ユーラベノマイ」(εὐλαβέομαι)は、この箇所にのみ使われている語彙です。救いをもたらす箱舟の建造は、失敗の許されない大事業です。それゆえ、そのプロセスにおいては、常に慎重でなければならなかったはずです。全体と細部にわたるすべてにおいて細心の注意を払わなければならなかったはずです。箱舟の建造による救いへの道を委ねられたノアは、洪水後の新しい時代を委ねられた人物でもあります。その責任は、常に、重くのしかかったに違いありません。そのような意味において、ノアは「恐れかしこんで」その任に当たったと考えられます。

4. 箱舟を造ったノアはメシアの型

【新改訳改訂第3版】創世記5章28~29節
28 レメクは百八十二年生きて、ひとりの男の子を生んだ。
29 彼はその子をノアと名づけて言った。「【主】がこの地をのろわれたゆえに、私たちは働き、この手で苦労しているが、この私たちに、この子は慰めを与えてくれるであろう。」

  • アダム⇒セツ⇒エノシュの系譜では、「〇〇は〇〇年生きて、〇〇を生んだ」という定型句で記されていきますが、ノアのところでは、〇〇を生んだというところに、その名前がなく、「レメクは百八十二年生きて、ひとりの男の子を生んだ。」(5:28)と記されています。29節ではじめて「その子をノアと名づけた」と記しています。他の子どもとは異なり、ノアは「ひとりの男の子」として特別な意味で強調する書き方をしています。原文では「ベーン」(בֵּן)とだけ記されています。ノアの誕生は、セツの系譜にある人々、およびレメクの家族にとっても、「慰めを与えてくれる」特別な存在として期待されたのです。その期待が「ひとりの男の子」を生んだという言葉に表されているように思います。
  • この「ひとりの男の子」、「ベーン」(בֵּן)はメシアの型です。まさに、ヨハネが指し示している「ひとり子」を示唆しています(ヨハネ1:14, 18/3:16, 18/Ⅰヨハネ4:9)。また、やがて神のひとり子として来られるイェシュアを予表しています。「ノア」という名前の語源となっている「ヌーアッハ」(נוּחַ)は、人々に真の安息と慰めをもたらすイェシュアをも予表しています。堕落した人々を洪水によって滅ぼされる神のさばきの中で、ノアは神のみことばに従って箱舟を造ることによって家族を救い、安息を与えました。ノアの家族以外には神のみことばを信じる者がいなかったからです。
  • やがて来られる再臨のメシアも、終わりの日に神が世を火でさばかれるとき、主を信じる者たちを救い、真の安息である永遠の御国へと導かれるのです。

2015.2.12


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