聖絶すべき先住民
【補完13】 聖絶すべき先住民
【聖書箇所】申命記 20章16~18節
ベレーシート
- 申命記20章では、イスラエルの民が必ず聖絶すべき六つの先住民の名を挙げ、その理由が示されています。今回は、この点だけを注視してみたいと思います。
1. 聖絶すべき六つの先住民
- 寄留者として見知らぬ地であるカナンに来たアブラハムに主は現われ、「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える。」(創世記12:7)と言われました。その後、主はアブラハムと「松明(たいまつ)の契約」を結んで次のように言われました。
【新改訳改訂第3版】創世記15章18~21節
18 その日、【主】はアブラムと契約を結んで仰せられた。「わたしはあなたの子孫に、この地を与える。エジプトの川から、あの大川、ユーフラテス川まで。
19 ケニ人、ケナズ人、カデモニ人、
20 ヘテ人、ペリジ人、レファイム人、
21 エモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人を。」
- 創世記15章18~21節には、エジプトの川からユーフラテス川に至るまでの10の民族名が示されています。しかし、エジプトを出たイスラエルの民がカナンの地に侵入してそこを占領する上で、聖絶すべき民は6~7の住民に限られています。
- 申命記7章1節では「ヘテ人、ギルガシ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人」(7民族)となっていましたが、今回の申命記20章では、聖絶すべきカナンの先住民は「ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人」(6民族)となっています。
- ちなみに、カナン侵入後では「カナン人、ヘテ人、ヒビ人、ペリジ人、ギルガシ人、エモリ(アモリ)人、エブス人」(7民族)となっています(ヨシュア記3:10、24:11)。ただし順不同です。そして、士師記では「イスラエル人はカナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の間に住んで」(6民族)となっています(3:5~6)。
- 6民族、ないし7民族の違いは、「ギルガシ人」が入っているかいないかの違いです。「ギルガシ人」とは「新聖書辞典」(キリスト新聞社)によれば、ヨルダン川西岸のエリコ付近に住む民族だとあります。
- 以下、6つの民族が住んでいた地域を申命記20章に記されている順にチェックしておきたいと思います。
①「ヘテ人」・・ヘブロンのマクペラ付近に住んでいた先住民(創世記10:15、23:3, 5, 10, 16, 18)。
②「エモリ人」・・アモリ人とも言い、トランス・ヨルダンの住民の総称。
③「カナン人」・・カナンの平地に住んでいた先住民で、後にヤビンの将軍シセラが登場する。
④「ペリジ人」・・石垣(城壁)をもたない農耕民族だと記されています。
⑤「ヒビ人」・・・北方のレバノン山付近に住んでいた先住民。
⑥「エブス人」・・エブスはエルサレムのことで、そこを要塞としていた先住民。ダビデがその地を占領。
2. 聖絶すべき理由
- 神によれば、これらのカナンの地に住んでいた先住民(少数民族)を聖絶すべきとされています。その理由は、彼らがイスラエルの民にとってつまずきとなり、偶像礼拝へと堕落させる恐るべき異教の民だったからです。しかし完全には聖絶することができず、事実、イスラエルの民は主に対して罪を犯し、偶像礼拝という結果をもたらしたのです。
- 約束の地に住む先住民は、イスラエルの生活スタイルやものの考え方と相反する異質的な社会でした。イスラエルの民がどのようにしてその異質的な社会環境の中で、征服と定着を果たし得たのか。その成功も失敗も隠すことなく、ありのままに歴史書(ヨシュア記~列王記)の中に記されています。神の民イスラエルが異教的環境の下で如何に生きるべきか。申命記のメッセージは、主にある私たち(クリスチャン)にとっても、常に新しい今日的課題なのです。
2017.10.31
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