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見よ。良い知らせを伝える者の足を

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2. 見よ。良い知らせを伝える者の足を

ベレーシート

  • ナホム書1章で最も注意しなければならないのは人称です。主が語っている対象である「人称」(あなた)が誰を指しているのか、ユダに対して語っているのか、それともアッシリヤに対して語っているのかを見分ける必要があります。そうでないと、わけのわからない箇所となってしまいます。
  • 今回は、「あなた」という人称が一方ではユダ、一方ではアッシリヤを指しており、ユダに対する預言とアッシリヤに対する預言が並列されているために理解が難しくなってしまっています。しかし人称を正しく同定するならば、おのずと筋が通り、理解しやすくなります。ただし、そのためには時代的な背景やヘブル語の知識が必要です。
  • ヘブル語の文の特徴として、例えば、ゼカリヤ書9章9節でメシアの初臨の出来事が記され、すぐ後の10節ではメシアの再臨の出来事が何の説明もなく、繋がって語られるということがあります。それはまるで、二つの異なる絵が壁に並べて飾られているようなものです。

1. 1章にある人称の同定

  • 1章の9節以降の「あなたがた」、あるいは「あなた」、また「彼ら」の対象が誰であるかが分かるようにしてみました。流れが見えてくるはずです。

【新改訳改訂第3版】ナホム書 1章9~15節
9 あなたがた(ユダ)は【主】に対して何をたくらむのか。主はすべてを滅ぼし尽くす。仇は二度と立ち上がれない。
10 彼ら(アッシリヤ)は、からみついたいばら。大酒を飲んだ酔っぱらいのようであっても、かわいた刈り株のように、全く焼き尽くされる。
11 あなた(アッシリヤ)のうちから、【主】に対して悪巧みをし、よこしまなことを計る者が出たからだ。

12 【主】はこう仰せられる。「彼ら(アッシリヤ)は安らかで、数が多くても、刈り取られて消えうせる。わたしはあなた(ユダ)を苦しめたが、再び、あなた(ユダ)を苦しめない。
13 今、わたしは(アッシリヤ)のくびきをあなた(ユダ)からはずして打ち砕き、あなた(ユダ)をなわめから解き放す。」
14 【主】はあなた(アッシリヤ)について命じられた。「あなた(アッシリヤ)の子孫はもう散らされない。あなた(アッシリヤ)の神々の宮から、わたしは彫像や鋳像を断ち滅ぼす。あなた(アッシリヤ)はつまらない者であったが、わたしはあなた(アッシリヤ)の墓を設けよう。」
15 見よ。良い知らせを伝える者、平和を告げ知らせる者の足が山々の上にある。ユダよ。あなた(ユダ)の祭りを祝い、あなた(ユダ)の誓願を果たせ。よこしまな者は、もう二度と、あなた(ユダ)の間を通り過ぎない。彼ら(アッシリヤ)はみな、断ち滅ぼされた。

  • 「あなた」ということばの人称内容をまとめてみると以下のようになります。

(1) 9節の「あなたがた」は、ユダ。
(2)11節の「あなた」は、アッシリヤ。
(3)12節と13節の「あなた」は、ユダ。
(4)14節の「あなた」は、アッシリヤ。
(5)15節の「あなた」は、ユダ。
(※但し、15節は新共同訳では2章1節とされています)


2. 1章14節の諸訳

  • 1章14節はアッシリヤのニネベに対して預言された箇所ですが、この箇所をいろいろな訳で見てみます。

【口語訳】             
主はあなたについてお命じになった、「①あなたの名は長く続かない。わたしはあなたの神々の家から、彫像および鋳造を除き去る。あなたは②罪深い者、わたしはあなたの墓を設ける」。

【新改訳改訂3】          
【主】はあなたについて命じられた。「①あなたの子孫はもう散らされない。あなたの神々の宮から、わたしは彫像や鋳像を断ち滅ぼす。あなたは②つまらない者であったが、わたしはあなたの墓を設けよう。」

【新共同訳】          
主はお前について定められた。「①お前の名を継ぐ子孫は、もはや与えられない。わたしは、お前の神の宮から/彫像と鋳像を断ち/②辱められたお前のために墓を掘る。」

【関根訳】
ヤハヴェは君について命ぜられた、「①君の名はふたたび思い出されることはない。君の神殿からわたしは彫像と鋳像を絶とう。わたしは君の墓を②恥辱にあわせよう。」

【岩波訳】
しかし、ヤハウェはあなたについて命じられた。「①二度とあなたの名が継がれることはない。あなたの神の家から、わたしは彫像と鋳像を断つ。わたしはあなたの墓を用意する。あなたが②無きに等しい者となったからだ。」

【フランシスコ会訳】
ヤーウェはお前について命じられた。「①お前の名を継ぐ子孫はもはや出ない。お前の神々の神殿から、彫像や鋳像を根絶やしにしよう。そしてお前の墓を準備しよう、お前は②生き恥をさらす者だから。」

【RSV】
主はあなたについて命令を下された。「①あなたの名は永遠に続くことはない。私はあなたの神々の家から、彫像と鋳像を取り去る。あなたは②罪深い者なので、私はあなたの墓を作る。」


①で「あなたの名は長く続かない」「あなたの子孫はもう散らされない」「お前の名を継ぐ子孫は、もはや与えられない」と訳された原文の直訳は、「あなたの名前から種がまき散らされることはない」です。動詞は「種を蒔く、はらます、妊娠する」という意味の「ザーラ」(זָרַע)の受動態です。それが「ロー」(לֹא)で否定されています。したがって子孫がないことを意味し、ニネベの名は途絶えることを意味します。

②の「罪深い」「つまらない」「辱しめられた」と訳された原語は「カーラル」(קָלַל)で、軽んじられる、見下げる、つまらない、卑しめるという意味。男性名詞の「コール」(קֹל)は、軽いこと、軽視という意味。女性名詞の「ケラーラー」(קְלָלָה)は、呪い、あざけり、という意味。

  • アッシリヤはかつて神の杖として、神の民を矯正するための道具として用いられましたが、彼らが自分の本分を越えて神に逆らったために、神は再び彼らをそのようには用いられないとしています。それは同時に、ユダが彼らのくびきから完全に解放されることを意味し、ユダにとって「良い知らせを伝える」(「バーサル」בָּשַׂר)こととなるのです。またそれは同時に「平和」(「シャーローム」שָלוֹם)の訪れを聞かされることと同義なのです。
  • ちなみに、15節(新共同訳2:1)の「彼らはみな、断ち滅ぼされた」は預言的完了形です。二ネベの完全な滅びがユダの慰めとなるのです。

3. 「よこしまな者」(ベリアル)の存在

  • 最後に、ナホム書1章で取り上げておかなければならないのは「べリアル」の存在です。ヘブル語は「ベリッヤアル」(בְְּלִיַּעַל)で、旧約では27回使われていますが、新約では同じく「べリアル」(Βελιάρ)で1回限りです。ヘブル語の「ベリッヤアル」(בְְּלִיַּעַל)は、「よこしまな者」「ならず者」「卑しい者」「悪い者」「堕落した者」「邪悪な者」「滅びの者」という意味で、神に敵対する存在(あるいは勢力)に適用されています。例えば、祭司エリの息子たち(Ⅰサム2:12)、ナバル(Ⅰサム25:25)、シェバ(Ⅱサム20:1)などに適用されています。堕天使の長もこの名前「べリアル」で呼ばれていますし、サタン、あるいは反キリストの別名でもあります。
  • ナホム書では1章11節と15節に「よこしまなことを計る者」とか、「よこしまな者」という訳で、2回使われています。単数形ですから、アッシリヤのある王の名前が当てはまるはずです。
  • 使徒パウロもⅡコリント6章15節で、「キリストとべリアルとに何の調和があるでしょう。」と述べていますが、その意図することは、この相反する存在が調和することなどあり得ないということです。信仰と不信仰、光と闇、正義と不法、神の神殿と偶像・・など、これらは決して妥協して調和させようとしてはならないし、また調和させることは不可能なのです。
  • 終末論的視点から見るならば、「べリアル」は確実に滅びる運命にあります。神はご自身の民であるイスラエルを立ち返らせるために、反キリストを用いられますが、最後にはこの反キリストおよび、その手下である偽預言者を滅ぼして、「硫黄の燃えている火の池に、生きたままで投げ込」みます(黙示録19:20)。
  • ナホム書1章はそのまま「終わりの日」における出来事の予型となっているのです。それゆえ、この章は、主に身を避ける者にとって力強い希望と慰めを与えていると言えるのです。

    2015.6.3


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