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1章26節


創世記1章26節

【新改訳2017】

神は仰せられた。「さあ、人をわれわれのかたちとして、われわれの似姿に造ろう。こうして彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地の上を這うすべてのものを支配するようにしよう。」

כו וַיֹּאמֶר אֱלֹהִים נַעֲשֶׂה אָדָם בְּצַלְמֵנוּ כִּדְמוּתֵנוּ
וְיִרְדּוּ בִדְגַת הַיָּם וּבְעֹוף הַשָּׁמַיִם וּבַבְּהֵמָה וּבְכָל־הָאָרֶץ
וּבְכָל־הָרֶמֶשׂ הָרֹמֵשׂ עַל־הָאָרֶץ׃

ベレーシート

●26節には神が「われわれ」という言い方をしていることが特徴です。関根訳は以下のように、三つの「われわれ」をきちんと訳しています。

そこで神が言われた、「われわれは人をわれわれの像(かたち)の通り、われわれに似るように造ろう。・・・・」

●神はここで「われわれ」と複数形で語っています。聖書の中で神が何かを宣言するとき、常に「わたしは」という単数形を用います。したがって、神がここで「われわれ」と言ったのには、偶然ではなく、深い意味があるのです。神はここで「われわれ」と言ったのは外部の者に向かって語ったのではなく、 御自身の内にある三位一体の交わりの中で語ったことを意味します。神はその交わりの中で
「われわれのかたちとして、われわれに似るように」ということは、人間が神に似ていること、神のかたちであること、それゆえに、神に近い存在であることを示しています。諸説があるようですが、御父が「御子」「御霊」に呼びかけたと考えられます。つまり、三位一体の神が永遠における愛の交わりの神であるとするならば、その神の交わりに与るべき存在として人間が造られたということです。

1. 「われわれのかたちとして」(בְּצַלְמֵנוּ)

●「われわれのかたちとして」(「ベツァルメーヌー」בְּצַלְמֵנוּ)にある「ツェルム」(צֶלֶם)は、かたち、imageを意味します。つまり、本来、目には見えない神を、目に見えるかたちにしたものという意味です。「鋳物を造るときの流し込む型」です。「神のかたち」(新共同訳は「神にかたどり」)というフレーズは旧約に4回。新約に3回のみです。

①【新改訳2017】創 1:27
神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして人を創造し、男と女に彼らを創造された。
②【新改訳2017】創 5:3
アダムは百三十年生きて、彼の似姿として、彼のかたちに男の子を生んだ。彼はその子をセツと名づけた。
③【新改訳2017】創 9:6
人の血を流す者は、人によって血を流される。神は人を神のかたちとして造ったからである。
④【新改訳2017】Ⅱコリ 3:18
私たちはみな、覆いを取り除かれた顔に、鏡のように主の栄光を映しつつ、栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられていきます。これはまさに、御霊なる主の働きによるのです。

※「かたち」のギリシア語は「エイコーン」(εἰκών)です。

●神はアダムを「神のかたち」として造られたのです。男も女も、神のかたちに造られたアダムから造られました。「神」が目に見えるかたちで表されたのは、「最初の人アダム」と「最後の人アダム」、すなわち御子イェシュアです。というのは、アダムが罪を犯して以来、人は神のかたちを本当の姿を表せなくなってしましました。そこで御子イェシュアがこの世に来ることによって、神のかたちというものを私たちに見せてくださったのです。とすれば、私たちは御子の中に「神のかたち」がいかなるものであるかを見出さなければなりません。

①【新改訳2017】Ⅱコリント書 4章4節
彼らの場合は、この世の神が、信じない者たちの思いを暗くし、神のかたちであるキリストの栄光に関わる福音の光を、輝かせないようにしているのです。

②【新改訳2017】コロサイ書 1章15節
御子は、見えない神のかたちであり、すべての造られたものより先に生まれた方です。

②【新改訳2017】Ⅰコリント書 11章7節
男は神のかたちであり、神の栄光の現れなので、頭にかぶり物を着けるべきではありません。一方、女は男の栄光の現れです。(Hebrew Bibleでは、男を「イーシュ」、女を「イッシャー」と訳しています)


2. 「われわれの似姿に」(כִּדְמוּתֵנוּ)

●「われわれの似姿に」(「キドゥムーテーヌ―」כִּדְמוּתֵנוּ)」の「似姿」は「デムート」(דְּמוּת)で、旧約で25回使われています。新共同訳は「似せて」と訳しています。その語源は「ダーマー」(דָּמָה)の「似ている、たとえになぞらえる、想像する、思う、考える」という意味で、似姿の本体(本質)は目に見えないものです。イェシュアが天の御国をこの世にあるたとえで語ったのは、目には見えない事柄を表すためでした。つまり、アダム(あるいは男と女)には見えない神の本体(実体、本性、本質)が隠されているのです。その隠されている神の本質は御子イェシュアのうちに完全に現わされているのです(へブル1:3)。それは何でしょうか。それは「祭司としての務め」です。その務めがなされる時、おのずと、治め支配するという「王としての務め」が果たされるのです。

①【新改訳2017】創世記 5章1節
これはアダムの歴史の記録である。神は、人を創造したとき、神の似姿として人を造り、
②【新改訳2017】創世記 5章3節
アダムは百三十年生きて、彼の似姿として、彼のかたちに男の子を生んだ。彼はその子をセツと名づけた。

●創世記5章3節では、最初のアダムに与えられた「祭司としての務め」(似姿)が、カインではなく、セツに受け継がれたことを意味しています。「祭司としての務め」は、人間が造られた意味を探る上で非常に重要な概念です。

●「祭司」とは「神に仕える人」です。「仕える」といっても神のためになにかをすることではありません。神に仕える祭司とは、神とともに歩み、神と一体(「エハード」אֶחָד)となるためにいつでも神の御前にいる人のことです。多くの時間を神とともに過ごすことで、神によって満たされる人のことです。そのことによって、主を知り、主と一つとなり、主がその人を通して現わされるようになる、神のいのちを分かち合っていく務め、これが祭司の務めです。

3. 「われわれは造ろう」(עָשָׂה)

●「人をわれわれのかたちとして、われわれの似姿に造ろう」の「造ろう」という動詞は、「アーサー」(עָשָׂה)の一人称複数の未完了形の「ナアセ」(נַעֲשֶׂה)です。ここでなぜ「造ろう」(「アーサー」עָשָׂה))ということばが使われているのてしょぅか。それは、神のかたちとして、神の似姿として人が造るとき、すでにそのモデルが御子のうちに存在していたからです。なぜなら、こうあるからです。御子は神のかたちのオリジナルなのです。人はそのオリジナルに似せて造られたのです。

【新改訳2017】コロサイ書1章15節
15 御子は、見えない神のかたちであり、すべての造られたものより先に生まれた方です。


4. 「支配する」(רָדָה)

●「こうして彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地の上を這うすべてのものを支配するようにしよう」の「支配するようにしよう」は、「治める」を意味する「ラーダー」(רָדָה)の3人称複数未完了形の指示形(命令形と同形)で、28節にも出てきます。あくまでも、神の代理者としての王的支配を意味します。

●メシア詩篇の一つである110篇2節にも「ラーダ―」があります。

【新改訳2017】詩篇110篇2節
【主】はあなたの力の杖をシオンから伸ばされる。
「あなたの敵のただ中で治めよ」と。

※ここでの「あなた」とはメシアのことです。しかも、このメシアはメルキゼデクの位に等しい者とされています。メルキゼデクは「義なる王」という意味です。ちなみに、王として「支配する、治める」という語彙は「ラーダー」(רָדָה)の他に、「マーラフ」(מָלַךְ)、「マーシャル」(מָשַׁל)、「カーバシュ」(כָּבַשׁ)があります。創世記1章で使われているのは「ラーダー」(26, 28節)と「カーバシュ」(28節)だけです。

●ところで、創世記1章26節「さあ、人をわれわれのかたちとして、われわれの似姿に造ろう。こうして彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地の上を這うすべてのものを支配するようにしよう」の「彼ら」とはだれのことでしょうか(※ただし、新共同訳の26節には「彼ら」という語彙は訳出されていません)。次節を見ると、「神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして人を創造し、男と女に彼らを創造された」とあり、28節でも「神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。「生めよ。増えよ。地に満ちよ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地の上を這うすべての生き物を支配せよ」とあることから、「彼ら」(「オーターム」אֹתָם)とは「人間」のことだと考えられます。と同時に、それは神の御子であるメシアによって造られたものがすべてその足もとに置かれるという本体の「型」(「タヴニート」תַּבְנִית)とも言えるのです。

2019.11.11


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