2. 旧約の歴史における二大危機と二つの誘惑
序論 2. 旧約の歴史における二大危機と二つの誘惑
- 旧約の歴史において、イスラエルの民が「聖なる民」であることを揺るがすような危機が訪れる。その危機とは以下の二つの危機である。
(1) 二大危機
①〔土地取得の危機〕
- これは豊かさゆえの危機である。異邦の民のように、神がいなくても、祈らなくてもやっていけるという思い、それはおのずと偶像礼拝をもたらす結果となる。この危機は士師記から列王記全般にわたる問題である。
②〔王制導入の危機〕
- 軍事国家ペリシテの脅威に対して、「他のすべての国民と同じように」なりたいという願いから、人間の王を立てるという選択をする。王の規定(申命記17章14~17節)によれば、「王は、自分のために決して馬をふやしてはならない」とある。「馬」は軍事力の象徴であり、神に頼らず、最新の武器を信頼するようになるからである。また、王は「多くの妻を持ってはならない」とある。それは他国と同盟関係を結ぶ手段を意味している。王制を導入することは、やがてイスラエルの社会構造を全体的に変えてしまうことになる。そして民はやがて奴隷となる結果をもたらすのである。イスラエルの王制の理念はいかにあるべきか、この主題はサムエル記、列王記で扱われることになる。
(2) 二つの誘惑に対する警告
①〔誇り(高ぶり) 〕
a. 豊かさのゆえの誇り (8章17~18節)
- 食べて満ちたり、財産が増し加わる時、心が高ぶり、主を忘れる。「この私が、私の手の力がこの富を築き上げたのだ」と。これに対する警告は、「主を忘れるな」「気をつけなさい」「主を心に据えよ」
b. 勝利のゆえの誇り (9章4~6節)
- あなたの前から敵が追い出され、征服されたとき、心の中で「私が正しいから主が私にこの地を得させてくださったのだ」と。これに対する警告は、真実を「知りなさい」。
②〔恐れ〕
a. 心の中の思いにおける恐れ (7章18節)
- 「心のうちで、これらの異邦の民は私よりも多い。どうして彼らを追い払うことができよう。」これに対する警告は、神のストーリーを「覚えよ」。
b. 絶望的な状況による恐れ (20章1節)
- あなたがたが敵と戦うために出て行くとき、馬や戦車や、あなたよりも多い軍勢を見ても、彼らを恐れてはならない。」
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