3. 「聖なる民」の歴史的課題
序論 3. 「聖なる民」の歴史的課題
(1) 恐れてはならない
- 誇り(高ぶり)と同じくらい致命的な誘惑は「恐れ」である。神は恵みをもって民を救われたが、それは無防備な生き方、リスクの多い生活へと招かれる。そこでは絶えず神により頼むことが求められる。ところが、危機にぶつかると、私たちは状況を悲観的に見て、自分なりに最善を尽くさなければならないと考えてしまうのである。そこから恐れが始まることを知らなければならない。
(2) 神のストーリーを忘れてはいけない
- 神の民が神のストーリーを忘れる時、つまり、敵からの守り、食糧を備えてくださったことを無視したとき、その結果は「現実主義」が顔を出し、「聖なる民」としてのあり方から離れていく。そして周囲のやり方に合わせる安易な道を選んでしまうことになる。
- 申命記においては、繰り返し繰り返し、神のストーリーを回顧し、それを語ることを教えている。なぜならそうすることによって、神を待ち望み、神への信頼を養う重要な手立てとなるからである。神のストーリーを回顧することによって、希望と信頼をもつことができるなら、私たちは「聖なる民」として生きることができるのである。
(3) 神のストーリーを語るという課題を神の民はどのように取り組んだか
- 旧約の歴史において、神の民が神のストーリーを語るという課題をどのように取り組んでいったか。それはヨシュア記から列王記の学びで取り扱われることになる。
●各歴史書(1)の主題
書 名 主 題 内 容 ヨシュア記 信仰による勝利 神の民のアイデンティティの認識という課題が伴う。 士 師 記 臨戦意識の有無による勝敗 臨戦意識とは、神の約束によって与えられたカナンの地において「罠」となるものを完全に追い払っていくという敵前感をもった危機意識である。 ル ツ 記 神の救いにおける包容性 神の愛の主権性は、イスラエルに対する<特殊愛>と異邦人に対する<普遍愛>に表わされる。神は、ご自身のみつばさの下に避け所を求めて来る者を受け入れる。 サムエル記 神の王国における王制理念の確立 サムエルの果たした歴史的役割は、イスラエルに導入された王制の権利、責任、義務等を規定した。預言者が王制に対して批判する基準は、サムエルが確立した原則に基づいていた。 列王記 世俗化が招いた王制理念の崩壊 イスラエル王国の分裂とその後の滅亡の歴史を通して、預言者のことばが正しかったことを証明している。
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