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3. 詩篇の特徴と価値


Ⅰ. 序説

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3. 詩篇の特徴と価値

(1) 詩篇には人の真実な体験が詳述されている

① 詩篇のすばらしさは、神を信じる者が、信仰における自分の経験を述べ、その霊的生活の戦いにおいて起きた数々の事柄を赤裸々に述べていることである。たとえば、詩篇73篇では、神を信じない者が繁栄しているのを見て妬み、その結果、自分の足がたわみそうで、その歩みがすべるばかりであったこと、また自分が愚かでわきまえもなく、神の御前で獣のようであったと語っている(2節、22節)。

② 使徒パウロが「あなたがたの会った試練はみな人の知らないようなものではありません」(Ⅰコリント10章13節)と述べているように、詩篇には人間が経験するすべて—希望、恐れ、疑い、信仰、絶望、裏切り、愛、落胆、孤独、その他もろもろ—が表現されている。それゆえにいつの時代であっても、詩篇に表されている多岐にわたる経験が自分の経験と共鳴し、そのことだけで慰められ、力づけられ、信仰が新たにさせられるのである。

(2) 詩篇はしばしば結論から始まっている

① 詩篇73篇の冒頭1節を見よう。そこにはこの詩篇の結論が記されている。「まことに、イスラエルに、心のきよい人たちに、いつくしみ深い。」2節以降は、その結論に至るプロセスが記されている。

② 詩篇106篇、107篇、118篇等、これらの詩篇の冒頭にくる定型句は「主はまことにいつくしみ深い。その恵みはとこしえまで」である。このフレーズは救済史における神の真実に支えられてきた神の民の結論的賛美なのである。

a. Ⅱ歴代誌5章13節。ここにはソロモンが神殿を献堂するにあたって祭司とレビ人に「主はまことにいつくしみ深い。その恵みはとこしえまで」と賛美させたとき、主の宮は神の臨在のしるしである栄光の雲で満ち、祭司たちは立っていることができなかった。

b. Ⅱ歴代誌20章21節。この箇所はしばしば霊的戦いのテキストとなっている。ヨシャパテが聖歌隊に「主に感謝せよ、その恵みはとこしえまで」と賛美の声を上げた時、主は敵を打ち負かされたとある。一見すると、なぜこんなわずかの賛美のことばで敵を打ち負かすことができたのか疑問が起こる。しかしこのフレーズは賛美の結論的フレーズなのである。

(3) 経験が特定の真理の例証となっている

  • 経験それ自体は価値あるものではないが、その経験が神について、特定の真理の例証となるとき大きな価値を有する。たとえば、詩篇73篇の結論は「まことに神は、心のきよい人たちに、いつくしみ深い」という真理であった。この真理の結論に作者がどのようにして到達したのか。その方法と過程(プロセス)が普遍的な価値を持つのである。つまり、作者は聖所に入って神の視点から物事を見たとき、この世の不条理を乗り越えることができたのである。「心のきよい人」とは神の視点からすべての物事を見ることができる人のことである。


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