Ps65の「かかわりの構造」
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- 詩篇65篇の「かかわりの構造」はきわめてシンプルです。「敵」の存在もありません。また、「人称なき存在」が語る部分もありません。「私」が「あなた(神)」に対して、その祝福のすばらしさを讚美している詩篇です。
- 特に、この詩篇65篇の特徴は「沈黙、静けさ、静謐」です。「ドゥーミッヤー」(דּוּמיָּה)というヘブル語ですが、旧約では詩篇のみに4回使われている語彙です。しかも、その4回のうちで良い意味で使われているのは62:1と、65:1の二つです。65:1の訳を少し見比べてみます。
〔新改訳〕
「神よ。あなたの御前には静けさがあり、シオンには賛美が・・
〔新共同訳〕
「沈黙してあなたに向かい、賛美をささげます。」
- 関根訳、フランシスコ会訳、典礼訳、文語訳、口語訳では、「沈黙」ということばで訳されていません。「あなたを賛美するのはふさわしい」、「賛美はあなたを待つ」と訳しています。原文では、この箇所は(順に並べると)、「あなたに向かい、沈黙、賛美、神の、シオンで」となっています。つまり、ここでは動詞がないためにさまざまな訳が可能となります。しかし「沈黙」のことばがここにあるのはとても重要だと考えます。この詩篇では「沈黙」が神への賛美をより質の高いものとさせているからです。
- 沈黙、静けさ、静謐の力は、神から与えられる良いものに目を開かせ、それによって「満ち足りる」祝福を私たちに得させます。それゆえ、この詩65篇は神の前で静まることの大切さを教えてくれる一篇と言えます。
- 祈りにおける「沈黙」の重要性を御子イエスが知っておられました。それゆえ、御子はしばしば「朝早くまだ暗いうちに起きて、寂しい所へ出て行き、そこで祈っておられた」(マルコ1:35)とあります。
- 御子のおられるところには、御霊も寄り添うようにして存在しています。つまり、御霊は、御父と御子を信頼という絆で堅く結ばれるように常に傍らにいて援助しておられます。
- 詩篇65篇では、神との生きいきしたかかわりの「いのちのしるし」が歴然と記されています。
(1) 「親密さ、親しさ、近しさ」(3, 4節、罪が赦され、近寄せられる)
(2) 「豊かさ、豊穣」(11節の「あぶらのしたたり」を英語でreachesと訳しています)
(3) 「喜び」(13節の「喜びの叫び」、愛されていることの存在論的喜び)
(4) 「自由」(1節、強制されることのない、自発的な誓願を果たす意志)
- 余談ですが、新改訳の5節にある「信頼の的」という表現は名訳だと思います。信頼することをあらわす「バータハ」の名詞形が使われていますが、他の聖書が「頼り」「望み」「信頼すべきもの」と訳している中で、「信頼の的」という表現はとてもすばらしい表現のように思います。