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シロアハの水

イザヤ書の重要用語(5) シロアハの水


  • イザヤ書8章6節に「この民は、ゆるやかに流れるシロアハの水をないがしろにして」というフレーズがあります。「この民」とは、ユダの人々、ユダの王家の人々を意味します。ユダの国はB.C.733に、北イスラエルとアラム(シリヤ)の連合軍に攻められるという危機に陥りますが、ユダのアハズ王は、主なる神ではなく、アッシリヤに助けを求めて国を守ろうとしました。預言者イザヤはアハズ王のもとに行って、この連合軍が攻めて来ても、彼らの思惑通りにはならないこと。また、「もし、あなたが信じないならば、長く立つことはできない。」とアハズに告げました。しかアハズはイザヤのことばを聞こうとはしませんでした。このことに対する主のことばが、8章4節の「この民は、ゆるやかに流れるシロアハの水をないがしろにして」と言われていることなのです。アッシリアを意味する「あの強く水かさの多いユーフラテス川の水」と比べるならば、シロアハの水はまことに頼りない小さな水の流れです。しかし、それはエルサレムの住民にとって主要な給水源でした。
シロアム.JPG
  • そもそも、エルサレムの城外にあるギホンの泉から流れ出る水をエルサレムの城内まに引き込むための水路を整備することは、国をあげての大事業であったはずです。規模としては、長さが約330m、落差は約2m、1mごとに7mm程度下がるくらいで、ごくゆるやかな水の流れです。しかしエルサレムの水を確保する重要な水路なのです。このシロアハの水路はいのちの源である主なる神の象徴であり、同時にユダ王国の繁栄の象徴でもあったのです。その生命線の基盤である神を捨てて、みなぎりわたる大河にたとえられるアッシリヤに頼ろうとしたのです。その結果は、かえってユダの国はこのアッシリヤに脅かされることになったのです。
  • 「シロアハの水」の原語表記は「メ―・ハッ・シローアッハ」
    (מֵי הַשִּׁלֹחַ)です。動詞は「シャーラハ」(שָׁלַח)で「遣わす、送る」という意味で、定冠詞付きの名詞「シローアッハ」はギホンの泉から送られる「水路」、あるいは「水溝」を意味します。シロアムの水路とも言われます。ちなみに、「ギホン」(גִּיחוֹן)の語源は「噴出する」という意味の動詞「ギ―アッハ」(גִּיחַ)から来ています。
ヒゼキヤのトンネル.JPG
  • しかし、ギホンの泉から流れ出る水路は地表に掘られており、敵の攻略に対して無防備であったため、アハズの息子のヒゼキヤ王はアッシリヤのセナケリブの襲撃に備えて、従来の地表にある水路を埋めて、地下の岩盤を掘って城壁内に水を引くための新しい水路を作りました。これがヒゼキヤのトンネルと言われているものです(Ⅱ列王記20:20)。ギホンの泉から流れ出た水が最終的に注がれる人工の貯水池を「シロアムの池」と呼ばれます。
仮庵の祭(3).JPG
  • ユダヤでは、毎年の仮庵の祭の時にこの「シロアムの池」から水を汲んで、祭りの間エルサレム神殿の祭壇に、毎日注ぎかけという儀式がありました。イェシュアもその祭りに参加されました。そのことがヨハネの福音書7章2節以降に記されていますが、ここでは37~38節のイェシュアの語られたことばだけを取り上げてみましょう。

    【新改訳改訂第3版】
    37 さて、祭りの終わりの大いなる日に、イエスは立って、大声で言われた。「だれでも渇いているなら、わたしのもとに来て飲みなさい。
    38 わたしを信じる者は、聖書が言っているとおりに、その人の心の奥底から、生ける水の川が流れ出るようになる。」

  • ここでイェシュアが言われたことは、自分こそ神から遣わされた「いのちの水の源」であることを語られたのでした。
  • 最後にもうひとつ、ヨハネの福音書9章にも「シロアムの池」が登場します。生まれながらにして盲人がシロアムの池に行ってその水で洗うと目が開かれるという話です。単に、目が開かれたということではなく、そのことによって、この盲人はいのちの源であるイェシュアをはっきりと見出したことに話のポイントがあります。
  • 「シロアハの水」、あるいは「シロアムの水」はいのちの本源であるイェシュアを指しています。その方をないがしろにして、目に見えるものに頼ろうとする者は、やがていのちを失う運命にあることを心に留めなければならないのです。


2014.8.14


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