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ゲッセマネの園での苦悩(1)改


7. 午後10時~真夜中(午前0時) ゲツセマネの園での苦悩 (1)改

【聖書箇所】
マタイの福音書26章36~46節
マルコの福音書14章32~42節
ルカの福音書22章39~46節

ベレーシート

●メル・ギブソンが監督した映画『パッション』は、ゲツセマネの園における祈りから始まっています。映画は実際の「ゲツセマネの園」で撮影されたようです。今回の瞑想をする下地として、この映画の冒頭のゲツセマネのシーンを再度観てみました。しかし映像だけでは、イェシュアが弟子たちを連れてエルサレムの最後の晩餐をしたところからオリーブ山の方に移り、そして三人の弟子たちを連れてゲツセマネというところに行って祈ったという、その祈りの背景にある事柄を説明することはできません。なにゆえにイェシュアが「ゲツセマネ」に来て祈ったのか、その必然性は映画では描けないのです。

●今回、着目したいことは、イェシュアが「なぜゲツセマネで祈らなければならなかったのか」ということです。ルカによれば、そこは祈りのために訪れていた「いつもの場所」(22:40)であったと記しています。しかしそれも神の必然性を説明してはいません。もっと深い意味があるはずです。

●イェシュアと弟子たちの距離は、「石を投げて届くほどの所に離れて」とあります。過越の祭りの日は必ず満月の時です。『パッション』の映画の中でも満月の光が照らしていました。ですから、イェシュアの祈る姿が弟子たちに十分に見えたはずです。ところが肝心の弟子たちは、イェシュアが祈っている間なんと寝てしまっていたのです。

画像の説明

1. ゲツセマネにはオリーブ油を搾る搾油機があった

●イェシュアが祈ったゲツセマネの園には強烈なメッセージが隠されています。ゲツセマネにはオリーブ油を搾り出す搾油機がありました。「ゲツセマネ」(Gethsemane)という語彙は、「搾油機」を意味する「ガト」(גַּת)と「オリーブ油」を意味する「シェメン」(שֶׁמֶן)の複数形「シェマーニーム」(שְׁמָנִים)との合成語です。ちなみに、「ガト」(גַּת)は「搾油機」の意味だけでなく、ぶどうを足で踏んで液にする「酒ぶね」をも意味します。

オリーブ搾油機.JPG

●イスラエルにおいては、オリーブ油は喜びの祝福の象徴です。11月の初め頃に摘まれる実は紺色に代わり、その中に油がたっぷりと詰まるのだそうです。オリーブ油として搾り出す段階は二段階です。最初は「オリーブの実を潰す段階」で、次は「それを搾る段階」です。そしてそれは四回に分けて搾り出し、その用途は以下の通りです。

第一段階
●最初に搾ったオリーブ油は聖なる油として神殿にささげられます。この油で神殿の燭台(「メノーラー」מְנוֹרָה)を照らしました。また、王や祭司、預言者の任職の時にもこの油が用いられました。
●ちなみに、「油を注ぐ」ことを意味するヘブル語は「マーシャハ」(מָשַׁח)ですが、「油注がれた者」のことを「ハッマーシーアッハ」(הַמָּשִׁיחַ)と言い、つまり「メシア」を意味します。イェシュア・ハッマーシーアッハとは、イェシュアが油注がれた「王」であり、「大祭司」であり、「預言者」であるという信仰の告白です。

第二段階
●主に家庭で食用として用いられます。日本同様、イスラエルも長寿国です。その秘訣の一つがオリーブ油にあるようです。

第三段階
●家庭の照明、薬品、頭に塗る油、化粧品など、用途は多様。

第四段階
●これは最後に搾りだされる油で、これで石鹸を作ることができるようです。イスラエル産のオリーブ石鹸が売られていますが、最後の搾りかすから作られたものなのです。愛用されている方も多いようです。
●最後の最後まで搾り取られたオリーブの搾りかすも最後は燃料として用いられるのです。オリーブの実はなんと価値のあるものなのでしょうか。


2. オリーブ油とイェシュアのゲツセマネでの祈り

●オリーブの実は搾ることで用いられますが、それは石の重さが次第に重くなっていくことで、第四段階まで搾ることができるように、これがイェシュアのゲツセマネでの祈りと重なっているのです。特に、ルカが記している「汗が血のしずくのように落ちた」とは、第四段階に搾り出される油をたとえているように思えます。

●ゲツセマネでイェシュアは三度祈っていますが、祈るたびに重石の重さが加わり、最後には完全に搾り取られることを示唆しています。

●しばしば、ゲツセマネで祈るイェシュアの姿が描かれた絵を目にしますが、その多くが顔を上に向けて手を組んで祈る姿です。しかし、オリーブの実が搾られるイメージは上を向いて祈る姿ではなく、次第に地に押し付けられていくイメージです。映画『パッション』でも、最初は上を向いて祈るイェシュアの姿でしたが、最後は重石に押さえつけられて地にひれ伏して(うつ伏せて)祈るイェシュアの姿が印象的です。ゲツセマネが意味するイェシュアの祈りを見事に描いています。

●ゲツセマネの園に行く前にイェシュアは、おそらくオリーブ山で父に対して祈っています。それはヨハネの福音書17章に記されています。そこでは「目を天に向けて」祈っています(17:1)。しかしゲツセマネの祈りの最後は、完全にうつ伏せているのです。

画像の説明
オリーブの実


2013.3.17


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