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ピラトの前で裁判を受ける(改)


14. 午前6時~午前7時 ピラトの前で裁判を受ける(改)

【聖書箇所】
マタイの福音書27章11~14節、マルコの福音書15章2~5節
ルカの福音書23章2~12節、ヨハネの福音書18章28~38節

ベレーシート

●ユダヤの最高議会(サンヘドリン)はイェシュアをローマ総督ピラトに引き渡すための協議をした上で、イェシュアをピラトのもとに連れて行きました。そこからどのような流れ(リアルタイム)となっていくのか、四つの福音書をじっくりと見比べないと理解できません。今回は、その流れがどのようになっているのかを整理しながら把握したいと思います。

1. ピラトの官邸における場面設定

ピラトによる裁判.JPG

●ピラトの官邸における裁判の絵がありますが、聖書を正確に読むならば、このような絵の場面設定はあり得ないことが分かります。なぜなら、ここでの場面は、ピラトの官邸内と官邸の外の二つの場面が設定されているからです。絵とか映画で見るイェシュアの生涯の場面設定が必ずしも正しいとは限りません。ヨハネの福音書18章28節を読むと分かるように、イェシュアをピラトに引き渡したユダヤ人たちは、「過越の食事が食べられなくなることのないように、汚れを受けまいとして、官邸に入らなかった」とあるからです。

●ここでの場面設定は、ピラトが官邸内でイェシュアと個人的に交わす会話が記されている場面と、ピラトが官邸の外にいる告発者たちと交わす会話が記されている場面とがあるということです。その間をピラトは行ったり来たりしているのです。

2. イェシュアがピラトに引き渡されてからの流れ

●できるだけ正確にその流れをリアルタイムで追ってみたいと思います。

ピラトが語った部分 イェシュアが語った部分 イェシュアを告発する者たちが語った部分 

ピラトの官邸の外

「あなたがたはこの人に対して何を告発するのですか。」(ヨハネ18:29)
「もしこの人が悪いことをしていなかったら、私たちはこの人をあなたに引き渡しはしなかったでしょう。」(ヨハネ18:30)
「この人はわが国民を惑わし、カイザルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることがわかりました。」(ルカ23:2)

ピラトの官邸内

「あなたはユダヤ人の王ですか。」(ルカ23:3、マタイ27:11、マルコ15:2)
「そのとおりです。」(ルカ23:3、マタイ27:11、マルコ15:2)
「何も答えないのですか。見なさい。彼らはあんなにまであなたを訴えているのです。」(マルコ15:4)
「あんなにいろいろとあなたに不利な証言をしているのに、聞こえないのですか。」(マタイ27:13)

  • ピラトはイェシュアの沈黙に「非常に驚いた」とあります。

ピラトの最初の無罪宣告 (官邸の外)

「この人には何の罪も見つからない。」(ルカ23:4)

告発者たちの再度の訴え

「この人は、ガリラヤからここまで、ユダヤ全土で教えながら、この民を扇動しているのです。」(ルカ23:5)

●イェシュアがガリラヤ人だと知って、ピラトはこの件をガリラヤを支配しているヘロデに振るために、ヘロデのところに送りました。このとき、過越の祭りのためにヘロデがエルサレムに来ていました。ヘロデはイェシュアに対して大きな関心を持っていました。

ヘロデの宮殿

●ヘロデはイェシュアを見て非常に喜びます。なぜなら、前からイェシュアに関心をもっており、イェシュアの行う奇蹟を見たいと思っていたからです。

「-ー」(イェシュアは終始ヘロデに対して一言も答えませんでした。)

●ヘロデは、自分の兵士たちといっしょにイェシュアを侮辱したり嘲笑したりしたあげく、はでな衣を着せて、ピラトに送り返しました。このヘロデの場面はルカの独占記事です。

再び、ピラトのもとに戻されたイェシュア(官邸の外)

「あなたがたがこの人を引き取り、自分たちの律法に従ってさばきなさい。」(ヨハネ18:31)
「私たちには、だれを死刑にすることも許されてはいません。」(同上)

●これこそが告発者の真の意図でした。自分たちがイェシュアを死刑にできないからこそ、あなたに告発して死刑になるようにこうして来ているのですと。

イェシュアを官邸内で尋問(二度目)

「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」(ヨハネ18:33)
「あなたは何をしたのですか。」(ヨハネ18:35)
「わたしの国はこの世のものではありません。」(ヨハネ18:36)
「それでは、あなたは王なのですか。」(ヨハネ18:37)
「わたしが王であることは、あなたが言うとおりです。」(同上)

ピラト、二度目の無罪宣告 (官邸の外)

「私は、あの人には罪を認めません。」(ヨハネ13:38)


3. 「ピラト」の総督としての力量

●ここまでのピラトの総督としての姿勢を見る限り、ローマの法の下ではイェシュアは無罪であることをピラトは二度も告発者たちに対して宣告しています。「ポンテオ・ピラト」という正式名は新約聖書では3回使われています(ルカ3:1、使徒4:27、Ⅰテモテ6:13)。使徒信条を告白されている教会はこの「ポンテオ・ピラト」という名前をいつも語っていることになります。ピラトの身からすると、本当に気の毒です。

●ところで、『新約聖書人名事典』(東洋書林)によれば、彼は、ユダヤ、サマリヤ、イドマヤを治めた5代目のローマ総督で、A.D.26~36まで任務に当たりました。ピラトについては、四福音書の他に、同時代のユダヤ人で世俗の歴史家ヨセフスやフィロン、4世紀の教会史家エウセビウスなどから、多くの情報が得られるとしています。また、「ピラト」という名前は「ピルム」、すなわち投げ槍で武装した「槍兵」という意味のラテン語「ピラトゥス」から来ていると説明しています。ちなみに、ピラトの妻はクラウディア・プロクラで、皇帝アウグストゥスの孫にあたり、洗練されて教養があり、感覚のすぐれた人物であり、ピラトが総督の地位を得たのは自らの外交手腕よりは、おそらく妻のおかげだったと思われる、と記されています。

●「ピラト」という名前のギリシア語表記は「ピラトス」(Πιλατος)、英語ではPilate、ヘブル語にすると「ピーラートーム」(פִּילָטוֹם)です。この「ピーラートーム」の語幹は動詞の「パーラト」(פָּלַט)で、その意味するところは「助け出す」「救い出す」です。まさにピラトがイェシュアを告発する者たちから、なんとかして「助け出そう」としたことは評価できます。しかしやがて、彼はその人生における究極の選択を迫られることになるのです。ピラトはイェシュアが「わたしは、真理のあかしをするために生まれ、このことのために世に来たのです。真理に属する者はみな、わたしの声に聞き従います。」(ヨハネ18:37)と言ったことに対してすかさず、「真理とは何ですか」と尋ねました。しかし残念なことに、彼はその真意をそれ以上には聞こうとはしなかったのです。

2015.3.24

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