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大きな魚に助けられたヨナ

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4. 大きな魚に助けられたヨナ

ベレーシート

  • ヨナは主の御顔を避けて、ヨッパに下り、船の底に下り、海の底に下って行き、出口のない状態に追い込まれます。そのとき、主は、大きな魚を備えて、ヨナを飲み込ませたのです。今回はこの部分だけに注目してみたいと思います。

画像の説明

ヨナ書に登場する「大きな魚」(「ダーグ・ガードール」דָּג גָּדוֹל)のイメージ・フォト

1. 1章17節(=2章1節)の諸訳

【新改訳改訂第3版】1章17節
【主】は大きな魚を備えて、ヨナをのみこませた。ヨナは三日三晩、魚の腹の中にいた。


【新共同訳】2章1節
さて、主は巨大な魚に命じて、ヨナを呑み込ませられた。ヨナは三日三晩魚の腹の中にいた。


【バルバロ訳】2章1節
しかし、主は、ヨナをのみこませるように、大きな魚を、そこに送られた。ヨナは、三日三夜、魚の腹の中にとどまった。


【西村俊昭訳】2章1節
ヤハウェはヨーナーをのみこむように大きい魚を定めた。そしてヨーナーはその魚の腹の中に三日三夜いた。

  • この節の諸訳の中でもっとも訳が異なっている語彙は、「数える、任じる、補充する」という意味を持つ「マーナー」(מָנָה)という動詞です。ヨナ書では強意形のピエル態で使われており、その意味が訳者によって異なっています。主がヨナのために「大きな魚」を「備え」(新改訳・口語訳・関根訳)、「命じ」(新共同訳・フランシスコ会訳)、「送り」(バルバロ訳)、「定め」(西村訳)られました。そしてその「大きな魚」にヨナをのみこませたのです。この動詞の訳が異なっていたとしても、そこには主の確かな目的・理由があることが強調されています。

2. ヨナを大きな魚にのみこませた目的

  • 主は何のために、どんな目的をもって魚にヨナをのみこませたのでしょうか。二つの面があると思われます。

    主の御顔を避けて逃げようとするヨナに対する父性的な慈愛による懲罰
    ヨナをもう一度、本来の使命に立ち返らせること

  • 主は、ご自身のご計画を担わせる者に対して、不可欠な苦しみを与えるという訓練をされます。例えば、ヨセフやダビデがそうです。彼らは不従順のゆえにではありませんが、不条理な状況の中で鍛えられて行きます。ヨナの場合は不従順のゆえに主が「大風を海に吹きつけて」、結果的に、ヨナが海の中に投げ込まれる状況をもたらしました。一見、水夫たちがヨナを海に投げ込んだかたちですが、ヨナはあとで、「あなたは私を海の真中の深みに投げ込まれました。」と告白しています(2:3)。この「大きな魚」を備えて、ヨナをのみこませたのは主の奇蹟的な恩寵と言えます。

3. 主はヨナを大きな魚に「のみこませた」

  • 「のみこませた」と訳された動詞は「バーラ」(בָּלַע)の不定詞が使われています。旧約では50回使われています。初出箇所は創世記41章7節で、エジプトのパロが「(七つの)しなびた穂が、・・肥えて豊かな七つの穂をのみこんでしまう」という夢を見ました。また、出エジプト記7章12節では、エジプトの魔術師たちがそれぞれ自分の杖を投げるとそれが蛇になりましたが、アロンの杖はそれらの杖をのみこんだという話が記されています。つまり、「のみこむ」とは、神の主権的な力によって支配するというニュアンスがあります。したがって、大きな魚を備えてヨナをのみこませたということは、神が主権的な力を行使して、ヨナを取り扱おうとしたことを意味しています。この取り扱いに対してヨナがどのような態度を取るかが注目すべきところと言えます。

4. 大きな魚の「腹」とは「胎」の意味

  • ここで使われている「腹」という語彙は「メーエ」(מֵעֶה)の複数形ですが、その形では旧約でわずか4回しか使われていません。つまり、母の「胎」を意味する語です。「腹」=「胎」と解釈するなら、魚の腹の胎の中で、新しいいのちが宿されているニュアンスです。つまり、そこから新しいヨナが生まれ出ることを意味しています。
  • 「腹の中」はいわば秘められた暗やみの総称です。しかし、そこには同時に新しいいのちの胎があるとすればそこに希望があります。ヨナ書における「大きな魚の腹の中」という概念は、「深い淵」「滅びの穴」「泥沼」「苦悩」「やみと死の陰」「よみ」「海の深み」ということばに変換できます。そうした中にヨナは置かれましたが、もしその中からヨナが新しく出て来ることができるなら、それはまさに神の救いの奇蹟と言えます。そしてそれこそが、「ヨナのしるし」なのです。

2015.5,15


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