恩寵用語Ps36(2)
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詩36篇(2)「注ぐ」מָשַׁךְマーシャフ
〔カテゴリー賦与〕
10節「注いでください。あなたの恵みを、あなたを知る者に。あなたの義を、心の直ぐな人に。」
Keyword; 「注ぐ」 continue
- 10節の「注いでください」の「注ぐ」と訳された「マーシャフ」(מָשַׁךְ)は、多くのニュアンスをもった動詞です。「引き上げる」(to raise)、「広げる」(to extent)、「引き寄せる」(to draw)、「そそのかしておびき寄せる」(to entire)、「待ち伏せして捕える」(to siege)、「楽器などの音を長く吹き鳴らす」、そして「続ける」(to continue)などです。詩36篇10節では、最後に挙げた「続ける」という意味で使われています。旧約では36回。継続的な時間的延長、および、空間的拡張をイメージさせることばです。
- 日本語訳を見ると以下のように訳されています。
- 「常にありますように。」(新共同訳)
- 「絶えず・・施してください。」(口語訳)
- 「絶やさないでください。」(岩波訳)
- 「・・を保たせ、・・を絶えず与えてください。」(関根訳)
- このように、マーシャフ(מָשַׁךְ)は、絶えず、保たせ、絶やすことなく与え続けること、注ぎ続けることを意味します。
そこにある思想は、持続性、継続性、保持、恒常性と言ったイメージです。作者は、神の恵み(へセド)、真実(エムーナー)、義(ツェデェク)、さばき(はからい)(ミシュパート)、これらはすべて契約におけるかかわり用語ですが、ヘブル的な表象でたとえられています。(1)<確かさ>(5~6節)・・「天」「雲」(原文は「空」)「山」「海」は確固不動の表象。
(2)<尊さ>(6節)・・「人や獣を栄えさせ、しあわせにする」はかり知れない高価な恵み。
(3)<豊かさ>(8~9節)・「楽しみの流れ」、尽きることのない無尽蔵な「いのちの泉と光」。
- 10節の「注いでください。あなたの恵みを・・あなたの義を」とありますが、おそらく、真実もさばきも含まれていると思います。つまり、神の恵み、真実、義、さばきの(はからい)の<確かさ><尊さ><豊かさ>が讃えられていると同時に、それらが継続し広がっていくことを祈っています。それがここにある「注いでください」という意味です。
- この詩36篇の構造は、神を恐れる者とそうでない者との対比が描かれています。自分の良心を欺き、決して悪を捨てようとはしない悪者がその決意にもかかわらず、その結末は必ず倒れ、再び立ち上がることができないことが宣言されています(12節)。それに対して、神の恵みの御翼の中に身を避けようと決心した者たちは、神の恵み(真実、義、さばきも含めて)の中に絶えず保たれ、常に引き伸ばされ、拡張されていくことを信じて祈っているように思います。