****** キリスト教会は、ヘブル的ルーツとつぎ合わされることで回復し、完成します。******

神殿奉献の後の主の約束と警告

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列王記の目次

10. 神殿奉献の後の主の約束と警告

【聖書箇所】 9章1節~28節

はじめに

  • ソロモンが神殿を完成し、それを主に奉献した後、主は再びソロモンに現われた語られたことばは重要です。そのことばは「約束と警告」に満ちています。イスラエルの歴史において空前の繁栄を迎えたソロモンの治世に語られたことは大きな意味があります。
  • 主にささげられた荘厳な神殿が、やがて跡形もなく崩れることを予想し得た者はだれひとりとしていなかったはずです。どこに問題があったのかを知ることはとても大切なことです。

1. ソロモンに対する神の約束と警告

【約束】【新改訳改訂第3版】9:3~5
3 【主】は彼に仰せられた。「あなたがわたしの前で願った祈りと願いをわたしは聞いた。わたしは、あなたがわたしの名をとこしえまでもここに置くために建てたこの宮を聖別した。わたしの目とわたしの心は、いつもそこにある。
4 あなたが、あなたの父ダビデが歩んだように、全き心と正しさをもって、わたしの前に歩み、わたしがあなたに命じたことをすべてそのまま実行し、わたしのおきてと定めとを守るなら、
5 わたしが、あなたの父ダビデに、『あなたには、イスラエルの王座から人が断たれない』と言って約束したとおり、あなたの王国の王座をイスラエルの上に永遠に確立しよう。


【警告】9:6~9
6 もし、あなたがたとあなたがたの子孫が、わたしにそむいて従わず、あなたがたに授けたわたしの命令とわたしのおきてとを守らず、行ってほかの神々に仕え、これを拝むなら、
7 わたしが彼らに与えた地の面から、イスラエルを断ち、わたしがわたしの名のために聖別した宮を、わたしの前から投げ捨てよう。こうして、イスラエルはすべての国々の民の間で、物笑いとなり、なぶりものとなろう。

  • 主の約束の条件は、「あなたが、あなたの父ダビデが歩んだように、全き心と正しさをもって、わたしの前に歩み、わたしがあなたに命じたことをすべてそのまま実行し、わたしのおきてと定めとを守る」ということです。
  • 「全き心と正しさをもって」と訳された部分の原文は「べ・トム、レ・ヴァーヴ ウー、ヴェ・ヨーシェル」בְּתָם־לֵבָב וּבְיֹשֶׁר です。「完全、潔白、誠実」を意味する名詞の「トーム」תֹּםと「正しい、まっすぐな、直ぐな」を意味する形容詞の「ヤーシャール」יָשָׁרの組み合わせです。
  • 「父ダビデが歩んだように」とはどういう意味でしょうか。ダビデはその生涯において決して完璧ではありませんでした。大きな罪を犯し、失敗もしています。ただダビデは悔い改めの人でした。主の前に出て罪を罪として心から認め、主の赦しの中に生きることを選び取った人でした。そして主の御心をだれよりも「尋ね求める者」でした。これが「ダビデが歩んだように」という意味です。罪を犯した時、失敗したときに、どのように神の前に出るべきかを知っていた人でした。列王記の記者はその意味でダビデを評価していたと言えます。

2. ソロモンの行政の問題点

  • ソロモンの行政能力はスバ抜けて優れたものでした。

(1) 軍事政策
国の防衛に関する政策として、ソロモンは国境や国内の戦略的要所に「基地の町」(ハツォル、メギド、ケゼル等)を建設し(9:15~19)、これらの軍事基地にはそれまでなかった戦車部隊と騎兵部隊を新設して配備しました。

(2) 行政政策
12の行政区域を置き、中央の官僚たちを支える財政機構を整備しました。また、国のさまざまな建設事業を推進するために多くの役務者を徴用しています(9:15)

(3) 外交政策
①エジプトに対しては、パロの娘をめとり婚姻関係を結んで同盟関係を結びました。
②ツロの王ヒラムとの間には、父ダビデ以来の友好関係を維持しました。

(4) 経済政策
船団を設けて海洋貿易をなし、莫大な富を国にもたらしました(9:26~28)。

(5) 祭儀政策
父ダビデのビジョンを受け継ぎ、祭司、レビ人を登用して24時間体制の礼拝がささげられるようにしました。たたじ、この面は列王記には詳しく記されていません。それを扱っているのは歴代誌です。ちなみに、歴代誌の歴史観は、神への礼拝を疎かにしたことが国を滅ぼした原因だとしています。

  • ソロモンのすぐれた行政能力を認めながらも、その問題点は以下のように大きく二つ挙げられます。

(1) 慢性的な国家財政の危機
ソロモンの国家的建設事業、豪華な宮殿生活、官僚組織を支える財政的負担などが、慢性的な支出超過に陥り、そのつけはやがて国民が負うことになります。貧富の格差が拡大し庶民は貧困に陥るようなっていきました。

(2) 政略結婚のツケ
ソロモンは父ダビデのような軍人ではありませんでした。むしろ経済人です。争うことよりも互いの益をもたらす道を考え、平和を政略結婚によって維持しようとしますが、そのために異教的な聖所を造ることを許します。平和を保持する政略結婚というリスクはソロモンの手に負えなくなるほどに大きなものとなっていき、神への信仰そのものが空洞化していく危機となったのです。

  • ソロモンに対して警告されたことを、私たちは厳粛な思いで受けとめる必要があります。とりわけ、キリストの教会の指導者たちは特にそうです。教会の指導者の責任は単に説教と牧会だけでなく、好むと好まざるとにかかわらず、教会行政に対して大きな責任がゆだねられているからです。

3. ヒラムに対する見返りとして賦与した20の町

  • 9章10節以降には、ソロモンが主の宮と王宮の二つの家を20年かかっつて立て終わったとき、ソロモンはその見返りとして、ツロの王ヒラムに対してガリラヤ地方の20の町を与えました。ところが、ヒラムはその町々を見て、「彼の気に入らなかった」とあります。
  • ヒラムはソロモンに「兄弟よ。あなたがた私に下さったこの町々は、いったい何ですか。」と言ったために、これらの町々は「カブルの地」と呼ばれるようになったとあります。「カブル」כּבוּלはアシェル東国境の町(ヨシュア9:27)、あるいはガリラヤの一地方(列王上9:13)です。「ガブル」כְּבַלの正確な意味は不明とされていますが、「値打ちのない、無に等しい、ないのと同じ」という意味とも考えられると言われます。イエスの生誕の地も、また活動の舞台もガリラヤの地から始まったことには、実は、深い意味が隠されています。マタイはイザヤ書9章の預言を受けて以下のように記しています。

【新改訳改訂第3版】マタイの福音書 4章12~17節

12 ヨハネが捕らえられたと聞いてイエスは、ガリラヤへ立ちのかれた。
13 そしてナザレを去って、カペナウムに来て住まわれた。ゼブルンとナフタリとの境にある、湖のほとりの町である。
14 これは、預言者イザヤを通して言われた事が、成就するためであった。すなわち、
15 「ゼブルンの地とナフタリの地、湖に向かう道、ヨルダンの向こう岸、異邦人のガリラヤ。
16 暗やみの中にすわっていた民は偉大な光を見、死の地と死の陰にすわっていた人々に、光が上った。」
17 この時から、イエスは宣教を開始して、言われた。「悔い改めなさい。天の御国が近づいたから。」


2012.9.25


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