詩29篇の修辞
詩29篇の修辞 「主の声」 力と威厳を表わすシンボル
- 「主の声」は、具体的には「雷鳴」のことであり、主の力強さと威厳のシンボルです。一方、自然界おける力と威厳のシンボルは、北にある「レバノン杉」、および「レバノン山脈」と「ヘルモン山」(聖書には「レバノンとシルヨン」と表記されています)、南にある荒野のカデシュ、大森林―それらを、主の声は「引き裂き」(שָׁבַר)、「打ち砕き」(שָׁבַר)、「はねさせ」(רָקַד)、「ひらめかせ」(חָצַב)、「揺すぶり」(חִיל)、「産みの苦しみをさせ」(חול)、「裸にする」(חָשַׂף)方です。つまり、主は地上の自然界をリセットすることのできるお方です。
- この詩29篇の主題は、「すべてをリセットすることのできる王なるお方に栄光を帰すこと」です。しかも、驚くべきことに、王座に着いておられる方は、ご自身の民とかかわり、その民に祝福を与えられる方であります。自然界のリセットだけに絞って考えてみると、神の救いのご計画において三つの「リセット」があることが分かります。
(1) そのひとつは、昔の「大洪水」の時、つまり、ノアの洪水の時、主はノアとその家族を通して、新しくリセットされた地上で、再度、出発させました。
(2) もう一つのリセットは、キリストの地上再臨時においてです。それはまだ実現していませんが、神の民であるイスラエルがイエスをメシアとして民族的に信じる時代がやってきます。そしてそのとき、イスラエルの民(ユダヤ人)は千年王国の支配国とされます。サタンは幽閉されていますので、この地上には「主を知る知識」が覆い、多くの人々が容易に神を信じる時代がやってきます。 自然界においては弱肉強食がなくなり、肉食の動物はすべて草食になります。
(3) 最後のリセットは、千年王国時代の後に来る最後の審判と「新しい天と新しい地」の創造です。それまでの天と地は過ぎ去り、海もなくなります。全く新しい秩序による世界が誕生します。
- リセットという神のみわざは「さばき」と「回復」の両面をもっています。「さばき」は人間の罪がもたらす事柄に対する神の義の執行ですが、「回復」はすべてを新しくさせる神の愛の現われです。それは神の御子イエス・キリストによってなされます。キリストは私たちに、神の「リセットのみわざと恵み」をもたらしてくれる救い主です。それは、本来「重い」という語源の「カーボード」(כָּבוֹד)、すなわち「栄光の輝き」を意味します。それゆえ、主にある者たちは、いつの時代においても、そのことを信じて、「栄光と力とを、御名の栄光を主に帰す」(29:1, 2)ことが求められているのです。
- ちなみに、1節と2節に使われている(栄光を主に)「帰する」という動詞は「ヤーハヴ」(יָהַב) で、10節に2回使われている栄光の主が(御座に)「着く」という動詞は「ヤーシャヴ」(יָשַׁב)です。真ん中の文字が異なっているだけですが、神と私たちのかかわりをつなぐとても重要な動詞です。感謝なことに、私たちは「すべてをリセットする王なる主(יהוה)」によって、シャーローム(שָׁלוֹם)のうちに祝福されているのです。
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