詩36篇の修辞
詩36篇の修辞 「翼」
- 「人の子らは御翼の陰に身を避けます。」(36:7b)
- 「翼」という「カーナーフ」(כָּנָף)という名詞は、旧約で109回使われています。文字通り、鳥の翼を意味しますが、メタファー的用法としては、第一に、保護や防御を表わす「主の翼」、すなわち「御翼」があります。「あなたがその翼の下に避け所を求めて来たイスラエルの神、主から豊かな報いがあるように」(ルツ2:12)とは、ボアズが異邦人モアブの女ルツに対して語ったことばです。まさにそのことばの如く、ルツはイエス・キリストにつながる神の恵みの系譜の中に組み込まれました。
- 詩篇では、上記の36:7の他に、
17:8「私を、ひとみのように見守り、御翼の陰に私をかくまってください。」
61:4「私は、あなたの幕屋に、いつまでも住み、御翼の陰に、身を避けたいのです。」
91:4「主はご自分の羽で、あなたをおおわれる。あなたは、その翼の下に身を避ける。」
- いずれも、主に信頼する者に対する愛の覆いとしての御翼です。
- 他の用法としては、「わしの翼」があります。
「あなたがたは、わたしがエジプトにしたこと、また、あなたがたをわしの翼に載せ、わたしのもとに連れて来たことを見た。」(出エジプト19:4)。
- ここの「わしの翼」とは、イスラエルの中で神のことばを語る祭司(レビ人)であるモーセとアロンによって神の民が導かれてきたことを意味しています。
- 「わしが巣のひなを呼びさまし、そのひなの上に舞かけり、翼を広げてこれを取り、羽に載せて行くように、ただ主だけでこれを導き・・」(申命記32:11)、
- ここでの「わしの翼」は、文字通りの意味ではなく、神がご自身の民に対するねんごろなき導きと訓練を意味するメタファーとして使われています。
- ちなみに、エゼキエル17:1~8には「二つの大鷲」のたとえが語られていますが、ここでの「大鷲」はバビロンの王ネブカデネザルを指しています。「大きな翼,長い羽」は、その軍事的、政治的な勢力が強大で広範に及んでいることを示し,「色とりどりの豊かな羽毛」はその王国が色々な民族から成っていることを示すと考えられています。つまり、「大鷲の翼」が、敵の勢力を意味するメタファーとして使われています。
- 他にも、契約の箱の「あがないの蓋」を覆っている二つの「ケルビムの翼」が、神と人との交わりを可能とさせるいけにえの血を見守っています(出エジプト25:20, 37:9)。
- 最後に、もうひとつ「風の翼」という表現があります。
「主は、ケルブに乗って飛び、風の翼に乗って飛びかけられた。」(詩篇18:10)
「(主は)雲をご自分の車とし、風の翼に乗って歩かれます。」(詩篇104:3)
- これは主なる神が、主権的に、自由に行動されることをたとえています。
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