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骨肉の争いにおけるさばきつかさ

士師記の目次

8. 骨肉の争いにおけるさばきつかさ

【聖書箇所】 9章1節~57節

はじめに

  • 歴史映画を見るとき、ストーリーの流れが掴めないことがあります。そのようなときにナレーターが入ることではじめて納得することがあります。士師記9章におけるストーリーは少々入り組んでいますが、ナレーターの部分であるA(23~24節)、B(56~57節)を読むと、ストーリー全体の流れが理解できます。そのナレーターの部分は、「神は」という主語で語られます。まずはその部分だけを取り上げてみます。

ナレーターA(9:23~24)

【新改訳改訂第3版】
23 神は、アビメレクとシェケムの者たちの間にわざわいの霊を送ったので、シェケムの者たちはアビメレクを裏切った。
24 そのためエルバアルの七十人の息子たちへの暴虐が再現し、彼らの血が、彼らを殺した兄弟アビメレクと、アビメレクに加勢して彼の兄弟たちを殺したシェケムの者たちの上に臨んだ。

【新共同訳】
23 神はアビメレクとシケムの首長の間に、険悪な空気を送り込まれたので、シケムの首長たちはアビメレクを裏切ることになった。
24 こうしてエルバアルの七十人の息子に対する不法がそのままにされず、七十人を殺した兄弟アビメレクと、それに手を貸したシケムの首長たちの上に、血の報復が果たされることになる。

【リビングバイブル(LB)】
23 神様がアビメレク王とシェケムの住民との間にもめ事を起こしたので、シェケムの住民は、アビメレクに反旗をひるがえすに至りました。
24 引き続いて起こった事件の結果、アビメレクと、ギデオンの七十人の息子殺害に加担した者たちとに、その殺人罪に対する当然の罰が下ることになったのです。


ナレーターB(9:56~57)

【新改訳改訂第3版】
56 こうして神は、アビメレクが彼の兄弟七十人を殺して、その父に行った悪を、彼に報いられた。
57 神はシェケムの人々のすべての悪を彼らの頭上に報いられた。こうしてエルバアルの子ヨタムののろいが彼らに実現した。

【新共同訳】
56 神は、アビメレクが七十人の兄弟を殺して、父に加えた悪事の報復を果たされた。
57 また神は、シケムの人々の行ったすべての悪事にもそれぞれ報復を果たされた。こうしてシケムの人々は、エルバアルの子ヨタムの呪いをその身に受けることとなった。

【リビングバイブル(LB)】
56~57
こうして神様は、ギデオンの七十人の息子殺害の罪を、アビメレクとシェケムの人々に報いたのです。 同時に、ギデオンの息子ヨタムののろいも実現したことになります。


1. 真の士師は神であること

  • 士師記9章は、士師のギデオンが死んだ後に起こった骨肉の争い、および、血の報復が記されています。ギデオンは多くの妻をもったことにより、その妻たちから生まれた息子だけでも70人おりました。そして他に(おそらく)カナン人のそばめから生まれた息子アビメレクがおりました。このアビメレクがシェケムに住む母方の者たちを取り込んで、1人の息子ヨタムを除く69人の息子たちを殺害するという事件を起こしました。
  • そもそもギデオンがそばめをつくらなければこのような悲惨な事件は起こらなかったのにと思う人もいるかも知れませんが、聖書はその是非については一切ふれていません。
  • 身内に起こった悲惨な出来事について、神が真のさばきつかさとなって血の報復をなされたというのが、この9章のメッセージだと考えます。
  • これまでは、イスラエルの人々が主の前に悪を起こったことで、敵の手に渡し、彼らが苦しみのゆえに主に向かって叫び求めることで、一人の救助者、さばきつかさを起こされました。ところが、ギデオンの死後に起こった身内の骨肉の争いにおいては、特定のさばきつかさを起こすことなく、神ご自身がさばきつかさとなられて、正義をもって当然の罰をくだされたのです。人間の救助者も神が起こされるわけですから、真の士師は神ご自身ですが、特に9章の場合は、骨肉の争いをさばく特定の人物を起こされることなく、神が真の直接的なさばきつかさ(「ショーフェート」שׁוֹפֵט)であることを示されたユニークな章と言えます。その神の取り仕切りの妙が9章には綴られているのです。

2. 真の士師としての神の取り仕切りの妙

  • 真の士師としての神はどのようにして骨肉の争いに決着をつけたのでしょうか。その妙を見たいと思います。
  • 23節に神は「わざわいの霊を送った」(新改訳)とあります。原文では「ルーアッハ・ラーアー」(רוּחַ רָעָה)です。直訳では「悪霊、悪い霊、悪しき霊」です。それを新共同訳では「険悪な空気」、フランシスコ会訳「いさかいの霊」と訳しています。いずれにしても、この「ルーアッハ・ラーアー」によって、アビメレクとシェケムの人々との間にもめごとを起こして、シェケムの人々がアビメレクに対して反旗を翻し、裏切ることとなったのです。事のいきさつは省きますが、結局のところ、神が「ルーアッハ・ラーアー」を送ったことによって、アビメレクやシェケムのすべての人々に対して、血の報復が果たされ、当然の罰を下したのです。
  • アビメレクの生い立ち、境遇がいかなるものであったとしても、神はそのことにおいてなんら同情していません。彼が自分の野心のために多くの兄弟を殺害したした罪、自分に対して反旗を翻した者たちを殺害した罪が問われ、神によってそのさばきがなされたことを記しています。特に、アビメレクは無残な最後を遂げたことを聖書は記しています。

2012.4.24


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