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Ps10その他(1)

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社会的弱者に対して深くかかわられることを嘉しされる神

14節「あなたはみなしごを助ける方でした。」(新改訳)
18節「(あなたは)みなしごと、しいたげられた者をかばってくださいます。地から生まれた人間がもはや、脅かすことができないように。」(新改訳)

  • 詩篇10篇ではじめて、しかも2回(10:14, 10:18)登場する名詞があります。それは、「みなしご(孤児、親のいない子)」と訳された「ヤートーム」יָתוֹם(yatom)ということばです。英語の「みなしご」は、本来、orphan(孤児)ですが、なぜか、fatherless(父親のいない子ども)と訳しています。NIV訳ではすべてfatherlessと訳されています。「ヤートーム」יָתוֹםは、旧約で42回、詩篇では7回使われています。
  • 詩篇10篇では、「みなしご」(14, 18節)の他に、以下のような社会的弱者を表わす語彙がみられます。
    • 悩む人」(2, 9, 9,節)、
    • 不幸な人」(8, 10, 14節)、
    • 貧しい者」(12, 17節)、
    • しいたげられた者」(18節)

(1) 「悩む人」(新改訳、10:2, 9, 9, 12 )は、口語訳、新共同訳では「貧しい人」と訳され、その原語は「アーニー」עָנִי(`aniy)。旧約では75回、詩篇では32回使われています。新改訳の10:12では「悩む者」ではなく、「貧しい者」と訳していますが、原語は同じく「アーニー」עָנִיです。「アーニー」は「砕かれた者」つまり「砕かれた結果、この世での財産、地位、安全性を失った者」(鍋谷師)という意味です。イエスが山上の説教で語られた「心の貧しい者」とは、この「アーニー」のことです。


(2) 「不幸な人」(新改訳10:8, 10, 14)は、口語訳では「寄るべなき者」と訳し、新共同訳では「不運な人」と訳しています。原語は「ヘルハー」חֶלְכָה(chelkhah)です。


(3) 「貧しい者」(新改訳、新共同訳、10:12, 17)は、口語訳では10:12を「苦しむ者」、10:17を「柔和な者」と訳していますが、原語はいずれも「アーナーヴ」עָנָו(`anaw)です。「アーナーヴ」עָנָוは、旧約で21回、詩篇では13回使われています。その中に9:12, 18も含まれています。


(4)「しいたげられた者」(新改訳、10:18)は、口語訳は「しえたげられる者」、新共同訳は「虐げられている人」と訳されていますが、原語は「ダフ」דַּךְ(dakh)です。形容詞ですが、旧約で4回、詩篇では3回(9:9/10:18/74:21)使われています。


  • Ps10の「恩寵用語」でもふれたように、主は、地から生まれた人間(エノーシュ)が、もはや、貧しい者、孤児、しいたげられた者たちを脅かすことができないように、彼らを「助け עָזַר」、彼らの声を「聞き שָׁמַע」、彼らの心を「強くし כּוּן」、彼らを「かばう שָׁפַּט」方であってくださいます。
  • 社会的弱者の語彙」には、詩篇9,10篇に登場した「悩む人」、「不幸な人」、「貧しい者」、「しいたげられた者たち」だけでなく、「在留異国人」や「やもめ」という語彙も含まれます。
  • モーセの律法では、こうした弱者に対する社会的、経済的サポートをする必要があることが強調されています。出エジプト記22:21~24には次のように警告されています。

    在留異国人を苦しめてはならない。しいたげてはならない。あなたがたも、かつてはエジプトの国で、在留異国人であったからである。すべてのやもめ、またはみなしごを悩ませてはならない。もしあなたが彼らをひどく悩ますならば、・・主の怒りは燃え上がり、あなたがたの妻はやもめとなり、子どもはみなしごとなる。

  • 申命記において、神の「福祉理念」はさらに強調されています。
    10:18/14:29/16:11, 14/24:17, 19, 20, 21/26:12, 13/27:19/を参照。
  • 現代において、特に先進国と言われる国では「福祉」ということが叫ばれ、整備されて来ていますが、イスラエルの歴史においては、その国家誕生の時から、主にある福祉国家の理念が確立されていたということはまさに驚くべきことです。未曾有の超高齢化社会を迎える日本において、「真の福祉」が問われるのはこれからです。主にある教会もこの世とは異なる形で、真の主の福祉を学び、実現できるようにしなければなりません。

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