****** キリスト教会は、ヘブル的ルーツとつぎ合わされることで回復し、完成します。******

ギデオンの召命

士師記の目次

5. ギデオンの召命

【聖書箇所】 6章1節~40節

はじめに

  • イスラエルの民が主の目の前で悪を行ったために、主は彼らをミデアン人の手に渡しました。ミデヤン人のみならず、アマレク人、そして東の人々がいなごの大軍のようにやってきて、地を踏み荒らし、その地の産物を略奪しました。それゆえイスラエルの民は非常に弱り、「主に叫び求めた」(「ザーアク」זָעַק)のでした。
  • 士師記の中で、ギデオンの物語は最も長く、次いでサムソンの物語が有名です。士師たちの登場の背景はみな同じですが、士師たち自身はみなそれぞれ個性豊かであり、戦い方もみなそれぞれ異なっています。今回は、ギデオンの召命から特徴的なことを取り上げてみたいと思います。

1. ギデオンは問題意識をもっていた

  • 主の使いがギデオンに現れた時に、ギデオンはこう問いかけました。
    「ああ、主よ。もし主が私たちといっしょにおられるなら、なぜこれらのことがみな、私たちに起こったのでしょうか。私たちの先祖たちが、『主は私たちをエジプトから上らせたではないか。』と言って、私たちに話したあの驚くべきみわざはみな、どこにありますか。今、主は私たちを捨てて、ミデヤン人の手に渡されました。」
  • こうした問いかけは他の士師たちにはみられません。ギデオンのこの問いかけこそ主が最も喜ばれることです。「問いを持つ」、主に「問いかける」ということはとても重要です。「問題意識」を持つことが神の働きへの入り口だからです。
  • イエスはしばしばたとえ話を話しながら。「聞く耳のある者は聞きなさい」、「聞き方に注意しない」と語られました。より正確に言うならば、イエスは繰り返しそのように「呼びかけていた」のです。イエスの言われた「聞く耳のある者は聞きなさい」とは、別のことばで言い換えるならば、得心が行くまで、何度も、繰り返し、熱心に、イエスに向かって「尋ね続ける、問い続ける」ことです。そうするなら、必ず、イエスが言わんとするたとえの真意を悟ることができるようになるのです。問いかけがなければ、天の御国の奥義は開かれない仕掛けになっていたのです。ですから、イエスはだれでも理解できるためにたとえで語られたのではなく、その反対です。「それはどういう意味ですか」と問いかけさせるためにたとえで語られたのでした。イエスの弟子たちはイエスの語られるたとえがどんな意味かをイエスに尋ねたとき、その真意がはじめて明かされています。このことはとても重要なことだと信じます。
  • 主にある者たちが、主に問いかける力を身につけることが求められています。しかもその者こそ、真のイエスの弟子であり、神の国の奥義(秘密)を引き出すことのできる者だからです。今日のキリスト教会において、この「問いかける力」を養うプログラムをしっかりと、地道に建て上げていく必要があります。単に、牧師の語るメッセージだけを一方的に聞かされていくだけでは、問いかける力を身につけることはできません。この力を養うことがなければ、教会は神の国の隠されたものを引き出し、顕わにして行くことができません。上からのいのちを引き出すことは到底できないのです。

2. 「主はギデオンに仰せられた」

  • ギデオンの召命の特徴に第二は、問いかけるギデオンに対して、主が「仰せられた」ということです。6章では4回(14, 16, 23, 25節)、7章では5回(2, 4, 5, 7, 9節)、合わせて9回です。これほどまで繰り返し、個人的に、直接的に、しかも親しく主が仰せられた士師はギデオンの他にはおりません。
  • 他の士師たちが民に主の託宣を語る場合、当然、主からその声を聞いているはずですが、その具体的な記述が記されてはいません。ですから、ギデオンの場合、「主は仰せられた」というフレーズは特異なことと言えます。

3. 自分の召命を何度も確かめている

  • ギデオンは主からの召しが本当かどうか、何度も確かめている点が特徴的です。自分の召命の確信を得るために、何度もしるしを求めるギデオンに対して、主はなんら彼をとがめてはおりません。彼を、小心者だとか、臆病者だとか、あるいは慎重だと評価しているのは注解者たちで、主ご自身は何も評価しておりません。
  • 確かに、ギデオンは自分のことを「自分の分団はマナセのうちで最も弱く、私の父の家で一番若い」と言っていますが、これは事実を述べているわけで、自己認識が低いということには必ずしもつながりません。いなごの大軍に立ち向かってイスラエルをミデヤン人から救えと言われて、ひるまない人物がいるでしょうか。至極自然な反応といえます。
  • ギデオンが最初の主の召しを確信したあと、主がギデオンに求められたことは、彼の家にある(というよりは、自分の父の家にある)バアルの祭壇を取りこわすことでした。そしてギデオンはそれに従ったのです。やり方としては奇襲(夜襲)でしたが、それはギデオンの戦い方の特徴となるものでした。いわば予行演習がなされたという感じです。
  • 本格的な戦いをするために、ギデオンは自分の部族であるマナセのみならず、「アシェル、ゼブルン、ナフタリ」からも呼び集めました。シセラとの戦いにおいては、アシェルとダンからの参戦はありませんでしたが、今回はアシェルからも参戦しています。すべて北方の部族たちでしたが、どういうわけかイッサカルの名がありません。

2012.4.18


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