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ソロモンの背信と分裂の預言

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列王記の目次

12. ソロモンの背信と分裂の預言

【聖書箇所】 11章1節~43節

はじめに

  • 11章においてソロモンの治世の記述が終わります。治世期間は40年でした。彼に与えられた統治能力の知恵によって、イスラエルはかつてなかったほどの繁栄を誇り、栄華を窮めた黄金時代を迎えました。多くの諸国の人々がその繁栄ぶりと成功を見にやって来ました。おそらくどの国の指導者たちもソロモンの知恵をまねることはできなかったに違いありません。なぜなら、ソロモンの知恵は神から与えられた賜物(カリスマ)だったからです。
  • ソロモンは与えられた地位と知恵によって、まさにこの世のあらゆる領域における究極を経験した人です。しかしそのソロモンの口から出た悟りのことばは、「空の空、すべては空」(伝道者の書1:1)ということばでした。また、一介の農民から一国の関白へとのし上がった豊臣秀吉の時世の句は、なんと「露と落ち露と消えにし我が身かな浪花の事は夢のまた夢」でした。双方とも繁栄を誇った者の声だからこそ、そのことばには重みがあります。ソロモンから私たちが学ぶべきことは多くあります。しかし、11章では、ソロモンに対する最も厳しい批判が語られています。

1. ソロモンの主に対する背信

  • ソロモンの治世以降、三代(サウル、ダビデ、ソロモン)続いたイスラエル王国は大きく二つに、北と南に分裂するようになります。その要因となったのがソロモンの偶像礼拝の罪でした。あまりにも平和ボケしてしまったのか、その罪の深刻さにソロモン自身気づいていなかったようです。ソロモンの心が主から偶像に移り変わった(ことについて主は二度も彼に現われて警告したにもかかわらず、ソロモンは悔い改めて、「主に従い通さなかった」のでした。そこがダビデとは異なる点でした。
  • かつてイスラエルがカナンの地に入る時に、主が決して交わってはならないと警告されていた国の女性をソロモンは愛して(「アーハブ」אָהַב)、離れませんでした(「ダーヴァク」דָּבַק)。「ダーヴァク」דָּבַקという動詞の意味は「くっつく」ことです。聖書で最初に登場する箇所は創世記2章24節で、男と女が「結び合い」と訳されています。他にもこの動詞の良い例としては、異邦人のルツがナオミに「すがりついた」(ルツ記1:14)ことを挙げることが出来ます。主にすがり、離れることなく、主とのかかわりがきわめて親密であることをうかがわせる動詞です。それだけに、「縁を結んではならない」相手もいるのです。なぜなら、そのことによって主から離れてしまうことがあるからです。ソロモンはそのことを主から警告されていたにもかかわらず、「彼女たちを愛して、離れなかった」のです。それゆえ、彼女たちは容易にソロモンの心を転じることができたのです。
  • 11章には「(心を)転じる」と訳された「ナーター」נָטָהが以下のように4回使われています。旧約では215回の使用頻度です。

2節「彼らは必ずあなたがたの心を転じて彼らの神々に従わせる。」
3節「・・その妻たちが彼の心を転じた。」
4節「・・その妻たちが彼の心をほかの神々のほうへ向けたので・・」
9節「・・それは彼の心がイスラエルの神、主から移り変わったからである。」

  • 「ナーター」」נָטָהは、他に「伸ばす、(天幕を)広げる、曲げる、迷わせる、(水がめを)傾ける、押しのける」といった意味もあります。
  • ソロモンが年をとったとき、それはより顕著となりました。「彼の心は、父ダビデの心とは違って、彼の神、主と一つにはなっていなかった。」(4節)、これが列王記の著者のソロモンに対する評価でした。
  • 巨大なハーレムはソロモンの平和外交としての証しでしたが、それによって偶像礼拝が持ち込まれました。そのことに対して、主は怒られたのです(11:9)。

2. ソロモンに対する神の怒りの現われ

  • 主はソロモンに対する怒りの現われとして、ソロモンに敵対する者たちを起こします。

(1) 南・・・エドムの子孫のハダデ(エジプトの後ろ盾を持っている)
(2) 北・・・アラムの支配者レゾン
(3) 内部・・ソロモンの家来で手腕家のヤロブアム

  • 40年間、平和を保ってきたイスラエルの周囲から、その平和を脅かす不穏な空気が漂わせる勢力が主によって起こされたのです。しかも、内部からは手腕家であり、管理能力のあるヤロブアムを預言者アヒヤを通して主は召し出します。やがて彼は北イスラエル(10部族)を従えることになりますが、ただその召しの目的がダビデの子孫を苦しめのためのものでした。
  • これからイスラエルという国は分裂を余儀なくされていきますが、そこにも神の深い緻密なご計画が隠されているのです。

2012.9.28


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