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ダビデの死とソロモン王国の確立

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列王記の目次

02. ダビデの死とソロモン王国の確立のプロセス

【聖書箇所】 2章1節~46節

はじめに

  • 2章12節で「ソロモンは父ダビデの王座に着き、その王位は確立した」とありますが、再度、最後の46節にも「こうして、王国はソロモンによって確立した。」とあります。「こうして」というからには、「どのようにして」というプロセスが内包されています。13節~45節の部分はその王国確立のプロセスについて記されています。
  • 2章の内容としては、ダビデが死ぬ前にソロモンに対して個人的な遺言を語っています。その遺言とは第一に、神の代理者としての王として、神に対してどうあるべきかという面でした。もうひとつの遺言とは、ダビデの王としての経験から(つまり統治者としての立場から)、四人の人物の対処についてでした。
  • この2章は、ソロモンが父ダビデの遺言をどのように受けとめ、どのように対処したかについて記されています。その結果として、「(こうして)王国はソロモンによって確立した」ということばにつながっていると考えることができます。

1. 父ダビデが息子ソロモンへの遺言

  • ダビデは子のソロモンに対して遺言を残しました。決別説教と同様、遺言も人生の最後にどうしても語って置かなければならない大切な事柄と言えます。

(1) 神に対するあり方

【新改訳改訂第3版】Ⅰ列王 2章3節
あなたの神、【主】の戒めを守り、モーセの律法に書かれているとおりに、主のおきてと、命令と、定めと、さとしとを守って主の道を歩まなければならない。あなたが何をしても、どこへ行っても、栄えるためである。

(2) 三人の人物についての対処 「強く、男らしくあれ」

  • ここでの二人の人物とは「ヨアブ」と「パルジライの子ら」、そして「シムイ」に対する対処です。おそらく、ダビデのソロモンに対する「強く、男らしくあれ」(2:2)との諭しはこの中の二人の人物、「ヨアブ」と「シムイ」に対する姿勢ではないかと思われます。「強く、男らしくあれ」」には、おそらく統治者としての厳しい立場、ある意味で冷徹な面をも含んでいます。単に、政治は人情的な面だけではやっていけないことをダビデは知っており、その懸念からソロモンに諭したと言えます。ただし、知恵をもってそれをするようにとダビデは促したのです。

2. ダビデの遺言に対するソロモン

  • 父ダビデの遺言に対してソロモンはとても重く受け止めました。しかし、どのように対処すべきかは知恵が要りました。聖書は、ソロモンの王国が確立する上で起こったプロセスを記しています。

(1) アドニヤに対して

  • ソロモンの王国の確立の第一のプロセスは、アドニヤが自ら滅びの穴に落ちたことです。アドニヤは野心をもって自分がダビデの後継者となろうとして反乱を企てた者でしたが、ソロモンが擁立した後に、ソロモンの母バテ・シェバを通して、父ダビデの妻(あるいはそばめ)となった美しい娘アビシャイを自分の妻としたいとの願いを頼みました。ソロモンはアドニヤの願いの裏に潜む動機を警戒して、彼を反乱者としての罪で殺しました。
  • アドニヤの真の動機がなんであれ、父の妻(あるいはそばめ)を自分の妻として娶ることは、いつなんどき自分こそダビデの王位後継者だと名乗りをあげないとも限りません。そうならないためにも、ソロモンはアドニヤを打ち取ったのでした。

(2) 祭司エブヤタルに対して

  • アドニヤが打ち取られたことを契機として、彼の擁立に組した祭司エブヤタルも祭司職を罷免されました。エブヤタルはかつてダビデがサウル王から逃れて行ったところの祭司アヒメレクの息子です。エブヤタルだけが助かってダビデと運命を共にします。ダビデに対してとても忠実であり、アビシャロムの反乱のときにもダビデの側についた人でしたが、どういうわけかアドニヤが反乱を企てたときにはそれに組した人物でした。それゆえ、ソロモンは彼の身分を剥奪して追放したのです。

(3) ヨアブに対して

  • かつてダビデが信用して契約を結んだイスラエルの将軍アブネルと、アブシャロムの反乱のときのアブシャロム側の将軍をダビデが自分の軍団長としたアマサを、ヨアブはダビデに隠して虐殺するということをしました。ヨアブは自分の地位を保つためならば、どんなことでもする人物だったのです。その罪のゆえに、ダビデはソロモンに彼のした罪に対する対処を求めていました。つまり、ソロモンが王となっても同じことをする可能性がある人物として、警戒し、対処することを遺言として残したのです。
  • アドニヤの死と祭司エブヤタルの罷免を知ったヨアブは、主の天幕に逃れ、祭壇の角をつかみました。ソロモンは容赦せず、彼を打ち取らせるようベナヤを遣わします。ベナヤはヨアブに「外に出よ」と言いますが、「嫌だ。ここで死ぬ」と言って動きませんでした。それをベナヤがソロモンに報告したとき、「では、彼が言ったとおりにして、彼を打ち取れ」と命じました。こうしてヨアブの罪はさばかれたのです。

(4) シムイに対して

  • アブシャロム反乱の時にダビデが都落ちして逃げる際に、ダビデをさんざんに呪ったのがシムイでした。ダビデが再び政権を奪回したとき、彼はダビデに赦しを乞うたのでダビデは彼を赦しましたが、ダビデは彼を信用していなかったようです。いつなんどき謀反を企むかわからない人物として対処することを、ダビデはソロモンに言い残しました。
  • ソロモンはシムイに対して決してエルサレムから出てはならないことを申し付けていましたが、シムイは脱出した自分のしもべを追いかけるために無断でエルサレムを出てしまいました。シムイはソロモン王から言い渡された事を軽く考えていたのです。そのために彼は自ら蒔いた種のゆえに死ななければなりませんでした。

おわりに

  • 2章にはソロモンによって殺された人物が三人(アドニヤ、ヨアブ、そしてシムイ)です。ダビデが遺言したのはヨアブとシムイの死でしたが、ソロモンは機を待って、知恵をもって対処したと言えます。冷徹とも言えるこのソロモンの対処は、神の王国の代理者としてトップに立つ者にのみ与えられた課題でした。ただ、ここでは神は全く沈黙しているのですが、列王記の著者は「こうして、王国はソロモンによって確立した」と記したのです。

2012.8.28


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