主がエリヤにお告げになったとおりに
列王記の目次
32. 主がエリヤにお告げになったとおりに
【聖書箇所】 10章1節~36節
はじめに
- 10章には2度、10節と17節な、主が預言者エリヤによってお告げになったということが強調されてます。その内実は、アハブ家に属する者が根絶やしにされるということです。
1. アハブ家に属する者すべてを根絶やしにしたエフ―
- 前章の9章では、イエスエルの王ヨラムとユダの王アハズヤがエフ―によって殺害されましたが、10章では、アハブ家に属する者たちのすべてが殺され、根絶やしにされたということが記されています。しかもそれは神が預言者エリヤを通して告げられたとおりのことだったのです。
- アハブ家の関係者とは、具体的には以下の者たちです。
(1) アハブの子どもたち70人
(2) アハブ家と親戚関係になったユダの王アハズヤの関係者42人
(3) アハブ家とかかわったバアルの信者たち全員(バアルの宮の端から端までいっぱいになるほど)
- 30節で主はエフ―に次のように語っています。
【新改訳改訂第3版】 Ⅱ列王記10章30節
【主】はエフーに仰せられた。「あなたはわたしの見る目にかなったことをよくやり遂げ、アハブの家に対して、わたしが心に定めたことをことごとく行ったので、あなたの子孫は四代目まで、イスラエルの王座に着こう。」
- エフ―はバアル信仰を一掃させた功労者です。しかし、主はこうも言っています。
Ⅱ列王記10章31節
しかし、エフーは、心を尽くしてイスラエルの神、【主】の律法に歩もうと心がけず、イスラエルに罪を犯させたヤロブアムの罪から離れなかった。
このことのゆえに、アラム(ダマスコ)のハザエルが勢力を増し、その結果、イスラエルのヨルダンの東側に侵略して打ち破り、領土を奪いました(33節)。聖書はこの出来事を「そのころ、主はイスラエルを少しずつ削り始めておられた」(32節)と記しています。つまり、この頃から、主は北イスラエルに対するさばきとしてイスラエルが縮小し始めたということです。ということは、やがては北イスラエルの国が消滅する運命にあるということを示唆しています。
2. エフ―に協力したレカブの子ヨナダブ
- さて、15節以降に「レカブの子ヨナダブ」という人物がエフ―と出会います。「レカブの子ヨナダブ」もエフ―と共に主に熱心な者でした。そしてエフ―の謀反を支援しました。レカブ、その子ヨナダブとは何者なのでしょうか。預言者のエレミヤが次のように述べています。
新改訳改訂第3版 エレミヤ記35章1節~11節
1 ヨシヤの子、ユダの王エホヤキムの時代に、【主】からエレミヤにあったみことばは、こうである。
2 「レカブ人の家に行って、彼らに語り、彼らを【主】の宮の一室に連れて来て、彼らに酒を飲ませよ。」
3 そこで私は、ハバツィヌヤの子エレミヤの子であるヤアザヌヤと、その兄弟と、そのすべての息子と、レカブ人の全家を率い、
4 彼らを【主】の宮のイグダルヤの子、神の人ハナンの子らの部屋に連れて来た。それは、首長たちの部屋の隣にあり、入口を守る者シャルムの子マアセヤの部屋の上にあった。
5 私は、レカブ人の家の子たちの前に、ぶどう酒を満たしたつぼと杯とを出して、彼らに「酒を飲みなさい」と言った。
6 すると彼らは言った。「私たちはぶどう酒を飲みません。それは、私たちの先祖レカブの子ヨナダブが私たちに命じて、『あなたがたも、あなたがたの子らも、永久にぶどう酒を飲んではならない。
7 あなたがたは家を建てたり、種を蒔いたり、ぶどう畑を作ったり、また所有したりしてはならない。あなたがたが寄留している地の面に末長く生きるために、一生、天幕に住め』と言ったからです。
8 それで、私たちは、私たちの先祖レカブの子ヨナダブが私たちに命じたすべての命令に聞き従い、私たちも、妻も、息子、娘たちも、一生、ぶどう酒を飲まず、
9 住む家も建てず、ぶどう畑も、畑も、種も持ちません。
10 私たちは天幕に住み、すべて先祖ヨナダブが私たちに命じたとおりに、聞いて行ってきました。
11 しかし、バビロンの王ネブカデレザルがこの国に攻め上ったとき、私たちは『さあ、カルデヤの軍勢とアラムの軍勢を避けてエルサレムに行こう』と言って、エルサレムに住んだのです。」
- この箇所からの情報としては、レカブ人(族)は、一生禁酒(ぶどう酒を飲まず、また造らず)し、住む家も天幕で暮らし、一切の不動産を持たずに生きる者たちで、エレミヤは彼らを称賛しています。いわばナジル人に近い人々です。イスラエルの神を熱心に信奉した人々でした。
- レカブはケニ人の子孫です。モーセの舅のイテロはミディアン人の祭司でしたが、ケニ人とも呼ばれています。カナン人の将軍シセラを天幕の釘で刺し殺したヤエルはケニ人ヘベルの妻でした。ケニ人はイスラエルの民がエジプトから出て来たとき、とても親切にしたのです。それゆえ、後のサウル王やダビデ王もケニ人に対しては好意的であったようです。
- モーセの義兄弟であったケニ人の子孫の一部は、イスラエルの民がヨルダン川を渡ったとき、ともに渡って来てイスラエルの中に溶け込んで生きていたようです。
【新改訳改訂第3版】士師記1章16節
モーセの義兄弟であるケニ人の子孫は、ユダ族といっしょに、なつめやしの町からアラデの南にあるユダの荒野に上って行って、民とともに住んだ。
- エフ―とヨナダブが手を組んで一つとなったということは、イスラエルと異邦人が一つとなって「バアル」を滅ぼすということを暗示しています。
- モアブの王バラクが雇った預言者バラムは、イスラエルの民を呪わずに、祝福しました。その時にケニ人を「あなたの住みかは堅固であり、あなたの巣は岩間の中に置かれている」と祝福しましたが、このケニ人もアッシリヤが攻め寄せたときにはイスラエルと運命を共にし、連れ去られることが預言されています(民数記24:21)。
2012.11.14
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