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「他国の女」と訳されたその正体とは

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箴言は「父から子への知恵」、主にある家庭教育の根幹を学ぶ最高のテキストです。

12. 「他国の女」と訳されたその正体とは

【聖書箇所】5章1〜14節

ベレーシート

  • 多くの解説書が箴言5章に対し「結婚における節操」とか、「不倫についての戒め」とか、「貞潔の勧め」といったタイトルを付けています。結婚生活についての知恵を父がこれから結婚することになる「わが子」に対して教えているからです。使徒パウロも、エペソ書5章で結婚について教えていますが、その場合、単に「夫と妻に対する教え」でとどまらず、結婚を神のご計画における奥義にかかわるものとして扱っています。つまり、結婚の教えを「一体となる」という、より深い神のみこころと結びつけて語っているのです。聖霊の息吹によって書かれた「箴言」も、同じくそうした根源的視点から説き明かす必要があります。そうでなければ、単なる道徳・倫理の域だけで理解してしまいます。今回の箇所にある「他国の女」と訳された語彙を探って行くと、より深い意味がそこに隠されているように思います。

1. 「他国の女」の諸訳とその意味について

【新改訳改訂第3版】箴言 5章3節
他国の女のくちびるは蜂の巣の蜜をしたたらせ、その口は油よりもなめらかだ。

【口語訳】箴言 5章3節
遊女のくちびるは蜜をしたたらせ、その言葉は油よりもなめらかである。

【新共同訳】箴言 5章3節
よその女の唇は蜜を滴らせ/その口は油よりも滑らかだ。

【松田明三郎訳】箴言 5章3節
なぜならだらしない女のくちびるは蜜をしたたらし、その口はあぶらよりもなめらかである。


●他に、「異国の女(外国の女)」(関根訳)、「見知らぬ者」(ATD訳)という訳もありますが、大方、誘惑して姦通する女を示す語として使われています。

  • 上記の「他国の女」「遊女」「よその女」「だらしない女」「外国の女」「見知らぬ女」「誘惑する女」と訳された原語は、名詞「ザール」(זָר)の女性形「ザーラー」(זָרָה)です。この名詞の元になっている動詞は「ズール」(זוּר)で、以下のような意味を持っています。

    (1) 「押しつぶす」「押し入る」
    (2) 「遠ざける」「迷う、迷わせる」
    (3) 「吐き気を催させる」


    ●これらの意味を総合すると、あるかかわりの中に押し入って来て、本来のかかわりを遠ざけ、迷わせるだけでなく、やがては「吐き気を催させる」結果を招くというメッセージをもった語彙であることが分かります。そのような女とかかわることがないように、父は子に警告しているのです。

    ●箴言5章3節の「ザーラー」(זָרָה)はすでに箴言2章16節で「イッシャー・ザーラー」(אִשָּׁה זָרָה)というフレーズで登場しています。これを単に「他国、外国の女」として警告の対象とするならば、イスラエル、特にユダの系図の中にはカナン人の女(タマル)やモアブの女(ルツ)がおり、父の教えと反することになってしまいます。しかし形容詞の男性形「ザール」(זָר)、女性形「ザーラー」(זָרָה)が「異なった」というニュアンスの強い語彙であることから、ここではむしろ「偶像の神を信じている者」、あるいは「まことの神を信じていない者」と深く関係しているように思います。

    ●父は息子に「イッシャー・ザーラー」(אִשָּׁה זָרָה)と深くかかわって性的な関係を結ばないように、すなわち(霊的な)姦淫を犯さないようにと警告しているのです。なぜなら、そこには真の信頼関係を築くことができないことを知っているからです。


2. 「他国の女」の特徴

  • 「他国の女」の特徴とその運命について以下のように記されています。

(1) 「くちびるは蜂の巣の蜜をしたたらせ、その口は油よりもなめらか」であること(5:3)。

(2)「しかし、その終わりは苦よもぎのように苦く、もろ刃の剣のように鋭い」こと(5:4)。

(3)「その足は死に下り、その歩みはよみに通じている」こと(5:5)。
(4)「いのちの道に心を配らず、その道筋は確かではないが(フランシスコ会訳「その道筋は迷路になっており」)、それを知らない(同訳「その行く先を知らない」)こと(5:6)。


●以上のことから、次のようなメッセージを受け取ることができます。
「他国の女」は、きわめて魅力的であり、その誘惑の言葉は甘く、そして心地良い。しかし一度その誘惑が乗れば破滅の苦しみを味わうことになる。しかもその結末は「よみ」、すなわち、死の道につながっている。彼女は最初から「いのちの道」に無関心であり、結末を決して知ろうとはしない。それゆえ、いかなる幻想をも彼女に対して抱いてはならない。


  • ソロモン王の治世を概観すると、その最初は神からの知恵をもってみごとなさばきによる統治をしています。その象徴的な出来事は「二人の遊女の訴え」に対してなされたソロモンのさばきです(Ⅰ列王記3:16~28)。しかしその治世の晩年は、平和の維持のために政略結婚によって多くの「他国の女」を妻やそばめとして得ます。そのため、彼女たちがソロモンの心をほかの神々のほうへ向けたことで、ソロモンの心は父ダビデの心とは異なり、神である主と全く一つになることができなくなってしまいました。そして、賢者による揺るぎない王国と思われた国が、彼の死後、二分するという結果をもたらしたのです。
  • 父は子に以下のことを教えることを神から命じられています。

【新改訳改訂第3版】申命記6章3~7節
3 イスラエルよ。聞いて、守り行いなさい。そうすれば、あなたはしあわせになり、あなたの父祖の神、【主】があなたに告げられたように、あなたは乳と蜜の流れる国で大いにふえよう。
4 聞きなさい。イスラエル。【主】は私たちの神。【主】はただひとりである。
5 心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、あなたの神、【主】を愛しなさい。
6 私がきょう、あなたに命じるこれらのことばを、あなたの心に刻みなさい。
7 これをあなたの子どもたちによく教え込みなさい。あなたが家にすわっているときも、道を歩くときも、寝るときも、起きるときも、これを唱えなさい。


●6~7節にある「これらのことば」とは、「【主】は私たちの神。【主】はただひとりである。 心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、あなたの神、【主】を愛しなさい。」ということです。このことを父から子へ、子からその子へ教え続けていかなければなりません。イスラエルの民にとって、結婚における貞潔の教えはこのことばから教えて行く必要があったのです。しかしイスラエルの歴史はそのただひとりの神を捨て、「他国の女」に惹かれていったのです。その結果が「バビロン捕囚」という憂き目でした。


3. 父の勧告命令

  • もし、父の教えることばから離れるならば、破滅という最悪の状態に陥ることになることを警告しつつ、以下のようにはっきりと(四つの命令で)勧告しています。

【新改訳改訂第3版】箴言5章7~8節
7 子どもらよ。今、私に聞け
私の言うことばから離れるな
8 あなたの道を彼女から遠ざけ
その家の門に近づくな


●使徒パウロもⅡコリント書で同じように警告しています。

【新改訳改訂第3版】Ⅱコリント6章13~18節
13 私は自分の子どもに対するように言います。・・・・(略)
14 不信者と、つり合わぬくびきをいっしょにつけてはいけません。正義と不法とに、どんなつながりがあるでしょう。光と暗やみとに、どんな交わりがあるでしょう。
15 キリストとベリアルとに、何の調和があるでしょう。信者と不信者とに、何のかかわりがあるでしょう。
16 神の宮と偶像とに、何の一致があるでしょう。私たちは生ける神の宮なのです。神はこう言われました。「わたしは彼らの間に住み、また歩む。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。17 それゆえ、彼らの中から出て行き、彼らと分離せよ、と主は言われる。汚れたものに触れないようにせよ。そうすれば、わたしはあなたがたを受け入れ、18 わたしはあなたがたの父となり、あなたがたはわたしの息子、娘となる、と全能の主が言われる。」


2015.11.13


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