列王記(改訂)
聖書を横に読むの目次
10. 「列王記」の瞑想(改訂)
はじめに
(1) 歴代の王の治世の記録
●列王記はその書名が示すように、ダビデの後継者ソロモンから南ユダ王国と北イスラエル王国における歴代の王の治世を記録しています。それらは約400年の期間に及んでおり、イスラエル王国の衰退の物語です。南ユダ王国には20人の王が、また北イスラエル王国には19人の王が登場します。サウロ、ダビデ、ソロモンの最初の三人を含めると、41人の王がイスラエルを治めたことになります。
(2) 預言者台頭の時代
●ソロモンの治世に王国はその絶頂に達します。その王国の規模は父ダビデから引き継いだものの十倍にも及びます。しかし、ソロモンの死とともに、王制はすでに神がそれを通してご自身の「聖」を表わす媒体ではなくなっていました。この時から、エリヤをはじめとする預言者の時代が始まります。イスラエルの王制の理念、つまり「神こそ真の王であり、人間の王はあくまでも神の代理者にすぎない」とする理念が崩壊しつつあったときに、それに対して断固 No!と叫んだのが預言者たちでした。彼らは命をかけてイスラエルの王制の理念を語り、王による国の私物化は亡国を招くことを警告したのです。その預言者たちの歴史観を骨格として記されたのが、この「列王記」なのです。ちなみに、へブル語聖書では列王記の第一と第二の区別はなく、一冊の書です。
(3) 列王記はサムエル記の結論
●サムエル記は、預言者サムエルによって「イスラエルの王制の理念の憲章」が記されています。それによれば、イスラエルの王は、他の諸国とは異なり、あくまでも「神の代理者」でしかないというものです。その意味で、ダビデは理想的な王であることが記されています。列王記はその基準において、王たちがどのように歩んだのかを列記しています。旧約聖書では、「善と悪」を「ダビデの道とヤロブアムの道」とに分けて象徴しています。
●それぞれの時代を治めた王たちと深くかかわりをもった「預言者たちの霊性」を通して、現代に生きる私たちへのメッセージは何かを考えつつ、列王記の瞑想を試みたいと思います。
●興味深いことに、列王記において「イスラエルの回復」を預言する記述は一切ありません。
列王記の瞑想
2012.8.25~12.12
2012.8.24
2020.5.13(改訂)
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