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パウロの切なる願いとは

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No.8 パウロの切なる願いとは

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ベレーシート

  • ローマ書1章は、14~17節で一つのまとまりを持っています。まずはその聖書箇所を見てみましょう。

【新改訳改訂第3版】ローマ人への手紙1章14~17節

14 私は、ギリシヤ人にも未開人にも、知識のある人にも知識のない人にも、返さなければならない負債を負っています。
15 ですから、私としては、ローマにいるあなたがたにも、ぜひ福音を伝えたいのです。
16 私は福音を恥とは思いません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、信じるすべての人にとって、救いを得させる神の力です。
17 なぜなら、福音のうちには神の義が啓示されていて、その義は、信仰に始まり信仰に進ませるからです。「義人は信仰によって生きる」と書いてあるとおりです。


1. パウロの「切なる願い」

  • この箇所(14~17節)で最も重要なフレーズ(あるいは、語彙)があるとしたら、それは何だと思いますかという問いに対してあなたは何と答えるでしょうか。しかも、この箇所はローマ書の中心的な重要な箇所です。
  • 私が重要だと思うところは、15節の「私としては、ローマにいるあなたがたにも、ぜひ福音を伝えたい」というフレーズです。「ぜひ」という訳はい訳であり、原文では「私の切なる願い」を意味する形容詞「プロスモス」(πρόθυμος)が使われています。
  • 「私の切なる願い」の動機は、前節にあるように、「私は、・・返さなければならない負債を負っている」(=新共同訳「私には、果たすべき責任がある」)ということにあります。つまり、パウロにある負債感(責任感)が、熱心な福音宣教の働きを引き出しているのです。
  • 「私としては、ローマにいるあなたがたにも、ぜひ福音を伝えたいのです。」と記された15節に注目してみましょう。「ローマにいるあなだかた」とは、ローマにいるクリスチャンたちです。すでに救われている者たちに対して、「ぜひ福音を伝えたい」とはどういうことでしょうか。福音を聞いて、信じて救われている人たちに対して、パウロが「私の切なる願いあとして、あなたがたにぜひとも福音を伝えたい」と述べているのは、福音について正しく知り、その深みを知り、そしてそこに恥じることなくしっかりと立たせるためなのです。そのことを、パウロは16~17節で述べようとしています。

2. 福音を伝えたいというパウロの切なる願いの理由

  • 翻訳からは知り得ないのですが、16~17節には三つの理由を表す「ガル」(γὰρ)があります。その一つ一つがパウロの「切なる願い」を根拠づける理由となっているのです。

(1) キリストの福音を恥とはしないから

  • 福音を伝えたいとする第一の理由は、キリストの福音をパウロは恥と思わず、むしろそれを誇りとしているからです。「キリストの福音」は、だれもがそれを聞いて「いい話だ。私も信じてみよう」ということにはならないからです。むしろ逆に多くの人につまずきを与えることを知っていました。だからと言ってそれを恥と思うようなことはないという宣言にも近いパウロの心の構えがあったからです。
  • 福音は、「ユダヤ人にとってはつまずき、異邦人にとっては愚かでしょうが」と述べています(Ⅰコリント1:23)。このことはどういう意味なのでしょうか。

①しるしを求めるユダヤ人にとって、福音はつまずきをもたらす

●イェシュアの語った「御国の福音」は神のご計画の成就を意味するものでしたが、その話は理解しがたいものでした。当時、政治的なメシアを待望していたユダヤ人にとっては、十字架につけられたイェシュアの姿はまさに失望を与える何ものでもありませんでした。「しるし」とは、政治的なメシアとして異国の支配から救い出してくれる現実的なメシアを意味します。つまり、当時の人々にとってイェシュアの語る話は自分たちの期待から外れるような存在に思えたのです。

②知恵(最高の価値観)を求めるギリシヤ人にとって、福音は愚かなものに思える

●ギリシヤ人は異邦人の代表です。人間にとって最高に価値あるもの、それを実現してくれる存在こそ神(最も価値ある存在)とする者にとっては、福音は「愚かなもの」と考えられました。特に、十字架はすべての者を神の前に罪人としてしまうだけでなく、人間が誇れるようものをすべて完全に崩してしまいます。また、この世における弱い者、取るに足りない者、見下されている者、無に等しい者を神は選び、召し出されます。このような神など、人間の強さや能力をたたえる異邦人の文化においては愚かに見えてしまうのです。


(2) 福音はすべての人に救いをもたらす神の力だから

  • この世においては力のある者が勝利を収めます。ですから人々は力を求めます。その力は様々です(知力・能力・財力・権力・技術力・洞察力・・などなどです)。しかし、この世のどんな力をもってしても、人間を根底から造り変えることはできません。どんな教育の力をもってしても不可能です。ところが、福音にはその力があるのです。使徒パウロは自分がどんなに努力しても、自分の力で神の聖なる律法にしたがって生きることはできないことを認め、降伏しています。なぜなら、人間の内にはいかなる努力によっても及ばない罪の力が原理(法則)のように働いているからです。

【新改訳改訂第3版】ローマ人への手紙7章15~19節、24節
15 私には、自分のしていることがわかりません。私は自分がしたいと思うことをしているのではなく、自分が憎むことを行っているからです。
16 もし自分のしたくないことをしているとすれば、律法は良いものであることを認めているわけです。
17 ですから、それを行っているのは、もはや私ではなく、私のうちに住みついている罪なのです。
18 私は、私のうち、すなわち、私の肉のうちに善が住んでいないのを知っています。私には善をしたいという願いがいつもあるのに、それを実行することがないからです。
19 私は、自分でしたいと思う善を行わないで、かえって、したくない悪を行っています。

24 私は、ほんとうにみじめな人間です。だれがこの死の、からだから、私を救い出してくれるのでしょうか。

  • パウロは24節の叫びの中から、神の福音にある神の力を見出したのです。それは罪の原理ではなく、御霊の原理です。そのことはこれからじっくりと学んでいきます。ここでは、福音には信じる者を救う神の力(ダイナマイト)が働くこと、そして、その力がすべての信じる者に働くことを心に留めたいと思います。例外はありません。この福音の力を得るための唯一の条件は何でしょうか。それは「信仰」です。そしてこの「信仰」さえも、神が与えてくださらなければ働かせようがないのです。

(3) 福音には神の義が啓示されているから

  • 福音を伝えたいというパウロの切なる願いの第三の理由は、福音の中には神の義が啓示されているからです。「神の義」とは、ローマ書にとって重要な語彙です。なぜなら、「義」とは神との正しいかかわりを意味するからです。ところが、パウロによれば、「義人はいない。ひとりもいない。」(3:10)のです。「神の義」を得る唯一の手段は、「イエス・キリストを信じる信仰」だけです(3:22)。行ないによって「神の義」を得ることはできません。
  • 「義」は「救い」と同義です。福音にはいかにして「義」を得ることができるのかが啓示されています。るのです。それはイェシュアを信じることですが、「イェシュアを信じる」とはどういうことかも、パウロは手紙の中で教えて行きます。福音には、イェシュアの十字架による身代わりの死、血による贖い、和解、イェシュアのよみがえり(復活)、いのちの御霊による原理(法則)、救いの究極としてのからだの贖い、審判、永遠のいのち、などが含まれます。イェシュアを信じることはこれらすべてを含みます。ですから、イェシュアを信じる信仰によって、神の義が得られ、救われるのです。特に、「からだの贖い」は将来のことですが、信仰者はその望みによって今を生きています。その望みはこの世におけるあらゆる苦しみをも乗り越えさせる力となり、「圧倒的な勝利者」(8:37)となることを保証するのです。
  • 「福音」とは、神の賜物である神の御子イェシュアご自身と言えます。その「福音がもたらす神の力」は、イェシュアを信じる者にしか得ることはできないのです。それゆえ、福音にあずかった者は、福音(=イェシュア)を恥とせず、むしろ福音(=イェシュア)を誇りとして、その方をあがめ、その方の内に生き、そして、その方を宣べ伝える者とならなければなりません。福音の宣教の働きは、教会の重要な働きです。と同時に、福音を伝えることはイェシュアご自身をより深く知ることでもあります。ですから、福音の内容についてもしっかりと学ぶことも重要です。宣教と教育は教会の両輪です。そのためにパウロはローマにいる人々に手紙を書く必要があったのです。

追記

  • 見方によっては、パウロが福音を宣べ伝えることの理由として、もうひとつ上げることができます。その理由とは、神の怒りが啓示されているからです(1:18)。何に対しての怒りかといえば、それは「不義をもって真理をはばんでいる人々のあらゆる不敬虔と不正」に対する神の怒りです。


2017.2.23


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