ルカの問題意識
〔1〕ルカの福音書の学びの「視座」
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1. ルカの問題意識
(1) 執筆目的と時期
- そもそもルカはなぜ福音書を書く必要があったのか(ルカは福音書だけでなく、使徒の働きも書いた)。ルカの福音書は、その序文に(1章1~4節)で明らかなように、ローマの高官と考えられるテオピロという人物に宛てて書かれている。しかしルカは彼一人のためにこの福音書を書いたわけではない。ルカはこれをローマ帝国の各地から集まっているギリシャ語を話す人々―すなわち、異邦人社会から救われた人々を励ます必要があったと思われる。
- 執筆時期は、AD61年~63年の間に書かれたと思われる。
(2) ルカの問題意識
- このころには、「教会はどの点から見ても異邦人の教会になっていた。・・・教会はいまや第二の世代を迎え、・・新しい回心者の情熱や献身的姿勢は失われつつあった。・・教会の信仰は少なくとも二つの点で試された。内部においては情熱か減少し、外部からはユダヤ人と異教徒の両方からの敵意と反対があった。さらに、異邦人キリスト者はアイデンティィの問題に直面していた。彼らは、次のように自問した。『私たちはいったい何者なのだろうか。私たちはユダヤ的過去とどんな関係があるのだろうか。特に、現在のユダヤ教の明らかな敵意を考える時、どうしたらよいのか。キリスト教は地上のイエスとどのような関係を持てばよいのだろうか。』・・・ルカは、キリスト者共同体がユダヤ人のみであった時から大多数が異邦人となった時に至るまでの時代の流れとその変化に伴う問題に、当時の誰にもまして気付いていた。」(デイヴィッド・ボッシュ著「宣教のパラダイム転換<上>」、東京ミッション研究所訳、新教出版社、1999年150頁) こうした問題意識から、ルカは将来の異邦人宣教的課題を意識しながら福音書を書いたと考えられる。