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1.三書(エズラ記、ネへミヤ記、エステル記)に共通する歴史的背景と思想

歴史書(2)」の目次

1. エズラ記、ネへミヤ記、エステル記に共通する歴史的背景と思想

神の民の再建

  • 旧約の歴史書―次の三書―はいずれも、バビロン捕囚からの帰還後の歴史を背景としている。エズラ記、ネヘミヤ記は、エルサレムを舞台とし、エステル記はペルシャの首都スサを舞台にしている違いがあるが、当時、全世界を征服したペルシャ帝国の支配がその背後にある。エズラ、ネヘミヤ、エステル、いずれもペルシャの王の圧倒的好意を受けているが、立場そのものは少しも変わっていない。「この<宙ぶらりん>の民族の運命、それを支え導かれる神の存在を信じ、体験し主張しているのが、この三書の共通の思想である。」(鍋谷尭爾著「信徒のための聖書講解⑩『エズラ、ネヘミヤ、エステル』」聖文社、1971)。帰還それ自体と、帰還した民の神殿や城壁の再建事業、およびエズラやネヘミヤの派遣、すべてがペルシャの膨大な国費によってなされた。
  • エズラ、ネヘミヤ,エステル記のみならず、預言書のハガイ、ゼカリヤ、マラキ書もこのペルシャ帝国時代のイスラエルの民に関連した記録として重要である。
539年クロス王、バビロンを倒してペルシャを起こす。この帝国は2百年間続く。エズラ記 1~6章
536年エルサレム帰還および神殿再建工事が開始される。神殿の再建注1
529年クロス王の息子カンビセスが即位。BC525エジプト王国を支配下に置いた。
521年ダリヨス王一世が即位。
520-515年神殿工事が再開、完成する。ハガイ書、ゼカリヤ書
486年クセルクセス一世(アハシュエロス)が即位エステル記
479年エステル、王妃となる。
475年ユダヤ人虐殺計画、未遂に終わる。
464年アルタシャスタ王一世の即位
445~433年ネヘミヤの帰還ネヘミヤ記 注2
428~427年エズラの帰還エズラ記7~10章

注1
クロスの勅令によって命じられた神殿の再建は、帰国した人々にとって最も重要な任務であった。神殿は、神が、選ばれた民の中に臨在し、まことの礼拝がささげられる場所である。したがって、祭司職、また神殿で奉仕するレビ人たちの職務は重要なものであった。しかし、神殿が再建されるまでは困難を極めた。このために用いられた指導者は、ゼルバベルと大祭司ヨシュアであった。新しい神殿は、かつてのソロモン時代のような華麗さはなかった。

注2
神殿と聖都エルサレムは分かち難く結びついている。神殿が再建されたとき、エルサレムの城壁はまだ修復されていなかった。ネヘミヤはこのことで心を痛め、不思議な神の導きによって、エルサレムに帰還し、強い愛国心と敬虔さと民の助けによって、52日間というわずかな日数でこの膨大な仕事を成し遂げた。

帰還した民が聖なる民としての新しい共同体意識を再建するために、祭司であり律法学者であったエズラと総督ネヘミヤは、神の律法を厳格に守ることによって成し遂げようとした。これがユダヤ教の始まりである。


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