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ダビデの哀悼の歌-「弓の歌」

27. ダビデの哀悼の歌-「弓の歌」

【聖書箇所】 31章1節~第二、1章27節

はじめに

  • サムエル第一の最後の章である31章には、イスラエルとペリシテとの戦いにおいて、サウル王とその息子たち(イシェ・ボシェテを除く3人)、そしてサウルの精鋭と言われた勇士たちが命を落とした。そのことを知ったダビデが彼らの死を悼んで歌った哀歌、「弓の歌」が記されている(サムエル第二、1章19節~27節)。この歌の中には単なる哀悼だけでなく、ダビデの複雑な心境が綴られているように思います。

1. 「ああ」という言葉が示すダビデの心境

画像の説明
  • この歌の中には、3度も使われていることばがあります。それは「ああ」と訳された感嘆詞の「エーフ」(אֵיךְ)です。「どうして、どうしてこんなことなってしまったのか」という「ああ」です。ちなみに、この「エーフ」は口語訳、新改訳、新共同訳、岩波訳、フランシスコ会訳もこぞって「ああ」と訳しています。

「ああ、勇士たちは倒れた。」(19節)
「ああ、勇士たちは戦いのさなかに倒れた。」(25節)
「ああ、勇士たちは倒れた。戦いの器は失せた。」(26節)

  • ダビデの悲しみは、単に、サウルとヨナタンにだけに止まらず、イスラエルの精鋭部隊が戦いに敗れて、イスラエルの民にこれから起こってくるであろう、悲劇を思って口から発したことばのように思えます。王であったサウルは、自分から王になりたくてなった王ではありませんでした。ペリシテの脅威が増し加わっていく中で、どうしても自分たちの国に王が必要だという長老たちの強い求めにより、神は許容して王を選び、与えました。イスラエルの王制の理念によれば、まことに神の代理者としてふさわしい者が要求されましたが、サウルはその神の基準を満たすことが出来ませんでした。ペリシテ人との戦いのために王とされたサウルの最大の悲劇は、神を味方に付けることが出来なかったにもかかわらず、王として戦いに挑まなければならならいという辛い宿命でした。
  • ダビデもかつてはペリシテ人との戦いにおいて、イスラエルの神の名がそしられることに耐えられずに、敵の代表であるゴリアテと一騎打ちでその首を打ち取ったことがありました。しかし今やサウルによって追われる身となり、ペリシテとの戦いに参戦することも出来ず、イスラエルのために何ひとつすることが出来なかったことへの無力さ(無念さ)が、「ああ」いう嘆きのことばの中に隠されているように思います。
  • 戦いを余儀なくされて戦死したサウロとその息子たち、そして精鋭部隊の勇士たちの死は、ダビデに悲しみのみならず、複雑な思いを抱かせたに違いありません。

2. ヨナタンがダビデに対して取ってたくれた「愛」

(1)「父と子」(サウルとヨナタンのかかわり)のへの絶賛

  • ヨナタンの弓は退いたことがなく、サウルの剣もむなしく帰ったことがないと述べて、その勇気をたたえています。また、二人ともイスラエルの人々から愛されて、立派な人だと言われていた。ヨナタンとサウルとのかかわりに至っては、「生きているときにも、死ぬときにも、離れることなくと」と歌っています。
  • ここにはヘブル語特有のメリスマ法が使われています(両極端の語彙を使いながら、その間にあるすべてを強調する修辞法です)。つまり、「生きているときにも、死ぬときにも」とは、「片時も離れることなく」という意味で、これの父子関係には驚かさます。

(2) ダビデに対するヨナタンの愛

  • またダビデに対するヨナタンの愛についても、「女の愛にもまさって、すばらしかった」とたたえています。「すばらしかった」と訳されたへブル語は「パーラー」(פָּלָא)。この動詞は神が主体となる場合には、恩寵用語となり、「奇しい恵みを示す」という意味になります。強意形のピエル態では「成し遂げる、誓願を果たす」という意味にもなりますが、普通は受動態(ニファル)で使われるときには、「あり得ない、異常である、不可能である」という意味で、「すばらしい、卓越した」という意味になります。それほどにヨナタンのダビデに対する愛は永遠にたたえられるべき愛だったのです。
  • それゆえ、ヨナタンの死はダビデにとって大きな意味を持っていたといえます。また、サウルもダビデにとつては「愛すべき敵」とも言えるほどに、サウルなしにはダビデが信仰的に磨かれることはなかったとも言えます。こうしたすばらしい「器」を失ったことにダビデは大きな悲しみを抱いたと思われます。

2012.7.10


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