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ルカの福音書の序文

1.ルカの福音書の序文

【聖書箇所】 1章1~4節

はじめに

【新改訳改訂第3版】
1:1~2
私たちの間ですでに確信されている出来事については、初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを、多くの人が記事にまとめて書き上げようと、すでに試みておりますので、
3
私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。
4
それによって、すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかっていただきたいと存じます。


●3節の「綿密に調べておりますから」は、「注意深く調べる」παρακολουθέωの完了形分詞で「注意深く調べ終えましたので」の意味。
●3節の「よいと思います」は、δοκέωのアオリスト時制で「よいと思った(最善だと決断した)」との意味。
●4節の「すでに教えを受けられた」は、κατηχέωのアオリスト受動態で、「口頭で教えられた」の意味。
●4節の「それによって・・よくわかっていただきたいと存じます」は、原文では「はっきりと知るために、十分に理解するために」となっています。

  • この序文には、ルカが福音書を書くに至った動機や目的が記されている箇所でとても重要な情報が含まれています。

1. テオピロという人物

  • 第一に、この福音書は「テオピロ」という人物に宛てて書かれています。「テオピロ」という名前は、神を表わす「セオス」θεοςと友を表わす「フィロス」φίλοςを合わせた名前で、「神の友」、「神に愛された者」、あるいは「神を愛する者」という意味です。「テオピロ」をラテン語で表すと、「神」は「デウス」、「愛する者」は「アマ」で、「アマデウス」(Amadeus)となります。ギリシャ語の「テオフィロ」とラテン語の「アマデウス」は全く同じ意味で、同じ組み立ての名前です。ちなみに、作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのミドルネーム(洗礼名)が「アマデウス」、映画のタイトルにもなりました。
  • 彼はローマの高官(執政官)であり、ルカと親しい関係にあった人物です。ある注解書によれば、テオピロによってルカは解放奴隷となったと言っています。この福音書を彼に献呈したということは、この福音書を書くために資料を集めたり閲覧したり、すべての費用をまかなってくれたりした人物がテオピロだったのかもしれません。
  • 「すでに教えを受けられた」とありますから、テオピロはすでに使徒たちを通して語られたイエス・キリストの福音を聞いて、すでに信仰を持っていたか、あるいは求道者であったと考えられます。すでに多くの者たちが口伝を文書化するために編集を試みていたようですが、ルカ自身も自らの手によってテオピロのためにまとめ上げようとしたのがこの福音書です。

2. ルカの福音書の執筆の方針

  • ルカが福音書を書くに当たっての方針が記されています。

    (1) すべてを網羅すること

    • これまでの福音書ではバプテスマのヨハネから語り出すのが常でしたが、ルカはヨハネの出生、イエスの出生にまで遡り、イエスの昇天に至るまでの「すべて」を包含しようという意図がありました。

    (2) 綿密に資料を調べること

    • ルカはパウロと常に行動をともにしており、パウロからも福音を聞いていたはずです。それだけでなく、当時、入手できるあらゆる資料を集めたか、あるいはそれを閲覧し、調べることをしています。おそらくここにテオピロの助けがあったのかもしれません。

    (3) 順序立てて書くということ

    • ある視座と目的をもって書き記す上での順序立ては芸術家的でもあります。また論理的思考が必要とされます。ルカは医者であり、そうした筋道を立てて表現する能力が賜っていたようです。

    (4) 熱意をもって福音を伝えるということ

    • ルカがテオピロに福音書を書き送ったのは、テオピロが「すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかってほしい」という熱意からです。ひとりのために、そんな熱意をもって、心血を注いで、ひとりのために書き記そうとしたルカの思いは私たちが学ぶべきものだと思います。ちなみに、ルカは「個人のかけがえなさ」を福音書の中でも、ことのほか大切にしています。「イエスの心、ルカにあり」です。わずか数人を前に話をしたり教えたりする場合にも、大きな集会と変わらぬ程度の準備ができるとすれば、その人はルカの心が分かっている人かも知れません。私としてはそんなルカが大好きです。

2011.4.1


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