人が、ひとりでいるのは良くない
【聖書順索引】
30. 人が、ひとりでいるのは良くない
【聖書箇所】 創世記2章18節
【読み】
ヴァヨーメル アドナーイ エローヒーム ロー トーヴ ヘヨート ハーアーダーム レヴァドー エエセハ ロー エーゼル ケネグドー【文法】
【翻訳】
【新改訳改訂3】
神である【主】は仰せられた。「人が、ひとりでいるのは良くない。わたしは彼のために、彼にふさわしい助け手を造ろう。」
【口語訳】
また主なる神は言われた、「人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう」。
【新共同訳】
主なる神は言われた。「人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」
【岩波訳】
神ヤハウェは言った、「人が一人でいるのはよくない。彼と向き合うような助け手を造ってあげよう。」
【NKJV】
And the Lord God said, "It is not good that man should be alone;
I will make him a helper comparable to him."
【瞑想】
創世記2章18節のフレーズで、特に注目したいことばは最後の語彙である「ケ・ネグドー」כְּנֶגְדּוֹです。「彼にふさわしい」「彼と向き合う者としての」と訳されます。分解すると、前置詞の「ケ」כְּ、「前」を意味する前置詞「ネゲド」נֶגֶד(前)、そして人称接尾辞3人称単数の「オー」וֹ(彼の)で、直訳的には「彼の前にある存在として(の)」となり、それが「彼にふさわしい」という意味になります。まさに神は対等に向き合えるような助け手としての存在を彼の前に置かれたのです。
人と人とが互いに向き合っている時に、それぞれの目はどこに向けられているかと言えば、夫の目は妻の見えない領域に向けられ、妻の目は夫の見えない領域に向けられています。これが「ふさわしい」と訳されることばの真意です。夫婦はお互いに自分に欠けている領域を補い合う存在なのです。
神である主がこうした助け手を人のところに連れて来られたとき、人は感動して言いました。
「これこそ、今や、私の骨からの骨、私の肉からの肉。これを女と名づけよう。これは男から取られたのだから。」(同、2:23)
このようにして、男は妻と結び合い( דָּבַק)、ふたりは一体となるのです。
「結び合う」というヘブル語の「ダーヴァク」 דָּבַקも重要な味わい深い言葉です。ヘブル語のコンコルダンスで「ダーヴァク」という動詞を調べると、その動詞は旧約で54回使われていることが分かります。その箇所を自分のもっている聖書で一つずつ調べて、その訳語を自分なりにグルーピングしてみると以下のようにまとめることが出来ます。おそらく、こうした緻密な作業を積み重ねることによって語彙の辞典が作られるのでしょうね。
〔1〕結びつく、縁を結ぶ
〔2〕すがる 堅くすがる
〔3〕まといつく
〔4〕くっつく、くっついて離れない
〔5〕心が惹かれる
〔6〕そばにいる、そばから離れない
〔7〕へばりつく、打ち伏す
〔8〕追いつく、追い迫る、追跡する、押し迫る
〔9〕(罪がへばりついて、その結果)、罪を犯し続ける
〔10〕堅く守る「ダーヴァク」דָּבַק(davaq)は、神と人、および人と人のかかわりがきわめて親密であることをうかがわせる動詞だということがはっきりします。ちなみに、ルツがナオミに「すがり」ついたことがどんなにすばしらい結果をもたらしたか、それは圧巻です。
2013.3.16
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