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幻の谷(エルサレム)に対する宣告

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16. 幻の谷(エルサレム)に対する宣告

【聖書箇所】22章1~24節

ベレーシート

  • イザヤ書22章はエルサレムについての神の宣告が記されています。しかし、その歴史的な背景が分からなければ理解しずらい章でもあります。神の舞台は歴史にあります。ですから、神を信じる者にとってイスラエルの歴史は他の国の歴史に勝って知る必要があります。
  • 22章の構造は前半と後半の二つに分かれます。前半は1~14節で、ユダの王ゼデキヤの治世にバビロンの王ネブカデネザルによってエルサレムの町が崩壊することが宣告されています。後半は15~21節で、アッシリヤの王セナケリブが遣わした大軍勢を率いる三人の将軍(タルタン、ラブ・サリス、ラブ・シャケ)によってエルサレムが包囲されるという危機の中で、ユダの王ヒゼキヤの参謀の一人シェブナの職と地位が剥奪されて、それがもう一人の参謀のエリヤキムに与えられるという神の宣告です。
  • 前半(1~14節)と後半(15~21節)の出来事は、時系列としては順序が逆ですが、その二つをつないでいる部分が「万軍の神、主は仰せられた」というフレーズです。

1. 幻の谷に対する神の宣告【その一】(1~14節)

  • エルサレムは地形的に多くの丘に取り囲まれており、その間に谷があります。なぜエルサレム全体が「幻の谷」と呼ばれたのか。エルサレムは谷の存在によってこの世から遮断され、そこからただ神を見上げることが可能であり、神は幻をもってご自身の御旨を民に啓示されるからだという解釈があります(樋口)が、「谷」は一部で全体を表わすという表現法で、このような表現法を提喩法(代喩)と呼ばれます。
  • 1~14節で起こっている出来事は、ユダの最後の王ゼデキヤの治世(9~11年目)にエルサレムに起こる騒乱と混乱です。

【新改訳改訂第3版】イザヤ書22章1~3節
1 幻の谷に対する宣告。これはいったいどうしたことか。おまえたちみな、屋根に上って。
2 喧噪に満ちた、騒がしい町、おごった都よ。おまえのうちの殺された者たちは、剣で刺し殺されたのでもなく、戦死したのでもない。
3 おまえの首領たちは、こぞって逃げた。彼らは弓を引かないうちに捕らえられ、おまえのうちの見つけられた者も、遠くへ逃げ去る前に、みな捕らえられた。

  • 差し迫った災いで、エルサレムの人々が騒動、混乱の中にある状態が描写され、「剣で刺殺されたのでもなく、戦死したのでもない」、つまり、エルサレムが敵によって取り囲まれ、封鎖されたことによって飢えで餓死したのです。しかも、エルサレムの首領たちはこぞって町から逃亡しますが、すぐに見つかり、みな捕らえられたとあります。この捕囚とエルサレム崩壊の出来事は二百年後に起こることですが、確実に起こることを表わす預言者的完了形で記されています。
  • この頃の出来事を詳しく知るためには、Ⅱ列王記25章1~7節、および、Ⅱ歴代誌36章11~17節を参照のこと。

2. 幻の谷に対する神の宣告【その二】(15~25節)

  • イザヤ書22章の後半(15~25節)は、ヒゼキヤの治世の時に、アッシリヤの王セナケリブがエルサレムを包囲した頃の神の宣告です。後半で特に注目すべき点は、ヒゼキヤ王を支えた二つの人物の名前が登場していることです。ひとりは「シェブナ」、もうひとりは「エルヤキム」です。

画像の説明

  • イザヤは主から「さあ、宮廷をつかさどるあの執事シェブナのところに行け。」と命じられます(22:15)。シェブナに対して主は「わたしはあなたをその職から追放し、あなたの地位から引き降ろす。」(22:19)という厳しい宣告をした後で、

    20 その日、わたしは、わたしのしもべ、ヒルキヤの子エルヤキムを召し、
    21 あなたの長服を彼に着せ、あなたの飾り帯を彼に締め、あなたの権威を彼の手にゆだねる。
    22 わたしはまた、ダビデの家のかぎを彼の肩に置く。彼が開くと、閉じる者はなく、彼が閉じると、開く者はない。
    23 わたしは、彼を一つの釘として、確かな場所に打ち込む、彼はその父の家にとって栄光の座となる。
    24 彼の上に、父の家のすべての栄光がかけられる。・・

  • シェブナ」という人物はヒゼキヤ王の参謀の一人でした。その彼が、なぜその地位から引き降ろされ、その職から追放されたのでしょうか。その理由についてはイザヤ書22章には記されていません。その理由となる聖書箇所がイザヤ書30章1~5節と31章に記されています。その箇所によれば、ヒゼキヤ王の治世にユダ王国がエジプトに助けを求めたことが記されています。

    【新改訳改訂第3版】イザヤ書30章1~3節
    1 「ああ。反逆の子ら。──【主】の御告げ──彼らははかりごとをめぐらすが、わたしによらず、同盟を結ぶが、わたしの霊によらず、罪に罪を増し加えるばかりだ。
    2 彼らはエジプトに下って行こうとするが、わたしの指示をあおごうとしない。パロの保護のもとに身を避け、エジプトの陰に隠れようとする。
    3 しかし、パロの保護にたよることは、あなたがたの恥をもたらし、エジプトの陰に身を隠すことは、侮辱をもたらす。

  • つまり、ヒゼキヤの三人の参謀の中に親エジプト寄りの人物がいたということです。その人物こそシェブナであったと推測できます。新改訳では「宮廷をつかさどるあの執事」と訳されています。ところがその彼が「主人の家の恥さらし」(イザヤ22:18)という汚名を着せられ、免職されてしまいます。その理由は、エルサレムがアッシリヤによって包囲されるという危機の中で、エジプトとの緊密な協力を訴えただけでなく、そこに助けを求めたからだと考えられます。そうした考えの根底に、「自分のために」という動機が潜んでいたことをイザヤは指摘しています。
  • シェブナに代わって王に次ぐ権威と職務を与えられたエリヤキム。彼にゆだねられた大きな責任については22節以降に述べられています。そのエリヤキムに「長服」と「かぎ」が与えられますが、これらは地位と職務と権威の象徴です。
  • ところがエリヤキムが栄誉の地位に着くことによって、家族や親せきがみな彼に依存するようになり、良い職を得ようとして動き出します。それが24節にある「彼の上に、父の家のすべての栄光がかけられる。子も孫も、すべての小さい器も、鉢の類からすべてのつぼの類に至るまで。」と記されていることです。そうした親族登用の甘さが潜んでいました。それゆえ、「その日、-万軍の主の御告げー 確かな場所に打ち込まれた一つの釘が拭き取られ、折られて落ち、その上にかかっていた荷も取りこわされる。」と主は語られたのです。
  • つまり、エリヤキムに依存していたすべての家族は、栄誉も、そしてその職も家の希望もみな取り除かれるという神の厳しい宣告です。「確かな場所に打ち込まれた一つの釘が拭き取られ折られて落ち、その上にかかっていた荷も取りこわされる。」とは、徹底的に完全に取り除かれることを意味しています。

    (1) 「抜き取られる」・・・「ムーシュ」מוּשׁ
    (2) 「折られる」・・・・・「ガーダ」גָּדַעの受動態
    (3) 「落ちる」・・・・・・「ナーファル」נָפַל
    (3) 「取りこわされる」・・「カーラット」כָּרַתの受動態


2014.8.27


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