1章8節
創世記1章8節
【新改訳2017】
神は大空を天と名づけられた。
夕があり、朝があった。 第二日。
ח וַיִּקְרָא אֱלֹהִים לָרָקִיעַ שָׁמָיִם
וַיְהִי־עֶרֶב וַיְהִי־בֹקֶר יֹום שֵׁנִי׃
「ヴァイクラー エローヒーム ラーラーキーア シャーマーイム ヴァイェヒー・エレヴ ヴァイェヒー ヴォーケル ヨーム シェーニー」
1. 「大空」を「天」
●神は「大空」(「ラーキーア」רָקִיעַ)「天」(「シャーマイム」שָׁמָיִם)と名付けました。詩篇19篇の冒頭にこうあります。
【新改訳2017】詩篇19篇1節
天(שָׁמָיִם)は神の栄光を語り告げ
大空(רָקִיעַ)は御手のわざを告げ知らせる。●1節は同義的パラレリズムです。天は神の栄光を語り告げ、大空は御手のわざを告げ知らせているのです。しかしだれもそれを聞く者はいません。一方的にそれを語り告げ(「サーファル」סָפַר)、告げ知らせて(「ナーガド」נָגַד)いるのです(いずれも分詞)。したがって、地にその語り告げを、告げ知らせを聞く者を求めているのです。ここに「地」の必然性がありますす。しかし、それは、9~13節以降を待たなくてはならないのです。
2. 「天」とは「聖所」のこと
●「大空」が「天」と名付けられたことによって、以下のことが分かってきます。
【新改訳2017】詩篇150篇1節
ハレルヤ。
神の聖所で 神をほめたたえよ。
御力の大空で 神をほめたたえよ。●「大空」と「聖所」は同義だとすれば、「大空」=「天」=「聖所」と言い表すことができます。「聖所」と訳された語彙はヘブル語ではいくつかあります。中でも「ミクダーシュ」(מִקְדָּשׁ)と「コーデシュ」(קֹדֶשׁ)は重要です。これらは同義と言えます。語根も同じ。
(1)「ミクダーシュ」(מִקְדָּשׁ) sacred place, sanctuary, holy place 「聖なる場所」75回。
「彼らにわたしのための聖所(מִקְדָּשׁ)を造らせよ。そうすれば、わたしは彼らのただ中に住む。」(出 25:8)※「わたしは彼らのただ中に住む」ことが、聖所の造る目的です。目に見える聖所(幕屋)の実体は天にあります。その天の模型が聖所(幕屋)なのです。
※聖所での務めは祭司、つまり、モーセとアロンとその子らだけであった(民3:38)。(2)「コーデシュ」(קֹדֶשׁ) 幕屋における「聖所」のことです。
「その垂れ幕を留め金の下に掛け、垂れ幕の内側に、あかしの箱を運び入れる。その垂れ幕は、あなたがたのために聖所(קֹדֶשׁ)と至聖所との仕切りとなる。」(出 26:33 )●「天」が「幕屋の聖所」だとすれば、天と地は「聖所」と「大庭」ということになります。天の上の水は「天の天」ということで、「至聖所」という構造になります。神から最初に幕屋を啓示された人はモーセでした。この創世記1章はそのモーセが書いているとすれば、この理解は決して無理のある解釈とは言えないのです。なぜなら、神の創造の目的は「神と人とがともに住む家を建てること」にあるからです。その神の計画書が創世記1章なのです。
●ここで、なぜ「天」である「シャーマイム」(שָׁמָיִם)が双数形でなのでしょうか。それは、至聖所と聖所が「本体」と「影」(写し)という関係だからかもしれません。また、「天」と「地」の関係は「聖所」と「大庭」のように呼応関係にあります。この呼応関係が正常に機能するところに、神の創造のみわざの骨頂があります。
3. 天(聖所)において、神はそのただ中に住まわれる
●「聖所」は、モーセ時代の幕屋,および後代の神殿を指しています。モーセはシナイ山において聖所を造るように神から命じられました(出25:8)。 「聖所」は幕屋や神殿全体を指すほか、仕切りの垂れ幕によって至聖所と区別された所、すなわち、供えのパンの机や燭台や香壇が置かれている部屋を言います(出26:33)。主御自身が聖所となられるという言い方もされています(イザヤ8:14,エゼキエル11:16)。
●水の間を分けられて「大空」を造られた神は、それを「天」となづけられました。天の本体(天の天)は人の目に見ることはできませんが、その写しである「天」が造られた目的は、天である聖所において「神が神の民のただ中に住まわるため」だったのです。この実現・成就のために、「夕があり、朝があった」という神の救いのリズムがあるのです。
2020.1.6
a:2712 t:2 y:2