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9.詩篇18篇の神への信頼

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詩篇は、神と私たちの生きた関係を築く上での最高のテキストです。

9. 詩篇18篇に見る神への信頼(37~42節)

ベレーシート

  • 37~42節は、敵を完全に滅ぼして勝利しようとする「私」がいます。これまでは、「主を呼び求めると、私は、敵から救われる。」(3節)にあるように戦いにおいては受け身です。ところが34節では、主が「戦いのために私の手を鍛え、私の腕を青銅の弓をも引けるようにされる。」となり、やがて37~42節ではなんと、「私は、敵を追って、これに追いつき、立ち滅ぼすまでは引き返しませんでした。」という戦いにおける完全な勝利を目指す者へと変えられています。
  • ダビデはやがて神の代理者としての王へと成長するために、サウル王による不条理な苦しみによって訓練されます。そのために多くの危機を経験します。しかし神はその都度、その危機から救い出されました。やがてダビデが王となり、イスラエルを統一しますが、そのために絶えず周囲の敵(複数)との戦いを余儀なくされ、その戦いに勝利することによって、はじめて平和な国を築くことができたのです。戦いに明け暮れたダビデの経験とその王国は、やがて到来するメシア王国の「型」です。ですからダビデの生涯を学ぶことは必須科目です。

1. 戦いのために、私に「力を帯びさせる」方

  • 39節に「あなたは、戦いのために、私に力を帯びさせ」とあります。すでに32節でも「この神こそ、私に力を帯びさせて私の道を完全にされる。」という告白がなされています。32節の場合の「力を帯びさせ」は、私の歩みを完全にするためでしたが、39節の場合は「戦いのために」とあり、目的が異なっています。しかし、いずれにしても、人生の歩みは戦いの連続ですから、その歩みが神の前に傷のない完全なものであるためには、敵に対する勝利もその中に含まれると考えてもおかしくありません。
  • 戦いにおいて完全な勝利を果たすことができるためには、神の「力を帯びる」ことが重要です。イェシュアは公生涯に入る時に、40日40夜、荒野の試みを受けられてサタンの誘惑に勝利します。そのあとで、イェシュアは御霊の力を帯びてガリラヤに帰り、「御国の福音」を宣べ伝える働きを開始されています(ルカ4:14)。「御国の福音」を宣べ伝える働きは、人の意欲や頑張りによっては不可能であることを思されます。宣教の働きはまさに霊的な戦いです。なぜなら、この世の神であるサタンが不信者の思いをくらませて、福音の輝きを悟らせないように働いているからです。しかし、宣教の働きをする者は、御霊の助けによってキリストの光を悟り、かつ語らなければなりません。そのためには、神の「測り知れない力」(Ⅱコリント4:7)を必要とするのです。神の働きを神から委ねられた者に、神は必ず、力を帯びさせます。例えば、バビロンの捕囚の民を故国に帰すために用いられたペルシアの王クロスもそのひとりです。イザヤ書45章5節にこう記されています。

【新改訳改訂第3版】イザヤ書45章5節
わたしが【主】である。ほかにはいない。わたしのほかに神はいない。
あなたはわたしを知らないが、わたしはあなたに力を帯びさせる

  • ここには、「わたしが【主】である。ほかにはいない。わたしのほかに神はいない。」と宣言しているように、神の永遠の自存が、反復することで強調されています。神のご計画について全く知らないクロス王に神は「力を帯びさせる」と語っています。原語は「アーザル」(אָזַר)の未完了形ピエル態です。この「アーザル」は本来、「帯を締める」という意味ですが、ピエル態では「力を身に帯びる」となります。神はクロス王に力を帯びさせ、強くし、勇気を与えて、神のご計画を成し遂げさせました。

2. 完全な勝利をもたらす「戦い」

  • 37~42節を観察するなら、そこには多くの「戦闘用語」が使われています。「追う」「追いつく」「断ち滅ぼす」「打ち砕く」「倒れる」「力を帯びる」「立ち向かう」「ひれ伏させる」「滅ぼす」「除き去る」がそうです。この箇所に登場する「私」はダビデであると同時に「イェシュア」を指し示しています。また「あなた」は「主」であると同時に「御父」を指し示していると言えます。しかも、敵に関する語彙はすべて「彼ら」という複数です。「私に立ち向かう者」も、「私を憎む者」も然りです。
  • 敵から逃げるのではなく、積極的に立ち向かう語彙は以下の通りです。

(1)37節「追う」(「ラーダフ」רָדַף)。初出箇所は創世記14章14節。
(2)37節「追いつく」(「ナーサグ」נָשַׂג)。初出箇所は創世記31章25節。
(3)37節「絶ち滅ぼす」(「カーラー」כָּלָה)。初出箇所は創世記2章1節。
※「完成させる」「成し遂げる」という意味と「滅ぼし尽くす」「根絶する」という真逆の意味を合わせ持つ、ヘブル語ならではの語彙です。
(4)38節「打ち砕く」(「マーハツ」מָחַץ)。初出箇所は民数記24章8節。
(5)39節「ひれ伏させる」(「カーラ」כָּרַע)。初出箇所は創世記49章9節。
(6)40節「滅ぼす」(「ツァーマット」צָמַת)。初出箇所はⅠサムエル記22章41節。
(7)42節「打ち砕く」(「シャーハク」שָׁחַק)。初出箇所は出エジプト記30章39節。創世記14章14節。「打って粉にする」という意味。
(8)42節「除き去る」(「リーク」רִיק)。初出箇所は創世記14章14節。
※「リーク」の本来の意味は「空にする、空しくする」という意味。

  • 神の御子イェシュアがこの地に来られたのは、悪魔の業をこわすためであったと聖書に記されています。つまり、この地を支配し人々を滅ぼそうとする悪魔と死の力を完全に打ち滅ぼして、私たちをその悪魔の手から救い出してくださるためでした。

2016.11.26


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