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サムエルの預言者としての召命

3. サムエルの預言者としての召命

【聖書箇所】 3章1節~21節

はじめに

  • サムエル記3章では、サムエルが神によって預言者(※脚注)としての召命を受け、そのことが「ダンからベェル・シェバ」まで、すなわちイスラエルの全土にある人々によって受けとめられたことが記されています。神からの召命を受けたことが他の人々によっても認証されることが神の働きにとってきわめて重要ですが、その背景に何があったのかを3章は記しています。
  • 人々がサムエルを神によって立てられた預言者であると受け留めることができたのは、神がサムエルに語ったことばそのままのことが起こったからと言えます。確かにサムエルが神によって預言者として召されたのかどうか、周囲の人々によって確認される必要があったようです。聖書はその点において「主は彼とともにおられ、彼のことばを一つも地に落とされなかった」と記しています。

1. サムエルに対する神の召命

  • 聖書には多くの人たちが神からの召命を受けていますが、その召命の在り方はいくつかのパターンがあるようです。

(1) 神のことばのみ
神のことばだけの召命は、ノアやアブラハム、モーセ、サムエルなどがそうです。彼らは神の声を直接的に聞くという形で召されています。士師たちもそうです。預言者を通して神のことばを聞き、召しを受けた例としてはイスラエルの最初の王となったサウロやダビデは預言者サムエルを通してです。

(2) 神のことばと「幻」、あるいは「夢」
しかし中には、幻や夢の中で神のことばを聞いた人々もいます。ヤコブはその例です。ヤコブは夢の中で神のことばを聞きました。イザヤ、エゼキエル、使徒パウロ、使徒ペテロもそうです。

(3) 夢(幻)のみ
この例としては、ヤコブの息子のヨセフがそうです。

  • ユダヤの伝承によれば(ヨセフスの「ユダヤ古代誌」)サムエルの召命は12歳であったとされているようです。神はシロにおいて、ことばをもってサムエルにご自身を啓示されました。
  • 当時のシロには契約の箱があり、イスラエルの人々はそこに礼拝をしに来ていました。しかしサムエル記ではそのシロの礼拝所が「主の宮」となっています。1章24節では「主の家」(「ベート・アドナイ」בֵּית יהוה)となっていますが、「主の宮」(あるいは「神殿」)と訳されている言葉は「へーハール」(הֵיכָל)で、第一サムエル記の1章9節にはじめて登場します。そしてそのことばは3章3節にもあります。そこには柱があり、ハンナがその柱のそばで祈ったのです。柱のある主の宮、神殿とも訳されていますが、正式な神殿はやがてソロモンが建てますので、シロでの主の宮がどのようなものであったのかその記述がありません。かつての移動式の「モーセの幕屋」のような天幕づくりのものではなかったように思います。そして「主の宮」の至聖所ではなく、聖所と思われるところでサムエルが寝ていたわけで、そこに神が直接語りかけています。これまでの「モーセの幕屋」のイメージとは随分異なり、想像しかねます。この時代は礼拝の様式も祭司制度における退廃とともに、かなり変化していたのかもしれません。
  • しかし、いずれにしても、主のことばが臨むことはまれにしかなく、幻が示されることもなかった時代に、少年にして(といってもユダヤでは13歳で成人式を迎えますが)、サムエルが神のことばを預かるべく召されたというのはこれまでにないことでした。

2. サムエルの預言者適性のテスト

  • サムエルは三度神から名を呼ばれたあとに、エリは主が彼(サムエル)を呼んでいるということを悟ります。それほどにサムエルは「主を知らず」、「主のことばを聞く」という経験もありませでした(3:7)。そんなうぶなサムエルに示されたことばの内容は「それを聞く者は、二つの耳が鳴る」ほどに驚くべきことでした。それは祭司エリ家の滅亡の預言です。サムエルは「この黙示について」襟に語ることを恐れました。しかしエリの誘導によって、サムエルは隠すことなくすべてのことを、それがエリにとってどんな不幸な内容であったとしても隠すことなく、主から示されたことをありのままに告げたのです。これは預言者としてきわめて重要な資質です。もしここでサムエルが人を恐れ、あるいは人情に左右されて語らなかったとしたら、預言者サムエルは誕生しなかったかもしれません。ここにサムエルが預言者として適任かどうかの最初の試金石が敷かれ、彼はそれに合格したのです。

2012.5.16


※脚注 「預言者と予言の違い」について
簡単に言うならば、字のごとく「言」を「預かる」のと「予告」するのとの違いです。「預言者」は神のことばを預かるだけでなく、それを神の代弁者として語るということが第一義的な意味であり、将来を「予告」するという面は第二義的です。「預言者」はヘブル語で「ナービー」(נָבִיא)です。預言者は「予見者」(「ローエ」רֹאֶה)、「先見者」(「ホーゼ」חֹזֶה)とも呼ばれます。

  • 神の代弁者としての預言者としてはモーセが挙げられます。そして王制の舵取りをしたサムエル。そのあと、預言者が歴史の中に台頭してくるのはイスラエルが神のみここから離れていく時代です。エリヤ、エリシャをはじめ、アモス、ミカ、イザヤ、エレミヤがいます。捕囚の時代の代表的な預言者としてはエゼキエル、ダニエルなどがいます。



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